海の大戦:第一戦闘フェイズ【一の海域】

裁き与えんと向かいしは、 殉教【@martydom_umi】 贖罪【@hakuzia_umi】 殲滅せんと向かいしは、 続きを読む
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【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

「わたしは“贖罪”です」 聞こえるようにはっきりと。その緑眼はただ分け隔てなく柔らかな色を示し。しかし、切なく歪み、言葉を静かに隠すように飲んだ。 高らかな声が耳に届き、嗟乎と。停止させた石を、突き出した指先に沿わせ引き絞るタイミングを図る。 ……狙うことをお許し下さい。

2014-03-10 03:33:07
【強奪】壊尽 @sinka_umi

「『殉教』、『贖罪』……『殉教』?」 名乗られた二つの名を舌の上で転がし、ふと首を傾げる。『殉教』、その名は聞いたことがある。 高らかな声、それに思考へと向けていた意識の向きを変え、風の刃を避けるように床を蹴った。鋭い刃は長い裾を僅かに裂く。それを視認し、笑みは深まる。

2014-03-10 04:25:33
【強奪】壊尽 @sinka_umi

そうして、ああ、と呟いた。『殉教』、嗚呼、そうか。くつり、と唇を吊り上げて。 「——そうか。君が、お前が、『殉教』。そっかそっか、ふふっ、ふふふ」 止め処なく色が変わり続ける双眸が、凍てつく鋭さをもって薄黒を見つめる。浮かぶ表情は笑み、瞳はどこまでも冷たく、重く、殺気を滲ませる。

2014-03-10 04:25:34
【強奪】壊尽 @sinka_umi

——『無学』を、俺が壊したいものに勝手に傷をつけた、『信徒』か。 「ふふっ、あはは、面白いなあ、愉快だなあ。ふふっ、ふふふ。裁き? いいね、そういう身の程知らず大好き」 一歩踏み出し、風刃で傷ついた床を見やり。 「《足はバネに、バネは跳ねて空へ》」 足が捩れて、バネへと変じる。

2014-03-10 04:25:38
【強奪】壊尽 @sinka_umi

バネは軋み、壊尽の躰は宙を舞った。 「《爪はピアノ線に、ピアノ線は鋭く長く》」 歌う様に重ね、左を振るう。そこから伸びてくるのは五本のピアノ線。それは慈愛の船、その帆に巻きつき、壊尽を引き寄せた。 次いで右を振るう。左と同じ様に五本のピアノ線が狙い無く触れたものを裂かんと伸びる。

2014-03-10 04:27:36
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「身の程知らず? 海賊風情が馬鹿を言うなよ、身の程知らずは貴様らの方だろうこの下郎がッ! ――海神様の愛する海を穢しに穢した罪は重いぞ」 捲る。綴られる。――告げる。 「『害の前に立ちはだかるは石壁、悪から我らの身を守護せよ』!」

2014-03-10 18:38:50
人間《ディアドラ》 @actSkbz

おおよそ身の丈ほどの石壁は、殉教と贖罪、両者の前に現れ出でる。うまく使えば足場程度にはなるかもしれない。続き、謳うは怒りを込めたままの声。 「『飛沫のしなり、鞭の如く、罪人を打ち痛めよ』」 無意識に喉を押さえる。船に当たった波の飛沫はまるで鞭のような形を取って壊尽の身を打たんと。

2014-03-10 18:39:12
【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

壊尽が跳ねた。その足は撥条。伸びた銀糸は帆と此方に。 「……ッ!」 怒声。石の壁が正面に現れる。塞がれるが位置は“おおよそ”確認し。突き出した手を後方へ瞬間的に動かす。 同時に、浮いていた三つのうち二つの石が光を纏い鋭い矢を形成。熱をその帯びた周囲、空気が混ぜられ髪が舞う。

2014-03-10 19:05:13
【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

「……二条、行きます!」 鋭い風切音。 反応し矢を射つまで二秒程度。耀く矢は壁を急カーブで周り、その奥の壊尽へと向かう。大きくずれてなければ当たるだろう。傷つける行為に罪を感じながら残った一つを停滞させる。 狙いは帆に糸を伸ばす袖下の腕。

2014-03-10 19:07:02
【強奪】壊尽 @sinka_umi

信徒へと向かったピアノ線は石壁に遮られる。ピアノ線が触れた部分が僅かに風化するが、それ以上傷つくことなく、消失するように袖の中へ素早く戻る。 劈くような怒号に笑みを深め、そうして、鞭が振るわれるように、飛沫が此方に向かってくるのを視認する。 「当たったら痛そうだね」 呟きは一つ。

2014-03-10 21:58:46
【強奪】壊尽 @sinka_umi

帆に巻きついていたピアノ線を緩ませ、元に戻す。必然、壊尽の躰は重力のままに下へと落ちていくが、少年の笑みは崩れることはない。と、頭上を二つの耀く矢が翔ける。空気を灼く。目を瞬かせ、そうしてにたりと笑む。空中で、矢のきた方を見る。石壁、その向こうにいたのは——。 ふふっ、声を零す。

2014-03-10 21:58:53
【強奪】壊尽 @sinka_umi

「ふふっ、ふふふ、あははは、愉しい、愉しいねぇ!」 落ちる躰、それを気にする事なく、けらけらと笑う。 愉しい、こんなに愉しい壊し合いはいつぶりだろう。多数対一はこれだから愉しい。飽きがこない、驚きばかりだ。 笑みは深まる。愉快だ、そう言いたげに。 地面が近づく。それを認識すると、

