丹生谷貴志ツイートまとめ(2014年2月)

丹生谷貴志氏の2014年2月分のツイートをまとめました。
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nibuya @cbfn

相変わらず?おそろしい遅さでクローデル『黄金の頭』を原文で’・・。古典的どころか或る意味グロテスクにいびつな感じの「問題作」と言うか端的に「カッコイイ」劇なのだが、呑み込むのに意外に苦労する。渡辺守章先生の訳があるが・・・僕にはどうも今現在日本語台詞回しの文体がしっくり来ない。

2014-02-09 11:31:11
nibuya @cbfn

例えば黄金の頭に率いられた民衆軍の決死戦の場面で、異形の「軍旗」を幻視する場の台詞は「死刑囚をいっぱいに吊った古の絞首台か、帆桁を一面張りめぐらしたマストか、われわれの悲惨の恐るべき旗印、巨大で、鎖につながれたやつだ!」と訳されている数行の具体イメージを掴むのに時間がかかる。

2014-02-09 13:09:11
nibuya @cbfn

帆桁は帆ではなく横棒なので「マストに一面に張りめぐらす」という訳は少し無理。マストに十字架のように帆桁の横棒が、しかし夥しく装備されそこに「帆を調整するための船員の群れ」がずらりと並んでいる光景でしょうか。それが「絞首刑台に奇妙な果実のように」死体が吊るされているイメージに重なる

2014-02-09 14:32:22
nibuya @cbfn

「われわれの悲惨」はすぐ後の「鎖につながれた」からも想像されるように、イメージとしては生の無惨さの泥濘に捕縛された「どん底の者たち」という感じか。従ってここのイメージは例えば石川さんの『狂風記』の「ゴミ山の狼群」に近いのか。要は地上の悲惨そのものである生者の群れ・・・

2014-02-09 14:39:05
nibuya @cbfn

「あたかも群衆が帆桁に群がって戦闘態勢に入った異様な十字架めいた一本のマスト、それが死体の群れをぶら下げた古風な絞首刑台のようでもあり、それこそが人間であることの鎖につながれた悲惨の恐るべき巨大な、怪物のような軍旗のごとくに蠢きはためいていたのだ!」といった感じでしょうかね・・・

2014-02-09 14:47:51
nibuya @cbfn

ブランショの『クローデルと無限』という論考を久しぶりに読む・・・さすがにこの鋭利さが何処から来ているかはもはやおおよそ見当はつき、その問題点もおおよそ知っているにしても、しかし、久しぶりに読むと、その批評言語の動きの鋭利さと美しさに圧倒されてしまう・・・

2014-02-09 22:50:20
nibuya @cbfn

例えば「一切を焼き滅ぼさずにはおかぬ、光そのものとなった光の嫉妬である、しかしそれは同時に、八月の業の輝きのうちにひそむ夜そのものの嫉妬でもあるのだ」といった彼に特徴的な口調が、しかし一切のレトリックなしの言葉として書かれているということの驚異。ブランショを読むとはそういうことだ

2014-02-10 00:01:43
nibuya @cbfn

「黄金の頭」が本性を現す瞬間のト書き「彼は激しく首を振る。兜が外れ落ち、黄金の長髪が肩にかかる。人々は茫然と口を開けて彼を見る。”見ろ、黄金の頭は、女だ!”」とまあ、殆どアニメめいてます。素晴らしい。・・・まあ「黄金の頭」という日本語名は仕方ないですが。仏発音で「テットドール」。

2014-02-10 22:26:06
nibuya @cbfn

それこそ唐突に、遠藤周作さん・・・知る人ぞ知る、遠藤さんは日本のサド研究者の最初の一人で、留学期にはそのためにクロソフスキーに会っている・・・から思い出したわけではないのですが。遠藤さんというと「狐狸庵もの」のイメージが強いのか、僕には遠藤さんはただひたすら「暗い」という印象で・

2014-02-11 02:18:05
nibuya @cbfn

遠藤さんの『留学』の中にサドを研究する日本人留学生=主人公がクロワッセの廃墟で血を吐く?印象的な場面があったと記憶します。『おバカさん』みたいなコメディーサスペンス仕立ても記憶は暗く、遺作『深い河』はどうもヒンドゥーに関してちょっと制度の理解がおかしいかなと疑問を感じましたが・・

2014-02-11 02:26:46
nibuya @cbfn

確か小学校の時か中学の時か『沈黙』を読んで以来・・・ともあれ遠藤さんという作家は世界を極限設定に於けるメロドラマとしてのみ捉えた人だったかなと、遠い記憶で勝手な感想が浮かびますが・・ああ『私が・捨てた・女』なんていう藤田まことさん主演映画とか・・・何故不意に浮かんで来たのか

2014-02-11 02:50:10
nibuya @cbfn

・・・ああ、小学か中学で『沈黙』を読んだってのは早熟?の暗黙ではなくて、単に家に数少ない「蔵書」としてあっただけのこと。昔の日本家庭は何故か芥川賞=文芸春秋と谷崎賞受賞作だったかは、変なスノビズムで買う習慣があったのですね。それだけのことです。

