山本七平botまとめ/【ショフティムと多数決原理②】多数決原理の受容はヘレニズム以降/セム族の世界に裁定基本の原理

山本七平著『比較文化論の試み』/5ショフティムと多数決原理/58頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【多数決原理の受容はヘレニズム以降】われわれの社会というのも、どこかに裁定者がいて、これはこうしたらいいだろうと裁定をなにかに基づいてやっているんですが、はっきりした基準がないんです。<『比較文化論の試み』

2014-02-26 05:39:05
山本七平bot @yamamoto7hei

②一人の予言者、一つの法、イスラムですと、シャリーヤ法典というものがあるんですが、そういうものできちっと裁定していくということは、われわれはしないんです。 一方彼らの社会というのは、そういうふうにしないとやっていけないんですね。

2014-02-26 06:08:54
山本七平bot @yamamoto7hei

③ところが、これが後に、いま言ったアラビア湾の八人の王様の辺りを除きますと大体ヘレニズム圏に入るわけです。 アレキサンダー大王に征服されて、いわゆるギリシャ式になってきた。 つまり、都市文化が入ってきたんてす。

2014-02-26 06:39:13
山本七平bot @yamamoto7hei

④それ以前の部族連合の時代を経て、都市文化の影響を受け、そこで初めて多数決原理が入ってくるんです。 裁走者の裁定の基準に、多数決原理が入ってきたわけです。

2014-02-26 07:08:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤もっともこれには異論があります。 私などは、イスラエルに限定してもいいのですが、西方セム族に本当に多数決原理が入ったのはヘレニズム以降だと思うんですけど、ユダヤ人は違うと言うんです。 自分の方が古いと言うんです。 だが、この議論は省略します。

2014-02-26 07:39:19
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥ただ、七十人議会なんかができましてね、 サンヘドリンと言いますけど、こういうものができまして、ちょうど今の議会みたいになったのは、やっぱりヘレニズム以降だろうと思うんです。

2014-02-26 08:09:20
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【セム族の世界に裁定基本の原理】この場合、多数決原理の基礎になっている考え方は何かといいますと「個人の判断」の集約ということです。 こういう考え方は、人間を血族的系譜で捉えている限り出てきません。 子は父に従い、一族は長老に従っては、多数決ということはありえないからです。

2014-02-26 08:39:20
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧いわば、 輪廻転生的な世界、 個人は全く別々の個人で、それぞれが前世で規定されてその前提に生き、その自由意志に基づく行為は後世に対してのみ責任を負うという世界、 こういう世界が出現すれば、それは全くの各人各様、バラバラの世界になってしまうわけです。

2014-02-26 09:09:38
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨そして、この世界を統合するものがあるとすれば、それは多数決原理しかないわけです。 これは当然の帰結ですが、これがセム族の世界に入ってきますと、一人の裁定者と多数決原理の二つが一緒になりまして、多数決原理に基づいて裁定者が裁定を下すという一つの原則ができてきたわけです。

2014-02-26 09:39:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩つまり、 セム的な裁定法とヘレニズム的な多数決原理、 この二つが一緒になって、現在の基本の原型みたいなものができてきた。 このこと自体は当然とも思えますが、それをするには、説得によって多数を獲得しなければならない。

2014-02-26 10:09:15
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪とすると、その前提になっているものの一つがいわゆる ”言葉に化さねばいけない” ということになります。 しかし、この非常に面白い思想は、すでにセム族にあったわけです。

2014-02-26 10:39:23