#傭兵鎮守府まとめその2

その2。 その1はこちらhttp://togetter.com/li/640433
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Akaya The Red @akaya_sousi

艦娘が誕生したのは実験体Eの脱走事件から1年後だった。その頃には既存の兵器が通用せず、ただの機能停止に追い込むだけというのが周知されていた。それでも各国は必死に攻撃を続けていたし、抑止は出来ていた。それも戦艦タイプが現れるまでだったが。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:07:29
Akaya The Red @akaya_sousi

戦艦ル級。最初に現れたのは日本沿岸だった。それまでも人型やそれらしきものは確認できていたが、言葉を解する者はいなかった。だが彼女は違った。言葉を解し、人類に接触を図ったのだ。彼女は言った。「どうして」「どうして攻撃するの」「痛い」「やめて」「怖い」「助けて」 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:17:01
Akaya The Red @akaya_sousi

人類はそれに恐怖しか抱かなかった。悲痛な少女の声は既に恐怖に支配された人類には届かなかったのだ。彼女は言った。「憎い」「お前達が憎い」「助けて欲しかっただけなのに」「誰も助けてくれなかったのに」「殺してやる」「お前達を皆殺しにしてやる」 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:20:12
Akaya The Red @akaya_sousi

それからは一方的だった。戦艦級に護衛艦やミサイルなど通用する訳もなく、次々に現れる深海棲艦に蹂躙されていった。その中で、一体の深海棲艦の捕獲に成功したのは奇跡に近かった。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:23:34
Akaya The Red @akaya_sousi

艤装が吹き飛び、意識を失って拘束された一隻の駆逐艦だった。無論、すぐに解体され研究が始まった。魚類をモチーフにしているが、機械・金属物質が混入しており、初期の実験体Eよりも進化していると判明した。そして、あるものが体内から発見される。鼓動する機械の心臓である。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:28:19
Akaya The Red @akaya_sousi

そこにいた科学者は唖然とした。完全に機械でありながら、鼓動し何かの循環を行う有機物と無機物の中間の物質がそこに存在しているのだ。科学者は興味を持った。「これを人間に移植できるか」と。その場にいた誰も止めなかった。いや、止められなかった。純然たる興味に遮られて。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:33:21
Akaya The Red @akaya_sousi

まず、適当な成人男性を連れてきて手術で心臓と交換、失敗。披検体は死亡。理由は不明だった。機関は順調に稼動。次に成人女性に移植、失敗。10代の男性に移植、失敗。10代の女性に移植、10、11歳の女児は不運にも死亡するもののそれ以降は安定した稼動を始めた。成功。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:42:31
Akaya The Red @akaya_sousi

尚、移植が成功した人間に関しては機関摘出後に同様の機関の再生を確認、生存。しかし口々に帝国海軍時代の艦の名前を発するようになる。原因は不明。事情聴取をしてみたところ、「私は吹雪、吹雪型駆逐艦1番艦の吹雪です」と言うだけで要領を得ず。全員を一旦隔離処置とした。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:47:29
Akaya The Red @akaya_sousi

異常事態が発生したのはそれから三日後だった。隔離していた彼女達が金属を取り込み、砲や船舶の煙突などを創りあげたのだ。科学者は困惑した。そして、改めて彼女はこう言った。「私は、吹雪型駆逐艦!1番艦、吹雪です!」ここに最初の艦娘、吹雪が誕生した。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 19:56:38
Akaya The Red @akaya_sousi

吹雪の活躍は目覚しいものだった。小型の深海棲艦なら一撃で破壊し、確実に撃沈することが可能なのだ。既存の兵器が通用しない、という概念が崩された瞬間だった。大本営は彼女に更なる戦火を期待し、出撃を続けさせた。そして、しばらくの時が過ぎ。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 20:00:07
Akaya The Red @akaya_sousi

「白雪です、よろしくお願いします」「初雪……」「深雪ってんだ!」「叢雲よ」「磯波です」残りの女性もしっかりとした武装と艤装を獲得し、吹雪と共に活躍することになった。順調な戦果を上げ、彼女達は賞賛された。そして、戦艦ル級と対峙する。 #五弐番艦隊記

2014-02-17 20:11:48
Akaya The Red @akaya_sousi

「戦艦です!ル級を確認!」「距離を取っちゃだめ!接近して魚雷で確実に仕留めなきゃ!」「初雪!離れないで!初雪!」「機関、動かない……動かないよ」「なんで……っ!避けて!初雪!」「無……」「初雪ィィ!」「叢雲!駄目!」「うるさい!初雪の敵……!!」「叢雲!!」 #五弐番艦隊記

