海の大戦:第一戦闘フェイズ【三の海域】

裁き与えんと向かいしは、 恩赦【@ssd_umi】 殲滅せんと向かいしは、 無学【@nigayuki_umi
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【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

半端に勢いを殺され弾かれた刃はしかし、丸みを帯びた柄に軌道を変えて左肩を抉り裂いた。 「ッ、」 ――やってくれるじゃないか。 「……傷を負わせた、その狼藉を赦そう」 二回目。次で最後だ。それ以上の猶予を与える気は無い。 滴り零れ落ちる血の感覚に少し焦りを覚えながら。

2014-03-10 22:19:21
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「ムキ、チョウ、エキ……知ってる気がしてきた」 太い首を傾げた。すぐ後の負傷にニヤニヤする。 「赦して、くれ……」 悲哀と嘲りの篭った音調。ニヤついている。 「てなことは、絶対に言わないからな。殺めて奪って、いただく。海賊の素晴らしい人生、楽しいぜ?仲間には絶対してやんねェ!」

2014-03-10 22:51:30
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

そうして、槍を右肩にそのまま突き出す。 「《らっきょう》!」 V字を描き―― 『無学』の小さな槍(千言刃)本体は右側への警戒を強めることを誘うブラフ。 ――腕を支える筋力が低下した左腕付近を迂回し首へ向かう中速中威力の40センチの刃。

2014-03-10 22:51:36
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「海賊になど、たとえ誘われても御免蒙る」 己が身は海神の、慈愛の信徒であるからして。 槌頭が大きすぎるな、と突き出された槍を下がりながら身体とは斜めに柄で跳ね上げるように一回転。一回り小さくなる打撃部分。上へ流れた柄が下る瞬間、知らずの内に首に迫っていた刃を捉えた。

2014-03-11 19:28:14
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

不意の抵抗、柄ごとそれを押し切って、そのまま当初の予定の通り、しかしよろめくように後ろへ数歩。刃の落ちる高く鈍い音が甲板に響いた。 思い掛けない衝撃で、手がわずかに痺れる。 「……不意打ちとは、やってくれるね」 柄から伝わった感触からして、狙っていたのは首。

2014-03-11 19:28:28
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「……今の。不意打ちを、赦そう」 こじつけの様な三度目。だが、三度目を宣言した。これ以上は、許容外だ。 「今ので、三度目だ。……あとは無い。もう、赦さない」 頭の後ろへ手を伸ばし、結び目を片手でするりと解いて目を覆う包帯を外す。顕になる、金の目。

2014-03-11 19:28:59
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

視界に映る海と空を捉えたそれは一瞬眩しげに細められ、それから眼前の海賊を見据える。 槍、短槍。長柄の武器は距離を詰めれば不利となる、それは己の槌にも言えること。

2014-03-11 19:29:41
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

しかし短槍はその間合いをいくらか詰められても余裕がある、加えて言葉と共に飛来する刃が厄介。 量刑はどうしてくれようか。 痛みを訴える左肩は無視して、距離を詰めるように駆けそのまま横に薙ぐ。

2014-03-11 19:30:00
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

布を取ってみれば高そうな金の瞳である。最悪なのは『無学』が人身売買をあまりしないせいだ。人なんぞいくらでも生まれてくるが、金目の物はこの世に限りあるのである。 「てめェはカネにならねぇ癖に貴重品だぜ全く、いらねェよ、んな瞳は」 莫迦莫迦しい。無意味な芸術を飾り立てているものだ。

2014-03-11 21:46:24
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

赦すだの赦さないだの――横薙ぎに来る槌だの――ッ、一々腹に据えかねるヤツだ。 「本気で殺り合えるのが『加護』ぐらいしかいねェ。『殉教』は面白かった、てめェも面白い……『恩赦』ァッ!決着だ、てめェはこの船と共に沈めぇえええ!!!」

