ストレイトロード:ルート140(3周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は101~150をまとめました。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ホテルの窓から外を見ると、草木に霜が降りて中庭を白く染めていた。先に起きていた藍は得意げな顔でそれを眺めていたが、私の視線を感じるとすぐ窓から離れた。「あれは早起きできた人だけが見ていいものなんだって。昔パパが言ってた」そして何故かカーテンを閉める。私は風景の前から締め出された。

2014-01-10 19:37:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は巣箱を抱え、木の上と私の顔を交互に見た。「しゃがんで」指示通りにした直後、肩の上に靴が乗った。立ち上がるよう求める声が降ってくる。私が両手で靴を支えながら膝を伸ばすと、藍は太い枝の上へ巣箱を置いた。「これで解決ね」自ら呼んだ風が元の箱を破壊したのに、反省する様子は見られない。

2014-01-11 23:29:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、113。巣箱。 肩車ではなく足場として。

2014-01-11 23:30:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

民家の間の狭い土地にひっそりと石碑が建てられていた。藍はかつての戦禍を伝える碑文に目もくれず、その礎を埋めた土を掘り返す。昔の爪跡より大事な今の何かを探しているのか。「手伝いましょうか」訊ねたら彼女の髪が横に揺れた。「同じことされても邪魔なの。それより誰も来ないように見張ってて」

2014-01-12 23:12:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、114。石碑。

2014-01-12 23:12:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

成人を迎えるまでに必要な素養を身につけるのが学校という場で、うまくいかなければ子供を導く大人の失敗だ。そう思っていた私は今、厳しい現実に直面していた。「今忙しいの」藍は携帯端末を見ながら片手で冊子を床に投げつけた。登校しないならせめて宿題だけでも。私は妥協案を拾い、溜め息をつく。

2014-01-13 22:06:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、115。素養。 成人の日を眺めながら思う。

2014-01-13 22:07:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「少し前に、太陽が消えるって噂があったの、知ってる?」初耳だが驚く程でもない。その活動が以前より弱まった事実は知っている。「昔は太陽なくても明るいから別に平気だって思ってたけど、違うのね」藍は日のあたるフロントガラスを見上げた。「浴びるだけでこんな暖かくて眩しい光、他に全然ない」

2014-01-14 20:46:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、116。太陽。 永遠でなくてもいい。たかが数年で燃え尽きはしないと信じられれば、それでしばらくは歩いていける。

2014-01-14 20:48:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街を抜けてハイウェイに入る手前、最後の分岐に人が立っていた。親指を高く掲げる理由を藍に聞かれたので説明すると、素通りを指示された。「どうしてですか」「あの人とさっき街ですれ違ったけど、血の匂いがしたの。関わりたくない」物騒な忠告以上に、その気づきに驚いた。時には人間こそ恐ろしい。

2014-01-15 20:56:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

崖に架かる吊り橋を見た私はその手前で車を停めた。「なんで止まるの」「どう見ても無理です」車を通せる幅はあるが、色褪せたロープは明らかに強度不足で、足場の板にも腐食と破損が多い。徒歩でも途中から綱渡りになるかもしれない。「車はここに置いて行くしか」「ダメ。この先で積む荷物があるの」

2014-01-16 19:45:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、118。吊り橋。 この先に待つのはさらなる無茶振りに違いない。

2014-01-16 19:47:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

クレーターの外縁から内側を見下ろす。中心に刺さる黒ずんだ物体は自然の造形には見えなかった。「人工衛星の一部ですね」所見を述べると、藍は一瞬だけ不満そうにした後、何に気づいたか急に目を輝かせた。「これが宇宙に浮いてる鉄の塊?昔の人が捨てていったゴミなのね?」妙案を閃いた表情で言う。

2014-01-17 19:58:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、119。鉄。 網で宇宙のゴミ回収なんて話が最近ありましたが、うまくいくといいですね。

2014-01-17 20:00:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は大気を介して様々な天候を呼ぶが、乱発すると相応の体力を消耗する。気温や気圧の急激な変化も影響するはず。敵を打ち破り戻ってきた藍の目は既に半分閉じていた。私は彼女を公園のベンチに誘導し、その隣に座った。無意識に私の隣を戻る場所に選んでいる。小さな寝息を聞きながらその意味を思う。

2014-01-18 22:42:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は堤防に座って海を見つめている。まず眠っていると思い、次に考え事を疑い、そして波打ち際が妙に静かなことに気づいた。まさかこの凪が今の彼女なのか。瞑想を体現したような海面を眺めていると、さざ波が立ち、突然背中を突き飛ばされた。「何ボーッとしてるの」砂浜に降りた私を藍が見下ろした。

2014-01-19 21:42:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、121。凪。 あくまで練習なので、前に似た場面を書いたかもしれないと思っても書く手は止めない。違う言葉を切り口に、違う表現を目指すだけ。

2014-01-19 21:43:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

晴れた空に架かる虹を車中から見た日、夕食の席で自然とその話題が出た。虹の橋の根元に黄金が眠るという古い言い伝えを藍は知らなかったという。「それって、宝物が虹を呼ぶの?それとも虹が宝物を生むってこと?」首をかしげる彼女が気にしている方向を見ると、窓の外の街灯が虹の輪をまとっていた。

2014-01-20 19:43:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、122。虹。 立場が逆なら現象の仕組みとか考え始めて夢のない話にシフトしそうな気がする。

2014-01-20 19:44:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

狭い空間に無数の靴音と怒号がひしめく。警察に追い立てられた黒服の男たちが店の奥へ逃げる中、私は藍を隠すように部屋の隅に立っていた。摘発に無関係な者にできるのは無抵抗。収束を待っていると奥から派手な音と悲鳴がした。「さっき抜け道見つけたからふさいでおいたの」藍が笑いをこらえている。

2014-01-21 22:20:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、123。抜け道。

2014-01-21 22:21:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「値段は?」「こんなところかね」電卓を叩く商人の傍らで、怪物から奪った鱗が電球の光を青に変えてテーブルを染めた。狩猟の成果を売るというと遠い昔か別の世界の事に見えるが、何かの素材としては使わず好事家の手に渡るだけという。藍も高い利益よりは交渉という名の会話を楽しむのが目的らしい。

2014-01-22 22:28:57
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