2014-02-17 22:10:27
Akaya The Red @akaya_sousi

「初雪……叢雲……?」「なあ吹雪、嘘だよな?初雪と叢雲何処に消えたんだよ、嘘なんだろ?答えろよ!旗艦だろ!!」「そんな、私、私ぃ……」「深雪!今は吹雪をサポート!磯波も!」「分かってる……白雪!後ろ!」「なっ、ハ級!?駄目、回避間にあわ……!!」 #五弐番艦隊記

2014-02-17 22:20:06
Akaya The Red @akaya_sousi

沈んでいく姉妹達。吹雪は恐れ、絶望した。戦艦と戦闘することなどはじめから無理だった。数の優位があっても昔とは違う。旋回も、移動速度もあちらの方が上だ。駆逐艦を相手にするのとは違う。怖い。恐ろしい。逃げてしまいたい。楽になりたい。負の感情が思考を満たしていく。 #五弐番艦隊記

2014-02-18 23:26:04
Akaya The Red @akaya_sousi

どうしよう。どうすれば。初雪も、白雪も、叢雲も沈んでしまった。旗艦として、長女として何も出来ない。深雪と、磯波が戦っている。助けなきゃ。でもどうすれば?「吹雪!!立て!!」深雪が怒鳴っている。何とかしなきゃ。「吹雪……!立って……!」磯波が攻撃を受けている。 #五弐番艦隊記

2014-02-18 23:35:43
Akaya The Red @akaya_sousi

後に残ったのは、そこに立ち尽くす吹雪と、もう一人の人間、いや艦娘だけだった。「ありがとう、吹雪」「私、妹達を」「いいのよ、しょうがないの。あなたは悪くないわ」「でも」「いいの」「……分かりました」「さ、帰りましょう?」「はい、扶桑さん」 #五弐番艦隊記

2014-02-18 23:48:39
Akaya The Red @akaya_sousi

この戦闘で吹雪を除く艦娘は全員轟沈。周辺海域にも痕跡は見つからなかった。しかし、吹雪の報告を信用するのであれば、撃沈したル級が変異を起こし戦艦扶桑へと変化したとの事。この戦果を省みて、彼女達に司令官を配属する事にする。 #五弐番艦隊記

2014-02-19 00:02:22
Akaya The Red @akaya_sousi

「君が吹雪と言うのか。よろしく」「……よろしくおねがいします」「私は扶桑と申します」「よろしくお願いします」最初にやってきたのは比較的若い青年だった。「私は戦いたくありません。出撃はしませんので」「あ、吹雪!待ちなさい!」「はは、中々厄介な子だ」「すみません……」 #五弐番艦隊記

2014-02-19 00:10:23
Akaya The Red @akaya_sousi

しばらくの間、不安定な吹雪に代わり扶桑が出撃する事になった。戦果は上々で、若い司令官の階級も上がっていった。「なあ吹雪、そろそろ扶桑一人だけでは厳しそうなんだ」「……」「頼むよ」個室に篭る吹雪を必死に説得する言葉も、宙に消えるだけだった。 #五弐番艦隊記

2014-02-19 00:21:00
Akaya The Red @akaya_sousi

そうする間にも、扶桑は出撃を重ねた。「消耗が、少しきついですね」度重なる戦闘による損傷で、扶桑は徐々に、確実に消耗していった。「吹雪、このままじゃ扶桑が危ない。いい加減出てくるんだ……吹雪?入るぞ」青年が吹雪の個室に入った時、酷く不快な臭いがした。「吹雪……?」 #五弐番艦隊記

2014-02-19 00:43:53
Akaya The Red @akaya_sousi

吹雪は死んでいた。喉を切り裂き、血ではなくオイルを撒き散らして。「ああ、やっぱり」「ひっ」青年の後ろに扶桑がいた。「吹雪、妹達の所に行ったのね?そう。いいのよ」もう動かない吹雪に扶桑は優しく語りかける。「提督、あなたも来てね?」扶桑の砲が青年の胸に大穴を開けた。 #五弐番艦隊記

2014-02-19 00:53:10
Akaya The Red @akaya_sousi

後に発見した憲兵からすれば、その部屋は呪われている、ということだった。「ベッドに三人で川の字に寝てたよ、血の海でな。手を繋いで、抱き合って。まるで家族のようにな。異常だよ、あれは」それを回収した大本営は、扶桑と吹雪から機関を摘出した。今度は、再生しなかった。 #五弐番艦隊記

2014-02-19 01:01:08
Akaya The Red @akaya_sousi

青年の死に様を確認した科学者達は、安全装置を付加する事を決定した。特定の人物、司令官に対して危害を加える事のないように。ここで、再び予想外の出来事が発生した。機関に付与した安全装置が、他の人間に埋め込み摘出したところ再生した機関にも付加されていたのだ。 #五弐番艦隊記

2014-02-19 01:10:46
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