お玉さんのほぼ日刊御手洗潔レビュー(1)

お玉さんによるほぼ日刊御手洗潔レビュー。 『占星術殺人事件』、『斜め屋敷の犯罪』、『糸ノコとジグザグ』、 『紫電改研究保存会』、『疾走する死者』の5本を収録。 続きを読む
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お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

原作小説の『糸ノコとジグザグ』では、推理であの人の自殺場所だけを解読し電話で伝えるだけの、本当に美味しいとこ獲りしかしていない御手洗潔だが、『ミタライ』の御手洗潔は、詩篇が自殺予告であることを最初に推理し電話で伝え、現場に赴いてあの人の現状の確認すらしている活躍ぷりだ

2014-02-09 00:26:54
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ミタライ』の中では、『糸ノコとジグザグ』の良アレンジは、冴えている。 原作小説における、あの詩から東京という都市が浮かびあがってくる推理の経緯(DJ林へのリスナーからの電話のやり取り)には面白味を感じるが、あまりに手際がよすぎて、盛り上がりに欠ける気がする。

2014-02-09 00:27:25
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『糸ノコとジグザグ』は、島田荘司がデビュー前から温めていた何本かの短編の一つである。 都市論を背景としたAからZの冠がついた樹海都市構想の短編小説群の一本である。(そういえば予価一万円の『樹海都市』ってちゃんと発売されたのかしら?)

2014-02-09 00:27:43
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

もともと奇妙な詩の内容から都市を浮かび上がらせ、都会の中で孤独にならざるを得なかった自殺者を救いだすという、あくまでデビュー前の『糸ノコとジグザグ』構想があった。 いざ実際発表の段階で、そこに酒場で演説する男(御手洗)を後から嵌め込んだんじゃないかしら? と僕は邪推している。

2014-02-09 00:29:27
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

樹海都市構想は近年の唐突な発言ではなく、それがかなり昔から考え実践していたことは、当時の島田荘司の短編発表数を見るとよくわかる。 84年は四本、85年は七本の長編を発表しながら、ガンガン短編を発表しているのだ。背後に大量のアイディアストックがあったことを容易に想像させてくれる。

2014-02-09 00:30:49
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

今回のマラソンで取り上げる85年発表の御手洗モノ四本(『糸ノコとジグザグ』『紫電改研究保存会』『疾走する死者』『数字錠』)の他にも、『網走発遥かなり』と『展望台の殺人』に収録されている十本の短編も84年から86年に発表されたものだから、ね。

2014-02-09 00:31:16
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて『糸ノコとジグザグ』に無理から御手洗潔らしき人を捻じ込んだという邪推は、長編『北の夕鶴2/3の殺人』(1985年1月発表、吉敷刑事シリーズ三作目)に御手洗モノで使用予定だったトリックを投下してしまった、という有名なエピソードから推理してみました。

2014-02-09 00:32:00
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

島田荘司の本流、本格探偵小説の結晶たる御手洗潔シリーズ。それらは当時、封殺されている状態だったという史実。 83年発表の『死者が飲む水』。それと同スタイルの要望から誕生した84年の吉敷シリーズ。シリーズの最初の二冊が売れに売れ、社会派スタイルの注文が多く舞い込んだ85年の島田荘司

2014-02-09 00:33:52
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

このままでは御手洗モノが書けなくなってしまう、吉敷シリーズに御手洗もののトリックをどんどん投入せなアカンくなる! そんな危惧が、樹海都市構想の短編群ストックの中でも、暗号解読というケレン味のあった『糸ノコとジグザグ』に御手洗らしき人を投入する起因になったのでは、そう考えるわけね♫

2014-02-09 00:34:28
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ただ、都市での人間の孤独というテーマを効果的に演出するためDJという群衆への語り部を配置せざるを得ない構成となってしまった『糸ノコとジグザグ』 御手洗潔の個性や謎解き能力は物語上では発揮しきれず、酒場でデカイ顔をする、何だがよくわからない人物に彼が陥ってしまったのが残念。

2014-02-09 00:36:36
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『ミタライ』における『糸ノコとジグザグ』はその都市と人間の関係の比重を、おもいっきり人間のほうに傾け、人間の物語へ誘い、御手洗潔を効果的に魅せることのできる構成と変化させた。ストールのやり取りはニヤリとするし『数字錠』で見せることとなる人情味への伏線としても機能させている。

2014-02-09 00:39:00
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

小説での 「早いもので、私がDJ稼業などという、口先八丁で世渡りをする独り言労働者から足を洗って、もう二年になる。」 という若さが微塵もない記述を見せられると、DJ林を応援する気持ちがちょっと目減りしちゃうんだよね〜(>人<;)

