高校生のための偏微分&行列式

数学好きな高校生が理解できそうな話
2
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

本当は高校で、微分と接線の関係だけではなく、偏微分と説平面の関係も教えてくれると助かるんだけどなと、ときどき思う。y=f(x)をxで微分するとグラフの接線の傾きが求まる。これは高校で微分を勉強した人はみんな知っている。たったこれだけのことでも滅茶苦茶役に立つ。続く

2014-03-06 12:58:22
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。y=f(x)のグラフは曲線になり、z=f(x,y)のグラフは曲面になる。f(x)のxでの微分f'(x)はxでのグラフの接線の傾き。f(x,y)の偏微分の組で作ったベクトル(f_x,f_y)の方向はグラフの曲面の接平面の上り方向で、同ベクトルの長さは上り方向の傾きになる。

2014-03-06 13:39:35
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。3次元空間に浮かんでいる傾いた平面の傾きは、上りの方向とその上り方向の傾きの大きさを指定すれば決まる。方向と大きさを決めることはベクトルを決めることと同じ。その傾きを表わすベクトルがz=f(x,y)の偏微分の組(f_x,f_y)で得られるということ。続く

2014-03-06 13:41:40
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。高校で微分を習っていても、偏微分と言われると「なにそれ?」となってしまうかもしれないが、偏微分の定義は簡単。変数が複数個あるとき、一つの変数だけを動かして、他の変数を定数だと思って、微分すれば偏微分が得られる。例えば、x^3y^2をxで偏微分すると3x^2y^2になる。

2014-03-06 13:43:15
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。1変数函数を微分するとグラフy=f(x)の接線の傾きが得られたと同じように、2変数函数を微分すると(偏微分の組でベクトルを作ると)グラフz=f(x,y)の接平面の傾きを表わすベクトルが得られる。その傾きベクトルを grad f と書くことがある(gradientの略)。

2014-03-06 13:46:31
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。実際に接平面の傾きを表わすベクトルがfのx,yによる偏微分の組で得られるベクトル(f_x,f_y)になっていることの確認はグラフが平面になる一次関数 z=ax+by の場合に確認すれば十分。傾きを表わすベクトルが(a,b)になることを確認すればよい。これは高校レベル。

2014-03-06 13:48:45
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。偏微分は本質的に1変数函数の微分の話なので高校で習っていると考えてよいw。z=ax+byがどのように傾いている平面のグラフになっているかは高校レベルの問題なので、高校卒業生は知っていると思ってよいだろうw。実際にはこの辺のことも大学の講義で説明している(つもり)。

2014-03-06 13:51:22
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。grad f =(f_x,f_y) に関する以上の直観がないと「ポテンシャル」のような概念を数学的に理解できなくなってしまうだろう。おそらく、「ポテンシャル」の概念を使う数学以外の先生も授業で grad f について説明していると思う。

2014-03-06 13:53:10
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。高校で数学を習ってしまった人は、2×2行列 [ a b ] [ c d ] についてなぜか ad-bc という式が頻繁に出て来ることに気付いていると思う。実際に頻繁に出て来ると思った人はそれだけでちょっと偉いと思う。続く

2014-03-06 14:02:37
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。以前ある高3の教科書をチェックしたら、回転行列も鏡映変換行列もケーリーハミルトンの定理も書いてあった。色々やっている。ありがたいことだと思っていました。そして、2×2の逆行列の公式も載っていて、その分母が ad-bc です。続く

2014-03-06 14:04:24
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。ケーリー・ハミルトンの定理の中にも ad-bc が出て来ます。ad-bc には determinant (直訳すれば「決定式」か?でも定訳は「行列式」で超絶教育的に紛らわしい)という名前がついています。以下では仕方がないので行列式と呼びます。行列とは違うものです。

2014-03-06 14:07:00
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。 ad-bc の絶対値は実は平行四辺形の面積になっています。2×2行列は数が2×2に並んでいるものであるだけではなく、二つのベクトル [a] [c] と [b] [d] が横に並んでいるものともみなされる。これらのベクトルを平面に矢線で描いた様子を想像しましょう。

2014-03-06 14:09:43
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。さらに、二つのベクトルを二辺に持つような平行四辺形を作図します。実はその平行四辺形の面積が ad-bc の絶対値になっていることを高校レベルの数学で示せます。実は数学を得意になるコツは問題集に書いてある与えられた問題を解くのではなく、自力で数学の世界を散歩してみること。

2014-03-06 14:12:54
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。そして、自分なりに数学の世界の地図を、数式と言葉と図による説明でノートにいたずら書きしまくることです。これ、時間が滅茶苦茶取られます。だから時間がない人は非常に注意した方がよいです。かなり危険。 ad-bc が平行四辺形の面積であることを納得するまで確かめるのはよいこと。

2014-03-06 14:15:43
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。あ、書き間違えた。ad-bc そのものではなく、その絶対値が平行四辺形の面積です。そのことから ad-bc=0 と並行四辺形がつぶれて面積ゼロになることは同じことであることもわかります。この直観は大事です。n次元まで完全に同様に拡張される(n=1,2,3,4,5,…)。

2014-03-06 14:20:13
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。高校で行列を習った人は2×2行列ばかり扱っている感じでもしかしたらちょっと残念だったかもしれません。しかし、実は行列やベクトルの世界はとてもすっきりしているので、2×2行列や2次元平面について十分よく理解していれば、そこで得られた直観はn次元までそのまま拡張されます。

2014-03-06 14:22:27
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き「n次元」のnはどんなに大きな整数であっても構いません。「4次元」は序の口。神秘的な感覚もゼロ。n次元は普通の対象。しかし、これは世間一般の感覚からかけ離れているので、こういう方向に数学的認識能力を引き上げたいと思っている人はそれなりに覚悟しておく方がよいでしょう。続く

2014-03-06 14:25:00
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。ad-bcの絶対値ではなく、正負も何か図形的な意味を持っているのでしょうか。実は二つのベクトル [a] [c] と [b] [d] の方向の関係によって ad-bc が正になるか負になるかが決まります。これも高校数学的方法で容易に確認できます。続く

2014-03-06 14:27:15
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。平面上で方向を問題にしたいなら極座標を使うべきです。だから、a=r cos θ、c=r sin θ、b=R cos φ、d=R sin φとおいて、ad-bc を計算してみればよろしい。三角函数の加法定理を使います。そこから先は自分で考えればよい。

2014-03-06 14:29:56
黒木玄 Gen Kuroki @genkuroki

続き。ad-bcの理論はn×nの行列式の理論に素直にそのまま一般化されます。行列式は逆行列の公式の分母になっているし、ケーリー・ハミルトンの定理の定数項になっているし、絶対値はn次元平行2n面体の体積になります。n=3なら平行六面体の体積になる。

2014-03-06 14:32:51