SecretLover5【R-18】

secretloverシリーズその5(・ε・) 【1】⇒http://togetter.com/li/605940 【2】⇒http://togetter.com/li/605940 【3】⇒http://togetter.com/li/607648 続きを読む
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橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

1)電柱に寄り掛かりながら腕時計の針を確認する。 時間に遅れる事などない人だから、心配する必要なんかないだろうが気分はどこか落ち着かない。 だが、早く仮面をかぶらなきゃ。 小さく深呼吸を繰り返して心を落ち着けてから顔をあげた。 「――お待たせ」 「っ…、…そんなに、待ってないわ」

2014-01-02 06:51:12
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

2)急に肩を叩かれて、本当は死ぬほど驚いた。 だけどそんな動揺を顔に出す訳にはいかなくて、必死で冷静な表情を取り繕ってその人を振り返る。 相変わらず、整った顔で彼は笑みを浮かべていた。 「ならよかった。じゃ行くか」 「…うん」 慣れた仕草で彼が私の手を握って、歩き出した。

2014-01-02 06:56:23
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

3)「今日はどうする?行きたいとことかあんの?」 「…んー…、映画見たいのあったんだけど。時間使っちゃうからどうしようかなぁって」 その言葉に彼が苦笑した。 だが口を出してこないのは、それも彼の仕事のうちだからだ。 時間をどう使うかは、私の自由だ、私はその人の時間を買っている。

2014-01-02 07:01:27
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

4) 「……とりあえずご飯行こう」 「……了解、お姫様」 気障なその言葉に苦笑が溢れて、握られた手をそっと、握り返す。 すれ違う人達は隣を歩く彼をチラチラと盗み見してる。 きっと、恋人同士に見えるんだろう。 その事に優越感を覚えるのはいくらなんでも図々しすぎる。

2014-01-02 07:04:50
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

5)いくらなんでもそこまで馬鹿にはなれない。 いや、馬鹿は馬鹿なんだろう、充分なほど。 彼は私の恋人なんかじゃない、ましてや友達でもない。 「……お店、今日も忙しいの?」 「まあボチボチ。俺は暇だけどなー」 何せ予約はお前だけだから、そう続けて笑った彼に、私も笑った。

2014-01-02 07:08:27
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

6)出張ホスト、聞こえは悪いし、そのイメージもあまりよくはない。 私はそこまで悪いイメージは持っていないけれど、それはきっと彼のせいだろう。 優しくて気配り充分。彼氏にするには高スペック過ぎる人。 彼は間違いなく、SecretLoverというお店の出張ホストである。

2014-01-02 07:18:03
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

7) 業績など詳しくは聞けないし、知る術もない。別に知る必要もないから別にいいんだけど、HPにあるスケジュールは結構な割合で埋まってるから、繁盛はしてるんだろう。 昼間はみんな別に仕事を持ってるらしく、空いてる日の方が少ないのにご苦労な事だ。

2014-01-02 07:26:59
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

8) 自分だって人の事は言えずその依存性の高い効果から抜け出せない癖に。 「……あ、和哉ここにしよう」 「ん?おう」 彼の手を引き留めて店のドアを開けた。 中は広く、夕方のこの時間でも結構な人で賑わっている。 席に案内されて注文を済ませてからその封筒を鞄から取り出して彼に渡した。

2014-01-02 07:33:05
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

9)「…確かに。今日は?変更なし?」 「…うん、ないわ。いつも通りでいい」 「…了解」 彼はすぐに封筒を鞄にしまった。その場で改めないのはいつもの事だ、一番最初からそうだった。 聞けばお客様を信用してるからだと、そう言っていた。 最初から誤魔化そうとする人はいないだろうと。

2014-01-02 07:58:50
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

10) わかってはいるけれど、この瞬間だけはいつも胸に鈍くて強い痛みが走った。 金銭が発生している、その事が、彼と私の間に飛び越えられないほどの溝を作ってる。 痛くて痛くて、だがここでそれを素直に露見する訳にはいかなくて、笑顔を無理矢理浮かべたままその痛みを誤魔化した。

2014-01-02 08:01:29
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

11)食事を終えて、再び彼と手を繋いで店を後にする。 元日を過ぎても人で賑わっている街中は、きっと三が日が過ぎるまではこんな状態なんだろう。 人にぶつかりそうになりながら彼の手を必死で握って足を早めると彼が立ち止まって私を振り返った。 「…どうしたの?」 「…いや、なんつーか」

2014-01-02 13:31:04
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

12)苦笑しながら頭を掻いた彼が何かを呟いて、私の身腰をぎゅっと抱き寄せた。 「…ちょっ…!」 「はぐれそうになるよりかはましだろー。ちょこちょこ必死で歩いてんのも可愛いけどなー」 「…なっ…何…!」 制止をかける前に顔が一気に熱くなった。 なんでこんなにさらっと可愛いとか。