2014-02-09 00:39:16
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『糸ノコとジグザグ』の頃から、何かドエライ強大で巨大なものを背負ったり、仮想敵として設定したりして、島田荘司は物語を作っていた、ということは伺えた。 その壮大な思い込みに自縄自縛されて、融通が利かなくなることも往々にして、あることも認識できる一本でもあった。

2014-02-09 00:40:39
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

あと、御手洗潔の活躍のフィールドではない都市と人の物語である『糸ノコとジグザグ』を、御手洗潔の物語にアレンジしてくれた『ミタライ』は偉い( ´ ▽ ` )ノ というのが今回の結論。 ただし、小説とマンガは一見見た目同じなんだが、完全に遊離した別物である、というのも当方の認識

2014-02-09 00:41:22
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

あっ、島田荘司の都市モノといえば『火刑都市』で、コレ86年発表なので、『糸ノコとジグザグ』の経験がコレの成功に繋がったのだ〜、なんて考えてたけど、島田荘司『斜め屋敷の犯罪』脱稿直後からチマチマと『火刑都市』を書き始めていたと知り、……あわわ(>人<;)

2014-02-09 00:46:49
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその4『紫電改研究保存会』です。 1985年4月、別冊文藝春秋171号掲載。 ……たぶんですが『御手洗潔の挨拶』収録の短編では、一番皆様の印象が薄い一本じゃないかしら? 私にしても今回の再読をするまで、頭の中から完全にすっ飛んでいた一本でした。

2014-02-10 00:37:38
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『紫電改研究保存会』 最初の数ページを読んだだけで分かると思うのですが、これ、完全にドイルの『赤毛連盟』、それの変形パターンなのですよ。 シャーロック・ホームズの冒険譚を念頭に置くと連想される「こいつらは何を狙っているのかしら?」 それを考えつつ、読み進める短編となっています。

2014-02-10 00:38:24
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

善吉の口からあまりに熱っぽく語られる紫電改逸話に引っ張られ(おそらく、これも島田荘司の興味の一つなのだろう)、また、あれれ被害出てないじゃんΣ(゚д゚lll)という肩透かしからの御手洗の推理! ちょっと強引すぎるが、冒頭の謎のワンショットに繋がる様は、非常にドキリとさせられる。

2014-02-10 00:39:28
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

爪の数字の説得力の無さ……。こんなことをする人間はいないと思うし、これを見せられて御手洗以外の人間がアレに気づくとは思えないんだけどね……。 そして、陰謀を巡らす連中の何たる機転の早さと行動力。 粗を探せばザックザクなんだけど、『赤毛連盟』に挑戦する気概だけで、もうお腹いっぱいよ

2014-02-10 00:40:21
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『紫電改研究保存会』 ラストも雰囲気があって何か良いネ。 また日常の中で信じがたい体験や様相が何らかの犯罪計画に絡まっていくといった御手洗短編における一種の定番フォーマット(『舞踏病』『IgE』……)が見られるので、やっぱりキライじゃないんよね。むしろ好きな部類の短編である。

2014-02-10 00:41:10
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその5『疾走する死者』であります。 EQ・1985年5月号掲載作品。 ……。 えーと。先に言うけど、コレは肌に合わなかったよ。 これ、いろいろと問題のある作品なんだよね〜(>人<;)

2014-02-10 00:43:33
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

まず、『疾走する死者』の一人称視点は隈能美堂巧だ。タックである。あの大傑作『嘘でもいいから殺人事件』のタックだ。 集英社刊行の作品から光文社のEQへ越境殴り込みだ〜( ´ ▽ ` )ノ そして、このタック視点に、どんな意図があったのだろうか? ……ほとんど、意味ない、よ、ね

2014-02-10 00:44:33
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

一人称がタックなので他者から見た石岡クンの様子が伺えるという、ある意味、貴重な作品なのでもあるが、……石岡クン、ほとんどモブキャラ状態なの……(>人<;) ちょっとは活躍してくれよ〜

2014-02-10 00:45:04
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ま、そういったしょうもない問題は置いといて。 ……この作品『疾走する死者』には同年四ヶ月前に発表された長編に使用されたトリックが、しかも大トリックが、ちょっとしたアレンジ、ほぼマンマの状態で再利用されているということだ。 (鎧を脱がせたというところがアレンジだ!)

2014-02-10 00:45:48
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ま、これも樹海都市短編群の一本みたいで、あの長編作品を書く遥か以前にアイディアのガイドラインがあったということが、つい最近島田荘司の発言からあって、わかったのだが、……そ、そんなこと、80年代、90年代、島田荘司が好きだった読者にわかるはずないよ〜Σ(゚д゚lll)

2014-02-10 00:47:37