エレファント小話~何に撃たれるつもりだったの?~122mm加農と装甲内面剥離を考える
象の装甲の想定敵が122mm A-19でなく152mm ML-20であった線について、「でもML-20って1000mmで120mm抜くかどうかだよなあ。オーバースペックな」と首を傾げてたけども、この120mmって数字は赤軍基準での貫徹限界(弾がきちんと向こうに抜ける)なんだ
2014-01-11 23:56:33つまり、赤軍基準では1000mで120mmくらいしか抜かない152mm ML-20だけど、独軍基準(ちょっとでも穴が空くかどうか、でしたっけ?)で見れば、120mm/1000mよりもっと危険な貫通力を持つ砲であるように見えるはずなんだ。ひょっとして、その辺から象の装甲の要求が?
2014-01-12 00:01:04いや待て、独軍の貫通力基準についてちょっと自信がなくなってきた。日ソは「弾がきちんと向こうに通ること」で、米英は「装甲に光を当てて裏から見えること」だったはずだけど、独軍は実際どうだったんだろ?
2014-01-12 00:03:03なんとなく後者だったような記憶があるものの、でも独軍は対戦車砲弾として徹甲榴弾を主用していたわけで、とすると前者の基準を採っているほうが自然な気がする。mmm...
2014-01-12 00:05:02ともあれ、「同じ砲でも見る国によってどれくらい怖いかが変わる」ってのは、ちょっと忘れてた視点ね。赤軍から見た独軍火砲がどうだったかは多少は気にしてたけど、逆の見方はサッパリ忘れてた
2014-01-12 00:11:19赤軍火砲が独軍からどう見えたか、これについてはイマイチ資料を持ってない。でも逆についてはいくらかがある。であれば、同じ火砲についての数字の差を見てやれば、それを元にしてML-20が独軍にとってどんな砲に見えたかを推定することもできそうね
2014-01-12 00:31:08しばし日を開けて再開
一週間くらい放置してたけど、ここらで「赤軍122mm加農/152mm加農榴弾砲は独軍からはどんな砲に見えたか」のお話を
2014-01-17 19:19:00このお話の発端は「象ってなんであんなに無茶苦茶な装甲厚なの? 何に撃たれることを想定してたの?」という疑問から。象の要求仕様の出所・根拠が私にはよくわからんという訳でした
2014-01-17 19:21:20象の200mm装甲は、122mm A-19加農/152mm ML-20加農榴弾砲を想定したものだろうか? それぞれ距離500mで150mm/125mm、距離1000mで130mm/115mmを貫く強力な砲だけど、これに対して200mm装甲は過剰にも思えるぞ、と
2014-01-17 19:26:21しかして、先に挙げた 「距離500mで150mm/125mm、距離1000mで130mm/115mmを貫く」 というのは、赤軍の基準における貫通力。同じ砲でも独軍の基準で測った場合、これとは違った威力に見えたはず……じゃあそれを推定してみましょう、って所で話が止まってました
2014-01-17 19:30:53独軍の貫通基準
赤軍は徹甲弾の貫通判定の基準として完全貫徹を採ってました。つまり、弾が装甲の反対側まで完全に抜けること。装甲が割れたけど弾は弾かれた・抜けきらなかったとかは、貫徹とは判定されなかった訳です。一方ドイツはどうだったかと、これがうろ覚えだったんですが……
2014-01-17 19:37:57調べなおすと、どうやらドイツも貫通判定の基準は完全貫徹で、半貫通だのは貫通扱いにならない様子。ドイツもソ連同様に対戦車用の砲弾としては純徹甲弾でなく徹甲榴弾を主用していたから、これはある意味当然ではあるんだけど……(夏の火砲本では間違い書いちゃったな。ケジメ案件だ)
2014-01-17 19:40:30つまりA-19もML-20の威力がドイツ側からどう見えたかについては、 「距離500mで150mm/125mm、距離1000mで130mm/115mmを貫く」 という赤軍の認識と、そう大きく変わらなかったろうとは思うのです。何%が貫通とか面倒な話は横に置くとして
2014-01-17 19:46:07装甲裏面強度限界の推定
とは言え、とは言えです。実際、当時の徹甲弾は完全貫徹できなくとも、装甲の内側に被害を及ぼすことがしばしばありました。弾が抜けきらずとも、ひび割れてみたり、装甲内面がスパーンと剥離したり、とにかく諸々の理由で
2014-01-17 19:48:34「完全貫徹には至らないけども装甲内面に何かしらの被害を及ぼし得る弾」というと、何か“まぐれ”めいて聞こえるかも知れないけども、実際にはそんな事はなく計算可能なもののようです。赤軍ではこれは「装甲裏面強度限界」とかいう指標で表されていました
2014-01-17 19:51:35で、ひょっとすると象の200mm装甲ってのは、「貫徹限界」だけでなく「装甲裏面強度限界」の観点からも122mm加農/152mm加農榴弾砲に耐えるつもりの物だったんじゃないかしら……という妄想が湧いてきたのです
2014-01-17 19:54:49例え152mmで撃たれて抜かれない装甲厚にしたとしても、スポール破壊で内部に破片が飛び散るようじゃ、まあダメですよねという考え。英軍のHESHの例を見るに、どうも剥離破片の量は弾頭重量がデカいほど大きいような気配があるし、152mmに耐えるつもりなら内面剥離も無視はできないぞと
2014-01-17 19:57:13じゃあ実際152mm加農榴弾砲はどのへんの装甲厚までは裏面に被害を及ぼし得るの? という疑問が湧いてくるところです。幸い、122mm加農をはじめ、いくつかの砲については貫徹限界と装甲裏面強度限界のデータが残ってます。これらを比較すれば、152mm加農榴弾砲の数字もわかるはず……
2014-01-17 19:59:21少々データが少ないのですが、だいたい貫徹限界の9割くらいの存速が装甲裏面強度限界になる雰囲気です。つまり「弾が完全に装甲の向こうに抜けられるような速度」から1割引きの速度で着弾したとしても、装甲裏面に何らかの被害を及ぼし得るというわけ
2014-01-17 20:03:53