さささテキストカラテ・バレンタイン編

さささ @sasasa3397

「所長」隣の部屋から呼ぶ声がする。そして、いつもとは違う香り。「オイオイ、どうしたってんだ、今日は」「だって、今日はバレンタインじゃないスか」扉の陰から顔を突き出した彼に、シキベは笑ってみせた。「だから、チョコトーストにしたんスけど。アー、チョコ、嫌いでした？」 1

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「そうか、もうそんな日か」先月のまま、めくり忘れていたカレンダーを破る。生憎、先の予定はゼロだ。「仕事がねえと、すぐに日付を忘れていけねえなあ」さくり、と甘いトーストをかじった。「うん、なかなかいけるんじゃねえか」「へへ」シキベは満足げに顔を綻ばせた。 2

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「……チョコ？」突然表に出てきた時は、まず周囲の様子を伺う。何もなければ、自分の状態。それから、日付と時間を確認だ。場所はいつものトレーラーハウスで、周りには特に変わりはない。だが、手のひらにはひとつ、小さなチョコレートの包みが握られていた。それが異常と言えば異常だった。 1

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彼女は、中身を取り出してしげしげと眺める。普通のチョコだ。まさか毒でもあるまい。口に放り込む。甘い。溶けてはいなかったから、変わる直前に握ったのだろう。あいつが。「ワケのわかんねえことしやがって……」立ち上がり、カレンダーを見る。13日のところまでバツ印が書かれていた。 2

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「……バッカじゃねえの？」つまり、今日は14日、ということだ。2月の。「どうせならもっと旨いやつよこせよな」何月になったって、絶対にお返しなんかしてやらねえからな。彼女は赤いマジックを手に取り、カレンダーに大きなバツ印をつけた。そして横に「ファック！」の文字も。 3

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「おとうさんへ いつも　おしごと　ありがとうございます　ばれんたいんは　いちばんすきな　おとこのひとに　チョコをあげるひなので　わたしの　いちばん　だいすきなのは　おとうさんです　おかあさんと　いっしょに　つくったよ（新幹線の絵）　ユンコ・スズキ」

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「美味しい」マッチャ・チョコを奥ゆかしく口に運びながら、アンバサダーは微笑んだ。「毎年これが貰えたとは、兄さんが羨ましいよ」ディプロマットも、笑みで応える。「ナミダも、今年は量が多くて大変だったそうだ」「そうだろうな」 「デイトレード技術者もいるからな」「デイトレード技術者もね」

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「「「カンパイ！」」」声が重なる。「絵馴染」の店内には、皿に盛ったチョコレートがあちこちに並べられている。ここ、ニチョームでは14日の作法は特に無い。性別を問わず、世話になった相手にチョコを贈る、それがニチョーム・バレンタインだった。この店では簡単なパーティーが開かれる。 1

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「どう？　楽しんでる？」ザクロが軽くウィンクをする。ヤモトは頷いた。華やかな店内の飾りつけは、彼女も手伝ったものだ。客も、男女問わず皆笑顔で甘い菓子を口にしている。「ねえ、ザクロ＝サン」「ン？」「アタイ、この街が好きだな」「あらそう」アタシと一緒ね、と店主は言った。 2

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「姉さん姉さん、バレンタインだよ」「アー、そうだっけ」「そうだよォ。チョコじゃなくてもいいからサ、何かちょうだいよ。ネ？」「……ああ、じゃあこいつあげる」「ヤッター！　……ナニコレ？」「アタシがさっき食ったガムの食べカス」「そりゃないよー」みたいなハッグ姉さんとウニパンクください

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バーの薄暗い照明の中、巨漢がひとり、カウンター席へと歩み寄り、ズブロッカをオーダーした。「ハイコレ、サービスね」「ア？」グラスの横には、小さなチョコレートの包みがある。「今日はバレンタインだから」「いらねェ」既に酒臭い男は、首を振った。「食っても、胃の中で腐っちまう」

さささ @sasasa3397

「昨日帰ったらよ、包みが二つチャブの上に置いてあってな」「はあ」「なんだったと思う？　チョコだ。うちのと、娘の分。いいだろ？」「デスネー。僕も彼女からのチョコの自慢していいです？」「まだ俺のが終わってねえぞ。会議までみっちり聞かせてやる。手紙がついててだな……」「横暴だなあ」

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電算室で考えてたんだけど、「室長、本日市場には目立った変動はありません。セキュリティも総じ緑。先の資料はIRC上で送付済みです。奴隷ハッカーが三人死亡しましたが、既に補充しました。こちらはバレンタインのチョコレートです」「うむ、引き続き業務に戻りたまえ」みたいなのしか浮かばない