海の大戦：第一戦闘フェイズ【三の海域】

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

ざああ、流れる潮風。船は滑らかに三の狭間と呼称される海域へ向かう。 一般的な船と比べるといくらか広い甲板の中央には、大きな錫色の盤が鎮座している。直径は一メートルほど。それの前に、時折波で揺れる船に構わず危なげなく立つ男。その右手は腰の槌に添えられている。 ――三の海域は、目前。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

――両者の船が三の海域に。 「見えないな」 遠目は利く方だ。 錫色の光。 「じゃ……《射てぇえええええええええええええええええええ》！！！！！！」 低速、威力低。だが長射程で真っ直ぐに直進する銀色の刃。長さは2メートル40センチ。 そしてこの大声。避けるのは楽だが、どうだ――。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「ん」 風が、波の音に混ぜて違う音を届けたのを聞きとめた。見えているなら、きらと光を弾く銀が映ったはずだ。 声と、それから風を切る音か。 かちんとポーチの留め具を外し、取り出した槌をくるくると回す。 「さて、」

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

声と共にぱしん、と両手で柄を握った槌はポーチに収まっていたような小ささではない。 巨大化したそれの全長は自身の身長を軽く越えている。 調子を確かめるように軽く振り。 「よし、」 真直ぐ飛来し迫る銀を、 「そぉれ」 構えた槌で殴り飛ばす。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

ぎぃと甲高い音が鳴り響いたと同時、弾き飛ばした感覚、それからどぉと低い水音。 「予告もなしにとは、…いや、今のが予告かな？」 警戒するかのようにくるくると頭上で回す。 次は、どう来る。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

すっと船を止める。 「短い射程の『加護』、だな」 断定する。だがここからのんびりした低速の槍先を放っても対処されるのがオチだ。 弓の同時打ちと違うのが、声は一度に一種類しか出せない点だろう。超低速で長刃渡りを飛ばせば同時攻撃を出来なくもないが、それをするにはあまりにも言葉が必要だ

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

そんな言葉では、威力は出ない。普通の船体を傷つけることさえかなうまい 「だったら――」 たとえ相手の思うつぼ、だとしても！だとしても、近接戦しかあり得ない 「船、最大速度」 殴り込みの基本は、船体をぶつけることにある いや、船体を衝突させて相手をビビらせるのが面白いと云う他ない！

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

結果として、船は舳先から衝突し、信徒の甲板に舳先が乗り上げる 舳先を伝い走り、甲板へ飛び移る。その瞬間、確かに隙はある 隙があるならば、壊してしまえばいい。隙は、無ければ無いほど良い 「《蠢け》《纏え》」 『無学』と信徒の間に高速中威力の絡みつきあうような刃が射出された

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

その次には『無学』の身体の周辺に刃が射出され、『無学』に絡みつくようでさえある。これも高威力。速度はかなり速い。ここがひとつの切り替わりだろう、と『無学』は読まざるをえない。船体を衝突させた時点から動揺しなければ、敵が『無学』を射程に入れたのはこの瞬間だからだ。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

迫る気配、それから衝撃。派手な音がしたが損傷はどのぐらいだろう、きっと沈むほどではないだろう。なんて、思考を巡らせる。無機質な笑みを浮かべる口元がつりあがる。振り回していた槌を飛んできた刃を叩き落とすよう振り下ろす。がぃんと金属の触れ合う音がして、それからからからと甲板を滑る音。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

駆ける足音を確かに耳に捉える。――此方へと呼ぶ手間が省けた。 「さて、」 捉えながらも、笑みは崩さず。甲板の中央、錫の盤に槌を振り下ろした。 重厚な音が響く。法廷開場の合図、もしくは景気づけ。そして、堂々と宣言する。 「裁判を、始めよう」 宣言と共に駆けながら、槌を横薙ぎに振う。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「一つ、船へ損害を与えた事。――これを、赦そう」 振いながら三回までの猶予、うち一回目を宣言。残りは二回。 ……何のことは無い、こちらへ加えられた危害の数によって、刑を処すか否かとその内容を決めるだけ。今眼前に迫る海賊の過去の所業を全て知っている訳ではないから、

