大罪戦闘企画

《幕間記録》
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――とある大罪

紺青ものえ @almiyy

「うるせえな、びーびー泣いてんじゃねえよ」 パソコンの電源を落としながら、背後で鼻をすすりながら泣く淡い色の子供に言葉を投げる。帰ってきてからこの調子。行かないとばかり思っていた『扉』の向こうに行ったらしく、戻ってきたかと思えば人の部屋に勝手に侵入し、菓子を食い荒らし、床を汚す。

2013-12-30 02:31:31
紺青ものえ @almiyy

「お前が自分の意思で入って痛い思いして申し訳なさで泣いてるとか勝手極まりねえよ! 馬鹿かよ! なんなの!? お前馬鹿なの?」 子供が泣いてる面倒くささと、言いたいことが纏まらない苛立ちと、何げに貶されている感覚に、伸びた爪で机をガリと引っ掻いた。

2013-12-30 02:31:36
紺青ものえ @almiyy

イライラは机の冷たさで直ぐに冷えて、 「大体、元より『扉』っつーのはそういうもんだろ? 入ったところで、楽しいことなんかねえよ……まあ、相手によるんだろうけど」 暴食のガキと、あの笑顔の気持ち悪い傲慢も楽しんできたらしいが、正直自分はいい思い出を作れそうにはない。

2013-12-30 02:31:45
紺青ものえ @almiyy

あーあ、と大きなため息をつきながら、コートとマフラー、そしてテーブルの上にあった狐の面を手に取り、合わせる。紐を後ろで結ぶ。 「……どこ、いくの?」 ようやっと言葉を発した子供を面越しに一瞥し、 「――『扉』。……俺くらいしか行く奴いないみたいだしなあ」 と返す。

2013-12-30 02:31:54
紺青ものえ @almiyy

こちらを見ている深海は泣きはらして赤い。泣いてばっかりのガキは嫌いだ。面倒くさいし面倒くさいし、面倒くさい。もはや三拍子。面倒くさい以外の何者でもない。 靴を鳴らして廊下へ。向かうのは、あの窓付きの『扉』。 ……早く帰れますように。 そう静かに心の中で祈りながら――。

2013-12-30 02:34:41

――とある大罪

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

あの円形闘技場から出た時には、既に己は一人になっていた。周囲に知る者は誰もおらず、見当たらず。また見知らぬ街を一人で歩いている。 何処だかは、分からない。分からないが、違和感がある。 ——あの場は、誰かに用意された そうでなければ、森は消えたりしない。

2013-12-30 02:39:29
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

そもそもからして、自身は何故あの森に居たのか、思い出せない。 ——前回の時も、そうだ 気付いたらばあの街に居た。あの廃れきった街に。其処までの道程を、己は全く覚えていない。 恐らく己の意思では無い。誰かが用意した場所に、己は放り込まれた。一度ならず、二度までも。

2013-12-30 02:39:43
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

しかも、見知らぬ大罪と邂逅し、馬鹿げた殺し合いを演じる羽目になった。 普通ならば、有り得ない。誰かが、望まない限り。 ——ならば、誰が? 己の『傲慢』では無いのは確かだ。彼女はこんなことを求めたりなどしない。そもそも、彼女が求めることなど殆ど無いのだ。

2013-12-30 02:40:12
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

彼女は彼女だけで、十分に完結している。 では、誰だ。あの城にいる面々は有り得ない。『傲慢』以外の彼らは此処まで大きなことなど出来やしない。他の大罪たちだろうか。いいや、その線も薄そうだ。なにせ今回も、前回も、己が戦った相手は何処ぞの大罪たちだったのだ。

2013-12-30 02:40:28
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

そうなると、もっと上の存在か。罪の上など笑えるが、そうと表現するより他に無い。 ——帰り方を思い出せないのは何故だ? つらつらと考えながらも、歩みを止めることはなく。何処へ続くのか分からない道を己は進んで行く。果たしてこの先に帰るべき場所は在るのだろうか。

2013-12-30 02:40:45
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

在ったとして、果たして其処は—— 嫌な予感がする。焦燥ではない。恐怖だ。己の身を、らしくもない恐怖が焼いている。その理由など分からない。分からないが、とにかく、早く帰らなくては。彼女が待っている。あの白の花園で、己を待っている。

2013-12-30 02:41:02
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ああ早く、早く、帰るのだ、己は彼女の下に、自身の唯一、ただ一人の『傲慢』の下へ、早く、早く、早く——

2013-12-30 02:41:14
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「——長い夢なら、どうか、どうか、」

2013-12-30 02:41:38

――とある大罪

エメロード @actKrwz

――――――――――。

2013-12-30 11:21:10
エメロード @actKrwz

「――おや、ぬしが此処に来るとは、珍しい事もあるものだ」 くつりと喉を鳴らし笑いながらも、何処か気だるげに声を上げた許容の姫に、強欲たる紅は小さく笑みを返し、金の双眸で翡翠を見据えた。 「ご機嫌麗しゅう、姫。なに、久々に顔でも出しておこうかと、思ってね。」

2013-12-30 11:21:20
エメロード @actKrwz

姫の傍らにいた眠たげな銀紫の頭を撫でる。さらり、と天辺で結った黒髪が流れ落ちたのを見てとって、小さく息を吐いた許容はゆる、と正した姿勢を崩す。 「とんだ気まぐれもあったものよ。――あちらは、良いのか」 “あちら”と言った瞬間、僅かに眉根を下げ、金色は柔らかい色を灯す。

2013-12-30 11:21:30
エメロード @actKrwz

「少し、出てくると言っただけだからね」 きっと、怠惰のあの子は察しているのだろうけどとは、口にせず。僅か、憂いを帯びたその金色から目を逸らし、翡翠は遠くを見るように。 「そうか。――なれがそう云うのであれば、そうなのであろうな」 喉を震わせ発せられる音に、取り留めた感情は乗らず。

2013-12-30 11:21:39
エメロード @actKrwz

「私の知る“あれ”とは、違うようだけれど。――在ると分かったら、確かめずにはいられなくてね」 困った性質だ、と苦い笑みを浮かべながらも、思案するように顎に指を掛けながら、金色は伏せられる。 「――さて、どうしたものかな」 悩ましいね、と呟いた声は何処か、遠く。

2013-12-30 11:21:47
エメロード @actKrwz

烏珠の髪に覆われた片目から僅か、垣間見えた蒼穹はそっと伏せられ。 ――そこから、二人の間に、一言すらも、無く。 ただ、時折、眠たげな銀紫の小さな子守唄が、耳を慰める程度に――。

2013-12-30 11:21:58

――とある大罪

華夏の勇者 @battle_atom

少年が気が付いた時、そこは既に見慣れた屋敷の中で。 此処にいるという事は【舞台】はおそらく終わったのだろうが、相手の頭を喰い千切ったその瞬間から、全くと言っていいほど記憶がない。 寝具から身体を起こして隣を見遣れば、そこには安らかに寝息を立てる片割れの姿があった。

2013-12-30 18:27:32
華夏の勇者 @battle_atom

(良かった…) どうやら自分はきちんとこの少女を守る事が出来た様だ。 自身の目的はきちんと果たせたのだと、少年はそっと胸を撫で下ろす。 けれどそれはほんの一瞬で、それとほぼ同時に、からりと襖を開けて現れた男の姿に、再び少年の機嫌はどん底へと突き落とされた。

2013-12-30 18:27:58