ライプニッツとリンの発見

ライプニッツはベール宛書簡で、リン(phosphorus)を"feu maniable"と形容したが、それはなぜなのか。1つの疑問をつぶやいたことからはじまった、ことばの意味を探求する冒険。(訳語1つを決めるのがどれだけ大変か、とても勉強になりました。)
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Hemmi Tatsuo @camomille0206

@shinjike @akihito_suzuki 「空気から分離され、管に閉じられると、火は火であり続けられない…火は冷えた、maniableな物体となる」。と訳せるでしょうか。この場合問題の"maniable"は冷却し触れることのできる、可触的なぐらいの意味でしょう。

2014-01-09 23:05:11
Hemmi Tatsuo @camomille0206

@shinjike @akihito_suzuki すると、この形容詞は、火の性質と反対の固体の性質をもつ物質を示す形容詞になります。つまりは火でありながら固体、同じことですが、固体でありながら火「可触的火」とは、すなわち反対物の一致を指すバロック・スコラ的な用語では。

2014-01-09 23:08:39
Nyancordia @concentusmn

@camomille0206 @shinjike @akihito_suzuki ティマイオスでは火と地は最初の対立項ですよね?

2014-01-09 23:11:58
Hemmi Tatsuo @camomille0206

@shinjike @akihito_suzuki この解釈のヒントは、『百科全書』にもチェンバーズにも記載されている、他の物質に対する「リン」の燃素の群を抜いた高さへの言及。「リン」とはすなわち〈物体焔〉だと言っているのでは?

2014-01-09 23:12:13
Hemmi Tatsuo @camomille0206

@concentusmn @shinjike @akihito_suzuki なるほど、そうすると地=火としてのリンですか。

2014-01-09 23:13:06
しんじけ @shinjike

@camomille0206 @akihito_suzuki うーん、なるほど。深いですね。当時は水中に入れて固体化させて、保存していたようですが、ライプニッツがどう保存していたかはわかりません。それでも、固体として手で扱える火、というのは有望な解釈かもしれません。

2014-01-09 23:14:09
Hemmi Tatsuo @camomille0206

@shinjike @akihito_suzuki 面白いものですね。語感としては日本語の「石炭」とか「石油」の感じでしょうか(これもバロック・スコラかな^^)。それではちょっとこれからまた別な森にやや沈潜します。

2014-01-09 23:16:58
Nyancordia @concentusmn

@camomille0206 @shinjike @akihito_suzuki ただ、その場合では「中項」が介在しない形になります。対立物が直接結び付くというのが、もしもバロック的イマージュであるとすれば、自然現象における典型なのかもしれません。

2014-01-09 23:18:22
Nyancordia @concentusmn

@camomille0206 @shinjike @akihito_suzuki まあ、余り学問的な話ではなく、単なる思い付きです。

2014-01-09 23:20:37
しんじけ @shinjike

phosphorus liquidusの言及は多いけど、phosphorus solidusは少ないな?

2014-01-09 23:29:20
しんじけ @shinjike

@camomille0206 @akihito_suzuki ご教示、ありがとうございました。少し調べると、固体リンについては当時ほとんど言及がなく、液体で保存していたようです。

2014-01-09 23:31:53
しんじけ @shinjike

ライプニッツとリンについて、なかなか詳しくかいてある。 http://t.co/02vDNWF3X0 http://t.co/rQxZ37DI92

2014-01-09 23:37:47
Hemmi Tatsuo @camomille0206

@shinjike @akihito_suzuki 先ほど「固体」と書いたのですが、これは失敗でした。くだんのオランダ人学者の文を再読すると冷えた触れうる物体へと転じるとあります。「熱く触れえぬ」火の性質と反対のものは、固体に限らず液体もそうですね。対立項はある気がします。

2014-01-09 23:39:08
しんじけ @shinjike

"phosphorus solidus"への言及があるのはこれ。1699年とある。 http://t.co/wJ5ycrAubt

2014-01-09 23:44:04
しんじけ @shinjike

@camomille0206 @akihito_suzuki すみません、Philosophical Transactionに、ライプニッツにリンを示した本人である、クラフトが、固体のリンを製造していたという記述がありました。ボイルが製造したのは液体どまりだったようですが。

2014-01-09 23:51:22
しんじけ @shinjike

この証拠は大きい気がする。クラフトのサンプルには液体と固体のリンがあり、ライプニッツはそれを見て、"手で扱える火"と呼んだ可能性は高いと思われる。

2014-01-09 23:53:21
しんじけ @shinjike

ライプニッツは"phosphorus mirabilis"(驚くべきリン)とか言っているだけでなく、詩まで歌ってしまっているので、リンの製造によほど感動したに違いない。

2014-01-09 23:57:24
Nyancordia @concentusmn

@shinjike その着眼点、すごく面白いと思います。

2014-01-09 23:59:31
Kantaro OHASHI @kantaro_ohashi

@shinjike 1696年のアカデミーフランセーズの辞典"Manier. v. a. Toucher, taster avec la main"とありますから、「触って扱うことができる」、という意味だと僕も思いました。 http://t.co/cwc2NA6lNP

2014-01-09 23:59:58
しんじけ @shinjike

@kantaro_ohashi だめ押しをすると、RIchelet(1680)では"traitable, qu'on peut aisement manier avec les mains"とあり、用例に、"La cire est maniable"とあります。

2014-01-10 00:06:28
Kantaro OHASHI @kantaro_ohashi

@shinjike ありがとうございます。6時間前のことだったのですね。乗り遅れてお恥ずかしい(汗)。ライプニッツの火の関連の議論も面白そうですね。またTLなどでもご教示ください。

2014-01-10 00:12:49
Nyancordia @concentusmn

@shinjike 錬金術↔化学、四大元素/元質↔物質の三態の中でリンがどう位置付けられるのか、あるいはライプニッツの錬金術に対する興味とリンがどの程度結び付いていたのかとか、ちょっと萌えます。錬金術と火というのは密接してますしね。

2014-01-10 00:11:19
しんじけ @shinjike

@concentusmn 錬金術師たちが金色と尿の関係に注目していて、クラフトが教えてくれなかったリンの製造法を、ボイルが独自に尿からではないかと推察するあたりが、最高に面白かったですね。

2014-01-10 00:21:07