【侵略的少女、一月】福間健二 2factory54

福間健二 @acasaazul

飛沫が枯葉の色をたたいた。すっきりはしたけど、冬の時代はこれからだ。森を抜けると、零度の夜明けに小犬を連れた男たちがぞろぞろ。用のないものを肥大させている。何を我慢してそうなるのか。だれの妹でもないからね、ときみは言った。普通にさむい！（侵略的少女、一月）#2factory54

福間健二 @acasaazul

だれの妹でもない。自由を求めて生きる。ギャングスターの朝食の給仕はするけど、チップなんかいらない。「夢をください」と「処女のように」も肉の色を灰色にしない添加物でしかない。ない、ない、ない！ 泣かないからね、ときみは言った。普通にきつい！（侵略的少女、一月）#2factory54

福間健二 @acasaazul

泣かない冬。自由を求めて枯葉の上から霜柱を踏む。ザクッザクッ、溶けないうちは気持ちよくて異境に迷いこむ。拾い物、なんでもありがとう。貯水池の死体を見る、結膜炎の犬の目だってね。なにか叶えてくれるんじゃないか。汚れるのが平気なこの靴には。（侵略的少女、一月３）#2factory54

福間健二 @acasaazul

とびだして、きこえてくる歌で思い出した。自治区の工場の苦しい日々から海峡を越えてきた蝶。いのち、である。靴を脱いだあと、普通に未熟な模様がのこる。こんどはどういう普通？ だんだん感じるようになってわかる。灰色のハム、本当はおいしいって。（侵略的少女、一月４）#2factory54

福間健二 @acasaazul

曇り空の下は「過ぎ去った場所」。つまり、時間が切る道具になる。灰色の悲しみは履きやすい古靴になる。切って、履いて、階段をころげおちて男子になった。川をわたって稲妻を見た。心は読まないでね、ときみは言った。女子に戻った体、見てもいいから。（侵略的少女、一月５）#2factory54

福間健二 @acasaazul

シラサギが飛ぶ、さびしい土手の放散物の、涸れた「普通」に置きかえられる、子どもたちのバラ色の頬。カミソリで切りとりたかった。そう、仲間を求める半端な傷が思うことね、ときみは言った。二本でひとつのもの。その折り方、少しずれて、セクシーだ。（侵略的少女、一月６）#2factory54

福間健二 @acasaazul

立って、さわぐ。泥をはねて。そうするなと言う死者が停止点からこぼれおちる。またぞろぞろと。ナイフからナイフにじゃないとしたら、裏返しゲームに飽きた唇と心臓、何から何に飛ぶのか。やってられないよ、ときみは言わない。でも世界が老いている。（侵略的少女、一月７）#2factory54

福間健二 @acasaazul

断面。領域。警告。息のくもり。そんなもの、地面に横たわる白い下着のブー子に効くものか。闇の中、怯えているのは豆たち。毛布で隠して運べば、そのお気に召すままだ。「ことり」のうどんと「三葉屋」のちくわロールではじまった松山。愛しき姫君の国。（侵略的少女、一月８）#2factory54

福間健二 @acasaazul

征服者の爪をのばしっぱなし。用心深そうな山がどこからでも見えることよりもその爪が失敗の理由の、ブー子ちゃん、ごらんなさい、ときみは言った。高浜、三津浜、渡し舟でわたる小さな国の、胸。ヤー、ダー、トゥラ。いのち、ひとつだけでは足りない。（侵略的少女、一月９）#2factory54

福間健二 @acasaazul

地面とおなじ色の空。漁村の迷路、なにかの罠だった色褪せた夏のポスターのきみ。無理してないか、今週の出来事の、開いた襟。出ておいでよ、ブー子ちゃん、ときみは言った。最強の二人になろう。ふりだした雨のなか、攻撃する相手は見あたらないけど。（侵略的少女、一月10）#2factory54