或る劇場でポール・ヴァレリーを見つけたバタイユが「ヴァレリー氏を叩き出そう」と叫んだという伝説は有名。理由は「彼こそは完璧な敵なのだ!」、この「完璧な敵」というニュアンス。因にブルトンもこれに「心から」賛同したろう。彼は『テスト氏』に感歎の手紙を書いている・・・。
2014-02-13 09:16:09どうでもいい私事。僕はだらしないくせに物を失くさないが二つだけ外に持ち出すとすぐに失くすものがあり一つはペン、一つはバイク以外の目的で持ち出した時の手袋。失くした時の状況すら思い出せないほどに、空中に消えたかのように失くす。手袋は今年だけで二万円分を失くした。中古だったのが幸い。
2014-02-13 10:08:15三島さんの短評の上手さはその指摘が当の作家にとっての或る技術的なヒントを含んでいる点だと思う。例えば遠藤さんの『沈黙』への短評は死の逼迫の中の「西洋人」によって見られた日本の風光の緊迫した描写の沈静を指摘し、この指摘は後に『侍』で遠藤さんは逆用として意識する事になったと見えます
2014-02-13 21:26:59嫌いではない作家だったはずなのに「どす黒い政治の歯車のなかに巻き込まれた無垢な男の、重苦しい、黒々とした、どうしようもない悲劇」なんて文章を平気で書いているのに出会うとまったく不信感に襲われてしまう。
2014-02-15 08:58:07基本、完全独学型なんで、「心性的正確」は意外に徹底して目指しますが、具体情報はデタラメだったりします。全く学者に向かない。例えば「イングランド」の語源が「アングロ・ランド」であるよりも「エンジェル・ランド=天使の国」という伝説の方がかっこいいからそっちを学生さんに教えてしまうとか
2014-02-16 11:07:49・・・僕自身外国語が得意じゃないので翻訳で読む事が大部分ですしそれで充分なんですが、それでも例えばジロドゥーの『ジークフリート』を読んでいて「デルフトのヴェルメアの女よ!」といった訳に出会ってしまうととたんにそこで感興が途切れてしまったりする。無益な教養主義?
2014-02-16 18:45:27・・・もっとも、ヴァン・ゴッホという風に僕らも呼び習わしているのだから、多分フランス人自身こんな風に発音していると思えば、「フェルメール・ファン・デルフト」ではなくて「デルフトのヴェルメア」でもいいわけですが。
2014-02-17 12:24:53僕の英国史の知識は、何でヘンリーだらけリチャードだらけ?女はみんなマチルドかマリーがエリザベス? レヴェルですんで大車輪で整理。ヘンリー二世が『冬のライオン』だとか、まあひどいひどい。しかし映画としてはともかく、舞台劇の映画化らしくP・オトゥールとC・ヘップバーンの熱演でしたね。
2014-02-17 13:28:17ヘップバーンが演じたのはヘンリー二世の妃でエレオノール・ダキテーヌ、南フランス、アクィタニアの領主ですね。ヘンリーの息子が生まれると彼らを促してフランス領のヘンリーの権限からの奪還のために謀反を促したり、なかなかのもんです。映画のラストはちょっとよかった。
2014-02-17 13:38:23美術史年代で言えば国際ゴチック様式からゴチック盛期にいたる時期ですかね。イギリスの様式年代は大陸と少し異なりますが、ともかく『冬のライオン』の石組みの城の狭さ、荒涼とした寒々しさ・・・はどこまでリアルかはともかく、感じが出てました。
2014-02-17 13:44:23必要があってアイルランド「文化」を早見。アイルランドというとケルト、妖精、エンヤ等々ばかり。まあケルト性はイエイツも強調するように重要なのだろうが、ケルトの後にバイキングによる壊滅と再構成、今に至るまで集団性より血族、その裏腹の血肉的な孤独と自己破壊的な放浪性の取り留めなさ・・・
2014-02-18 21:35:48延々失敗し続けたスコットランド征服に、エドワード一世はついに「神と白鳥たちにかけてスコットランド反乱に打ち勝ち、勝ったら絶対至善のキリスト教徒に成ってやる」と奇妙な誓いを立て、墓に「スコットランド人の王」と刻めと遺言し、失敗して死んだ。この秋スコットランドはイングランドを外れる?