2014-02-11 03:45:56
nibuya @cbfn

子供の頃の僕がどれだけ本と疎遠だったかは、かなり後まで、何故か「ちゃんとした難しい本は新宿の駅のキオスクで売っている」と思い込んでいたという事実・・・。いったいなんでそんな思い込みが出来たのか、今では全く思い出せません。

2014-02-11 03:51:04
nibuya @cbfn

遠藤さんって卒論対象とかで結講人気あるんですね。まあ主題が「分かり易い大問題」の小説家でもあるし、ポジにもネガにも問題が見つけ易くて扱い易いというのは想像出来る。

2014-02-11 09:50:00
nibuya @cbfn

どうでもいい話ですが今見たら遠藤さんの『沈黙』は野坂昭如『エロ事師たち』と谷崎賞を競って?いるのですね。この時の三島さんの選評は何はともあれ見事に鮮明。『沈黙』を褒め上げつつ「最後の一行」に疑問を示す辺りの小説読みの倫理的視線は当時批評の「常識的慧眼」が未だ活きていた残香でしょう

2014-02-11 11:26:55
nibuya @cbfn

三島さんが優れた批評家であったかはどうでもいいとしてその「常識的慧眼」の公平さは今は絶えてない気がします。例えば個人的には三島さんは開高健さんのガストロノミックな現実処理が倫理的には嫌いだったでしょうがしかし、その美点を黙殺することはせずその範囲で賞賛するという態度を崩さない。

2014-02-11 11:50:56
nibuya @cbfn

相も変わらず詰まらない話。福田恆存という名前を出すと微苦笑か軽い軽蔑乃至は警戒の表情をする知人が多い。僕にはこの人はロレンスの『黙示録』の翻訳者である一方劇作家に尽きているので、「国を憂う保守論客」なんて脳裏にないんですが、 まあ外野からの臭みがついてしまうと仕方ないんでしょう

2014-02-11 13:59:05
nibuya @cbfn

有吉佐和子『紀ノ川』・・・とか、無性に読みたくなるとか言うとこれまた不信の目で見られるのですが、まあ根が紀州なんで、あの土地の風光が懐かしい・・・出来れば人間が一人も出て来なければいいのですが、そうも行かないのでしょう。まあ、中上さんの傑作『紀州』がありますが・・・

2014-02-11 14:48:21
nibuya @cbfn

或る人が有吉佐和子には「内面を描く能力も意志もなかった」と書いているそうです。まあ「内面」なんていうのは或る種の男が作り出した神話、内面と外界が完全に一致している人間はいるもので、しかしその不幸は一致しているはずなのに世界が共に老いてくれないという異様な事態に出会った瞬間でしょう

2014-02-11 15:00:17
nibuya @cbfn

一致しているはずなのに何か知れない極だけが老い、或いは破調を示し、崩れ始める。それは内面的痛みとしてではなく文字通り生皮が剥がれるような引き連れの痛みとして身体的直接性で関知される・・・内面とは関わらない異様な悲劇性・・・男にはない、それは例えばアンティゴーヌ的な悲劇性で ・・・

2014-02-11 15:07:17
nibuya @cbfn

・・・とまあ、思いつきで書き出すもんじゃない。Wikipediaにも書かれているので有名な話ですが、僕の世代だと『笑っていいとも!』に出た時の有吉さんの痛ましいまでの狂乱?が記憶にあって・・・

2014-02-11 15:41:20
nibuya @cbfn

https://t.co/gSJCSF8Ekf・・とまあカンチェラーラのツィッター添付写真を見て不意に、中島敦を旧かな文で読み直さねばと思う。小沢秋広さんの中島敦への情熱・・って、小沢さんはパリで十全健在のはずですが、ドゥルーズに師事しつつ中島論を最後に颯爽と筆を捨てた?のは・・

2014-02-12 20:51:15
nibuya @cbfn

・・とまあ、何度も言いますが僕は今更仮名遣いを旧仮名さらに旧漢字に戻すなんて意見は持ちませんしもはや意味ないと思いますが、本来旧仮名で発表された小説や詩を「現代かな」に「直して」再版することには基本的に反対です。例えば『狂風記』を文庫化で現代かなにした出版社の判断とかは疑います。

2014-02-12 21:10:48
nibuya @cbfn

メリメを上田秋成に比すのは常套のことだが、相変わらずの間歇的整理のついでに『カルメン』の冒頭の書き振りを見たらなるほどね、と納得する。しかし杉先生の翻訳は今や講談調?が鼻について苦しい。歴史考古学者だったメリメの原文はもっと乾いていると思いますけど・・・いや名訳の誉れはともかく。

2014-02-12 21:26:13
nibuya @cbfn

勝新太郎さんが杵屋三味線の見事な名手だったことは知る人も多いと思います。お父上の杵屋勝東次さんの何の祝いだったか兄上の若山富三郎さんと三人で舞台で演奏したヴィデオを見た記憶がありますが残念ながら手に入らない。YouTubeにはバルチュスのために演奏している短いものが見つかります。

2014-02-13 08:57:33