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

曖昧なそれらを刑の判断材料に加えられない。実際に刑を下せるのは、自分が知り得る範囲で行われたこと。 ――一回目を告げ、思考の隅にひとつ引っかかったことを思い出す。声と共に現れる刃。もしかしてと、問う。 「君は、『無学』か？」 振う槌にはまだ何の刑も載せていない、単純な打撃。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「裁判てのは、こうして偉そうにしねェと怖くてできねェモンかよ？それとも――」 横薙ぎの槌打を《纏》う刃で受け止めて、刃と一緒に転がっていく。『無学』を傷つけることは、刃には出来ない。同時に、『無学』が刃を無視して移動したりもできない。が―― 「がはァ！」

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

血反吐を吐いたと錯覚するほどに、槌は重い。 「今のは真芯から受けるとこんだけ痛ェのかよ。驚くぜ、流石『加護』、オレらの破戒魔に選定された馬鹿だけあらァ」 にやりと笑い、立つ。 「……赦す？ハッ、赦されるような立場でも、赦して欲しいとも言ってねェぞクソ裁判官！」

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

口元が濡れる。鉄の味だ。問いに対し小さく笑う。 「そうだ、オレがこの世のバカ代表――『無学』様だ。冥土に覚えて帰んな？一ついいか。裁判官サマはどちらの『加護』サマでいらっしゃるのかねェ」 槍を小さく脇に構えて問いただす。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

偉そうとは心外だ、とは小さく。 「何事にも、順序というものがあるからね」 則ることも必要。振った槌は金属音を立て、それから鈍い音が聞こえた。ちゃんと当たったらしいと一人頷き、包帯を外そうか一瞬悩んでまだその時ではないと却下。罵りには鷹揚に頷いて。 「その暴言は、聞き流してやろう」

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

全体に向けた言葉ならともかく、自分一人に向けられた言葉ならば罪を問う必要は無い。明確な害があるわけでもなし。 堂々とした名乗りに、そうかと呟いて。 「……殉教が、世話になったらしいね」 ひゅうと威嚇のように槌を一薙ぎ。 どうしようかと悩んで、

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

個人しての自分と加護としての自分との間で思考を揺らす。いったん保留と結論を下し、不敵な声に応じた。 「おれは『恩赦』、トゥエスケィロ。好きに呼びなよ、君らが呼ぶなら、恩赦の方が馴染むだろうが」 どうしようかと思案する、表情には出さず。槌は構えたまま。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

威嚇の槌、小さく槍を構え直し反応する。正面から受ければ笑えない。 「『恩赦』……トゥ……エロ……ケ……ケロ……。お、覚えた……トゥスだな」 覚えた気がする。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「『殉教』は強かったぜェ、てめェの何億倍もよ。そんな雑魚ハンマーで何ができる？ 　できないってコトは確かだ。自殺すんなら、てめェの家族は酷い目に合わせねェ。無期懲罰っていう古い公法さ。死ぬまでの奴隷、労働の支払いに残飯をあげるヤツ 　そして、アリは象よりも強い」

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

決め言葉。劣勢の時に言ってみると格好いいハズだ。 「《ま》」 僅かな間を置いて突然の攻勢。肉体をごっそり持っていけるような、丸い銀の皿状の刃、刃渡り10センチ。威力は一文字だけあり特級。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

――『無学』は経験を活かすことをしないが、『恩赦』は四文字を弾き落とせて、三文字も競り勝てる。だが、二文字一文字の刃の威力はどうだ。意図せずだが、純粋な力勝負に出ていた。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「……その呼び方は初めてだよ」 妙な呼び方だなと思うが、先に好きに呼べと言ったのは自分だ。そのまま流す。 「殉教と比べられると困る。でも、何もできないと言われると、少しばかり頭に来るな」 言葉とは逆に、無機質な笑みは絶えない。しかし少し何かが引っかかった。 「……『無期懲役』？」

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

真面目に言っているようだから、判断がつかない。間違いでも堂々としていれば間違いの方が正しく聞こえるアレだ。 それと、アリが象よりというのは確か、子供の手遊びか何かの決まりごとじゃなかったか。 なんて思考が脱線しかけたところに、鋭い風切音。 「ッと、」 構えた槌の柄で庇う。