茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1180回「指定席は安心だけど、堕落するよね」

脳科学者・茂木健一郎さんの2月28日の連続ツイート。 本日は、このところふとした折に感じたり思い出したりしていたこと!
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイートをお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、このところふとした折に感じたり思い出したりしていたこと!

2014-02-28 07:12:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(1)子どもの頃、アメンボを見ているのが好きだった。水面上をすーいすいと泳ぐその姿は、どこかユーモラスで、自由でもある。観察していると、アメンボ同士のやりとりが面白い。一匹のアメンボが水面上にいて、もう一匹がそこに近づいていったりすると、とても面白い。

2014-02-28 07:13:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(2)アメンボは、別のアメンボが向こうからやってくると、「わっ、来るな! ここは、オレのなわばりだ。あっちいけ、しっしっ!」みたいな感じで、それでもあわてて逃げていく。そんな感じで、水面のあちらでもこちらでも、アメンボたちが、しっしっ! わっ、わっ! と動き回る。

2014-02-28 07:14:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(3)そうやって、アメンボたちがなわばり争いをしているところを、飽きずに眺めていた。どのアメンボにとっても、「この水面はオレのものだ」という絶対的な権利などなくて、お互いにしっしっ、わっわっと言いながら、あっちこっち行っている。これが、生きるってことだなあ、と眺めていた。

2014-02-28 07:16:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(4)話は変わるが、よく新幹線で移動している。指定席を送っていただくことが多いから、「ここはぼくの席だ」と安心して、靴脱いだり、仕事をしたり、眠っていたりする。学生の頃はそうもいかず、自由席のところに並んでいた。すると、いろいろ心の葛藤というか、疑心暗鬼になる。

2014-02-28 07:17:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(5)入ってきた車両を見て、「あっ、あのあたり空いているな」と観察して、それからホームに並んでいる人を数える。「いけそうだ」とか、「ダメっぽい」とか瞬時に判断。やがて、ドアがあくとみんな急いで入っていく。グループで乗るときなど、なんとか続きの席を確保しようとあせる。

2014-02-28 07:18:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(6)自由席よりもややこしいのが、事情があって、指定席の違う場所に座っているとき。グループで旅行していて近くに座ったり、乗り遅れて車掌さんが空いているところに座っていいと言ったとき。駅が来る度に、「この席誰か来ないかな」と気が気ではなく、少し腰を浮かして待ってたりする。

2014-02-28 07:20:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(7)最初から自分の席が指定されて決まっていて、ゆったりと乗っているのはラクでいいけれども、自然界には、本当は指定席などない。アメンボのことを思い出してもそれは明らかなのであって、生きものは、指定席をもらうと、安心はするけれども、本当は堕落するものなのではないだろうか。

2014-02-28 07:23:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(8)新幹線だけでなく、人生全般がそうである気がする。社会の中で、自分の「指定席」を見つける。組織に所属し、肩書きを得る。それは、とりあえず安心して、精神衛生上良いことではあるが、生きものとしては、その場所に安住することで堕落するという側面もあるように思う。

2014-02-28 07:25:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

しだ(9)子どもの頃のアメンボの話に戻る。「わっわっ」とか、「しっしっ」とか言って泳いでいるアメンボたちの姿を見ながら、私は実に、生きるということについて学んでいたんだなあ。やはり自然観察は大切だ。最近は自然観察離れなのだと、先日会った理科の先生がおっしゃっていた。

2014-02-28 07:27:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、以上、連続ツイート1180回「指定席は安心だけど、堕落するよね」でした。

2014-02-28 07:28:24