2014-02-20 10:06:02チョーサーに托鉢僧が信者の名前を小さな象牙板にメモしては消すという場面があって、それでオースティンが「私の小説は、ただ小さな象牙板に文字を書いているようなものです」と手紙に書いていたのを思い出す。その時この「小さな象牙の板に書く」という言葉のイメージが分からなかったが・・・
2014-02-20 13:20:16空虚な白い小さな象牙の上に細かな文字がびっしりと書かれ、それは布の一拭きで消えてしまう。僕のオースティンのイメージはこんな感じで・・・。
2014-02-20 13:29:29今は季節がら?基礎勉強・・・ほんと至極基礎的なことが脱落するので、アンドレ・モロワの『英国史』『アメリカ史』『フランス史』を一気読み。アランの弟子にあたるこの今はあまり流行らない?距離感を保った明晰な中庸は僕には魅力だし、さしあたり必要充分です。
2014-02-21 23:11:52・・・ちょと必要があってリオタールの『言説、形象』を読まなきゃならない・・・筈なんですが、このややこしい書き振りのわりに今やひどく単純なものに僕には見える大論文をもう一度読むのはシンドイ・・・まあ、昔読んだ記憶は切れてますし、このエネルギーは何はともあれ感歎すべきで・・・
2014-02-21 23:22:19調べる事があってネットを漫然と検索したら高山宏さんの書評ブログ?を見つける。お元気かしら。僕自身は高山さんの熱中する類いの「変奇」研究の底にひどく単調で退屈なものを感じてしまう人間なんですが、高山さんを見ると、まあ、やり通してらっしゃるなあと、感歎。
2014-02-22 09:55:29・・・例えばバルトルシャイティスという”美術史の鬼っ子”・・・と言われもしよう人がいて、彼の奇想の仕事は実は意外に平凡な本で、実際は彼が困らせた?義父で中世美術研究の大家フォシヨンの方がよほど複雑怪奇な精神の持ち主だったりする・・・
2014-02-22 10:55:00中島敦がオルダス・ハクスレーとカフカを少し訳しているのを今頃知る。カフカ訳は手遊び程度だがハクスレーはパスカル論とスピノザ論。ハクスレーは僕はどれも翻訳を読みかけて途中で投げ出してしまった経験があってどうもピンと来ないのだが、中島敦がこのパスカル論を訳したことは何となく納得。
2014-02-23 01:07:45ハクスレーのパスカル論は「病者の光学」論で、数学的な明澄がパスカルの「病者の身体的どん底」においてそのまま「病者の透徹における影のない神秘の透視」に連結する様を描いたもので、それは生来の、死病の予感を持った病弱を生きた中島敦があたかも自身の論考のように訳したことを納得させる・・
2014-02-23 01:18:59中島敦が出会ったハクスレーは論考集『何をしようと』の頃のハクスレーであって後年のベストセラー『知覚の扉』の彼ではない。僕は『知覚の扉』に伝説化される類いの「ドラッグ・カルチャー」言説がどうも好きになれない。ミショーのメスカリンとは別のこと・・・
2014-02-23 01:31:01歴史本の楽しみ!はマクロな知識や固有名なんてさっさと忘ちまいますが、何のこともない細部、例えば中世の僧侶がメモ用に象牙の小さな板を使っていたことは書きましたがゲルマン族の戦士が金髪の長髪で太陽英雄を意味したことから、クローデル『黄金の頭』のイメージがそこから来ているのを知るとか
2014-02-26 17:51:33「舞台」理解のために歴史本は読まざるを得ませんが、誰それが何をどうしたって話はすぐ飽きてしまいます。小説なら吉川英治・山田風太郎風は講談本としていいですが、司馬遼太郎風とか塩野七生風とか、ともかく「時代小説本」は基本ウンザリします。「人間通の顔をしたニヒリスト」って臭気が嫌い。
2014-02-27 10:49:10明治維新から数十年も立たぬうちに「近代書き言葉」を生成した日本語の柔軟性はなるほど立派だが、「観念」でも「概念」でも「抽象」でも「言説」でもいいが、こうした造語に関してもはや解釈を拡大しても意味確定能力が失われつつあるのにその変換は行われぬまま固定してしまっている事態、誰の怠慢?
2014-02-27 11:39:36