2014-01-02 13:34:15
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

13)いや、そう言うリップサービスも彼の仕事のうちだけど。 密着している身体がどこどなく熱いような気がして、パタパタと頬を扇ぐ。 精一杯大人の女性を装いたいのに全然出来てない。 溜め息つきたいのを堪えて、腰に回された彼の腕に身を任せた。

2014-01-02 13:37:25
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

14)それ以上の事だって何度もされてるのに、こんなことぐらいで狼狽えてたらそれこそ子供と代わりない。 そんな虚勢が通用するのか、色んな意味で無意味かもしれないけれど、それでもまだ、現実を見たくはなかった。 「次どうする?買い物でも行くか?」 「…あ。それだったら本屋行きたい」

2014-01-02 13:40:05
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

15)「本屋?」 「うん、ちょっと欲しい資料があって…確かここらへんの本屋なら…」 「あぁ仕事のか。いいよ付き合う」 「うん、ありがと」 彼に腰を抱かれたまま、その本屋に足を向けた。 恥ずかしさはまだあるが、気にしていたって仕方ない。

2014-01-02 13:43:15
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16)着いた本屋は案外空いていて、店内に入ると彼も腕を外して私を自由にしてくれた。 「…今度はどんなの書いてんの?」 「………秘密。買ってからのお楽しみよ。中身がわかってたら面白くないでしょ」 「なんだよけち。少しくらい教えてくれたっていいだろ」 「…っや、ちょっとやめてよ!」

2014-01-02 13:45:55
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

17)彼の手がふざけて私の脇腹を撫でて、思わず甘えたような声が出てしまいそうになった。 彼を睨み付けても反省してるようには見えない。 未だに私の身体に触ろうとする手を叩き落として、目当ての本がある棚へと足を向けた。 どうやら色々種類があるらしい。 その中の一冊を手に取った。

2014-01-02 13:50:29
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

18)「…星座?」 「…っ…そ、そう…!星座メインにしようと思ってて…っ」 肩に顎を置かれて心臓が口から飛び出るかと思った。 落ち着けと自分に言い聞かせても収まってくれない動揺に、ペラペラとろくに中身も見ずページを捲る。 彼が耳元で笑って、漸くその体温が離れていった。

2014-01-02 15:38:47
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

19)「星座なぁ。なんかロマンチックだよな。そう言う話?」 「……どうかな、好きだって言ってくれる人はいるけど」 彼も隣に並んで本棚を見つめているが、その手に取ろうとはしない。 前に本は好きじゃないと言っていたし、基本的には興味がないんだろう。 「なぁ、やっぱPN聞いちゃダメ?」

2014-01-02 15:49:42
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20)「ダメ」 作家という職種が珍しいのか、彼にこの質問をされたのは二度目だ。 一度目もダメだと言った時以来聞かれることは無かったから諦めたのかと思ったらどうやら違うらしい。 プライベートな事は聞かないはずなのによほど興味があるんだろうか、本は読まない癖に。

2014-01-02 15:53:08
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

21)笑いながらまた「けち」と呟いて、彼はそれきりその話題に興味を失ったようだった。 目的の本以外にも何冊かめぼしいものを手に取って会計を済ませると、彼が何も言わずにその本の入った紙袋を持ってくれた。 「…ありがと」 「どういたしまして。つーかこれ、持って帰る時大変だろ、平気?」

2014-01-02 17:48:50
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

22)「慣れてるから平気」 そう答えて、自分から空いている彼の手を取った。 「…そろそろ、行くか?」 「…うん」 自分から、指を絡めた時が、その合図。 彼もそれをわかってる、聞いてくるのは最終確認のつもりなんだろう。 少し強い力で手を握り返されて、心臓がその速度を早くした。

2014-01-02 17:51:32
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

23)ホテルにチェックインを済ませて部屋に向かう。 彼と会う時に使うホテルはもう固定されていて、部屋に向かう足取りにも淀みはない。 ホテルのスタッフ達が私達の事をなんて噂しているんだろうか、最初のうちはそんな事を考えたけれど、今はそれすらも気にならなくなった。 「…シャワーは?」

2014-01-02 17:53:58
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

24)「…先に浴びる。ありがと」 荷物を彼に渡して、私は真っ直ぐに浴室へと入ってから、深い溜息をつく。 彼の隣を歩く事に慣れてきたのは本当に最近だ。 それでも身体は無意識のうちに緊張して心臓は常にうるさい。 気がつかれないようにするだけで精一杯で、だけど一緒に入れる時間が嬉しい。

2014-01-02 17:56:20
橘 志摩( ˙▿˙ )<ホンモノだよ! @gara_panda

25)今の関係がどれだけ不毛なのか、充分わかってはいるが、どうしてもやめる踏ん切りがつかない。 彼から見たら、10も年下の私なんて本気の恋愛対象になんかならないだろうし、小娘の戯言と取られても仕方ないと思う。 けど、彼に会えなくなるのが、死ぬほど嫌で、嫌で、その我侭に抗えない。

2014-01-02 17:58:36
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