言えない言葉~土方歳三~

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説第7弾です。 ~内容~ 「黒と白~斎藤一~」3000view達成につき、感謝の気持ちを込めて、ショート書きました。 忙殺される毎日の中、ほんの一瞬訪れる静かな時間。 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「言えない言葉~土方歳三~」 綺羅 2014.1.31 2014.2.15改題

2014-02-15 21:07:11
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

仕事が積み重なって山になって、 頭だけで考えるもの、目に見える形になってくるもの、 色々あるんだが。

2014-01-31 18:49:43
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

ちりも積もれば山となる。 何ヶ月かに一回は、どうしてもそんな状態になってしまう。

2014-01-31 18:49:58
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

俺の文机の周辺の紙束が、やっと片付いたのは、 夜明け前のことだった。

2014-01-31 18:50:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

障子を開けて廊下に半身を出すと、 冬の澄んだ空気がやけに綺麗なものに感じる。

2014-01-31 18:50:38
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

他の存在を拒絶するような、凛とした空間。 それは道場で精神統一をするのと似ているかもしれない。

2014-01-31 18:50:48
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

朝日が静を包み込み、輝きを増しながら昇り始めるまであと少し。 俺はなんとなく部屋を出て、屯所のあちらこちらを見て回る。

2014-01-31 18:51:02
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

人の気配に過剰なまでに敏感な奴だから、 敵の前でもないのに、俺は息も殺してそっと部屋に近づく。 そっと中を覗くと、規則正しい寝息が聞こえてきた。

2014-01-31 18:51:21
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

それでも、息苦しいのだろうか。 仰向きではなく、体を横に向けている。

2014-01-31 18:51:30
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

布団の中の背中は、生意気なガキだった頃とは随分変わり、 広くなった。そして京に来て、ほんの少しの優しさを覚えたようだ。

2014-01-31 18:51:44
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

お前のその強さに、頼りっきりで、申し訳ない。 だが、新選組にはお前が必要だ。 まだまだこれからだぞ。先に逝ったりしたら許さねえからな。

2014-01-31 18:51:57
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

薄茶色のやわらかい髪についた寝癖を直したら、 朝餉で顔を合わそう。

2014-01-31 18:52:12
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

軋む廊下を道場へ向かう。 辺りはまだ薄暗い。 袴の擦れる音だけが、屯所の音の全てだ。

2014-01-31 18:52:40
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

道場の中を覗くと、思った通りの姿があった。

2014-01-31 18:52:57
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

正座したまま微動だにしない。 その背中を見ているだけでも、俺も背筋が伸びるような気持ちよさだ。

2014-01-31 18:53:09
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

こいつは放っておいても大丈夫。 自分の意見を言わないところが欠点だが、仕事においても、人間性においても、 疑うべきところは何もない。

2014-01-31 18:53:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

真っ直ぐなこころ、鈍ることのない切れ味の刀。 揺るがない新選組を支えるしっかりした土台の一つ、だな。

2014-01-31 18:53:54
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

俺は道場を離れ、奴らがどの部屋にいるのかを探し当てるまでもなく、 漂ってくる酒の匂いに辟易しながら、遠慮なく障子を開けた。

2014-01-31 18:54:07
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

案の定、三人が鼾をかきながら転がっている。 大の字で、いちばん場所をとり、 それに潰されて体を小さくし、 寝姿さえも、二人を全く気にもしていない様子で。

2014-01-31 18:54:21
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

俺は足元に転がる酒瓶をどけながら、 三人に布団を被せていく。

2014-01-31 18:54:31
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

まったく世話の焼ける奴らだ。 だが、こいつらの仲間を想う気持ち、向き合い方、 そんなところは、隊士どもに見習わせたいと思うこともある。

2014-01-31 18:54:49
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

いつまでも、試衛館の雰囲気を持ち続けてくれることが、 俺にとっても有難い時もある。

2014-01-31 18:55:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

俺は廊下からそちらに少し目線を投げる。 起きているかもしれないし、そろそろ寝ようとしているかもしれない。

2014-01-31 18:55:17
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

灯りを確かめることができないその部屋を見つめ、 共に色んなものを見て来た時間を想う。 試衛館にいた頃から、頭が上がらない一人だが、俺のことを理解してくれる人でもある。

2014-01-31 18:55:37