2014-03-10 21:59:19
【強奪】壊尽 @sinka_umi

膝を曲げ、『殉教』と同じ高さの床に着地する。流れる自身の金糸を一束掴み。 「《一房の髪は剣に、剣は手に》」 歌う。金糸は柄のみにその色を残し、毛先を銀に染め、鋭く伸びる。剣の部分だけを、千切るように髪と離した。 切っ先を下にして。 「ふふっ、もっと愉しませてよ」 愉しげに笑った。

2014-03-10 22:00:16
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「愉しませる!? ふざけた事を抜かすな!!」 怒声は止まない。喉を押さえたまま、ほんの一瞬、贖罪の方を見やってから、視線は目の前の壁へと戻る。本の背を撫でる。 「『護りし壁は、裁きの門へと変じる』ッ!」 自分の目の前に在った壁とは別に、海賊の背後に同じ石壁が現れ出でる。

2014-03-11 00:46:02
人間《ディアドラ》 @actSkbz

それは、間に立つ壊尽を挟み込むようにして前後から迫る。 怒号を放っていた主――殉教の表情は、無いままに。

2014-03-11 00:46:09
【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

手元に返ってきた石を一瞥し、再び引き絞るように三つ。緑眼は壊尽の位置と相対する殉教を捉え、距離を計り正確に狙いをつける。 ぎりぎり。そんな音が聞こえそうなほどに矢を鋭くし熱を込め。狙いは、壊尽の頭に。 さっきよりも速く飛ぶように長く引き、機会を探る。

2014-03-11 08:23:51
【強奪】壊尽 @sinka_umi

返ってくる怒声に、やはり笑みを深め。 「ふざけてなどいないさ、大真面目だ」 前後に出現する二つの壁。焦った様子も見せないまま、袖をたくし上げ、色素の薄い左の掌を前に突き出す。 「ねぇ、知ってるかい。万物は、いつか必ず壊れるんだ」 指先が壁に触れた。壁に罅が入る、緩やかに風化する。

2014-03-11 10:40:51
【強奪】壊尽 @sinka_umi

間がどんどん狭まっていく。石壁に掌をぴたり、とくっつく。罅は徐々に深く、広く、その風化を進めていって。 不意に左の掌を離したかと思うと、剣の切っ先を罅が一番深いところに向け。 「硬い石さえも、いずれ風化し、壊れるんだよ」 全身の力を込め、突き出す。銀が石に触れ、高い音を発てた。

2014-03-11 10:40:57
【強奪】壊尽 @sinka_umi

罅が深まり続ける壁に、それに突き立てた剣に、更に力を込める。愉しげに口角はぎりぎりまで吊り上がり、歯を剥き出しにして笑う。 罅が広がる壁、それに三度力を込めて、——前から迫ってきていた壁を砕いた。 一部は大きいまま、一部は砂となって、潮風に晒され、床に落ちる。壊尽はにたりと笑う。

2014-03-11 10:41:00
【強奪】壊尽 @sinka_umi

そのまま姿勢を低くし、走り出した。背にある壁を蹴り、床を蹴り、『殉教』に向かって加速していく。剣の切っ先は下を向き、壊尽が進む侭に床に傷を残す。 それでも、走る勢いは殺されることなく、『殉教』を斬りつける為に、剣の届く所を目指し、地を蹴り、駆ける。狙われているなど考えることなく。

2014-03-11 10:42:15
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「大真面目だと? なら、その気を疑う。へらへらと笑うな気味が悪い」 心の底から吐き捨てるように、――しかし表情は無いまま。此方に這うようにして向かってくる少年、また一瞬、深海は緑を見やり。 「『潮風よ、彼の罪人を縛り吊るせ』」 “風”が少年の勢いを殺さんと纏わりつく。

2014-03-11 12:54:31
人間《ディアドラ》 @actSkbz

重さを伴った風は、その手足を縛るように。――しかし殉教の眼前に壁は無い。薄い唇を舐める。小さく呟いたのは祈りの言葉か。 ――否。囁くような声音の其れは、離れた場所で構え狙う、贖罪には確かに届くであろう。「狙い穿て」と。己が身を囮として、確実に、海賊を仕留めようと。

2014-03-11 12:54:43
【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

壊尽が剣を持ち動き、殉教は潮風を呼ぶ。動く壊尽を追いながら緑眼を鋭く細め、殉教の唇の動きを見た。 「……三条、行きます!」 甲高く奏でられる三重の風切の調べ。先程よりも耀きと速度の増した光の筋。二条を先行させ潮風を切り裂き路を確かなものにし、

2014-03-11 15:51:23
【慈愛】贖罪 @hakuzia_umi

「殉教には触れさせません!」 ぞっとする程の罪の意識を隠した眼は壊尽を睨み、その後方に隠した一筋を、狙うその頭へ疾走らせた。

2014-03-11 15:51:34
【強奪】壊尽 @sinka_umi

「ふふ、アッハハ、君の無表情も中々なものさ。酷く滑稽だ」 嗤う、嗤う。意志を持ったように潮風が躰に纏わり付いて走るスピードが落ちる。だが、止まらない。風に止められるのならば、それ以上に強く、力を足に込め、——不意に、風切り音を聴覚が拾った。 そこからの動きは最早反射的に。

2014-03-11 18:50:14
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