2014-03-11 21:46:37
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

横薙ぎの槌を、(槌底が一回り竦んじまったみてェ)だと読んで槍を構える。 「《唸り纏え》ッ」 ぎゅるぎゅる螺旋を描きながら射出される中速中威力の刃。たった60センチ、この間合いなら、十二分の価値がある。射出と同時に刃の先に槍先を絡め、槌打を少しの距離で廻り避けた刃が槌の柄を絡める。

2014-03-11 21:46:43
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

その刃は『恩赦』の手の位置まで届かない。いや、それでいい。 「学ぶのは好きじゃない。その場凌ぎの結果さ」 刃を支えに、槌のおまけとして『無学』が槌底と一緒に空中移動する、僅かの間だったが。

2014-03-11 21:46:48
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

その僅かの間に、槌を振るための初期エネルギーを使い果たすか、刃が現出時間を失って消えるか。算段が合えば、この空中散歩が終わる頃、間合いは槌より深く、短い槍自体の絶好の距離。そうなれば『言葉』さえ必要ない。『恩赦』がいかに対処するか、それに成否がかかっている。出すべき掛け金は払った

2014-03-11 21:47:54
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

目は要らないとはどういう意味かと考えて、ああと思い至るのは人身売買。 「……無軌道にも、程があるよ」 それは赦せないねと小さく。法に則っとるとしても、個人的にも。そして叫びには。 「殺し合いを、面白がるか。」 推し図るような一言と、それから、 「――判決はまだ、下してないよ」

2014-03-12 21:12:14
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

量刑の内容も決まっていない。 「閉廷の宣言はしていない」 金の目が剣呑に細められる。絡み付く刃の銀。図に乗るなよ、海賊風情が。呟きは形にする前に消した。 槌の柄を持つ右手にさらに力を込め、遠心力でもっていかれそうになる身体を右腕ごと無理やり、迫る刃も一緒くたに引き寄せる。

2014-03-12 21:12:40
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

甲板を踏みしめた脚元、削れるような音。同時に柄から放した左手を伸ばすのは左腿、棒状の鈍い錫色をした六連の飾りのうち一つ。乱雑に引き千切るように引っ張り外せば、ぎゃいんと悲鳴にも似た高い音が響く。それを音と左肩とに構わず握り直した。 空振りとなった槌はそのまま振り切る、

2014-03-12 21:14:25
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

それは力を込めた分勢いを増すがそれだけ。 ……短槍の強みは先ほども考えた通り、通常の槍よりも間合いが狭い事。しかし、槍は槍だ。振うための空間ないし突きを繰り出すために引く余地が必要。 無学がこちらの懐へと潜り込もうとするのなら、逆手にとって引き寄せ空隙を無くせばいい。

2014-03-12 21:14:34
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

無論、危険は承知の上だ。ひとつ間違えばいたずらに自分の身を危険に晒しただけに終わる。…いや、これは身体ではなく、命すら危うくする所業。 しかしそれらに構わず、引き寄せ迫る無学の顔めがけて左手の錫を振り下ろす。

2014-03-12 21:14:36
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

思いがけない方向に引っ張られる。 ――なぜ『恩赦』の方から距離を詰める!? その瞬間、反応が遅れた。舌が削れ飛び、右目を失った。錫が顔面にめり込んでいて、しかもこちらの槍は柄にでも阻まれよう。防御を躱す隙さえ見つからない。

2014-03-12 23:36:13
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

巧いな、と思った。口が液体で溢れて、言葉の刃が咄嗟に出ない。 ごぼ、ごぼ。言葉にならず、煙のような、刃の成り損ないが槍先で燻る。

2014-03-12 23:36:18
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

槍が使えない超至近距離。だが勢いを付けた有効打を打つ方法がまだ一つだけあった。 それは、己が拳を使うことだ。槍を前方に突き出しつつ左手に握り直す。が、片目で照準が合わず千言刃(やり)を取り落とした 落下する槍。左手はそれを追いかけ、止まり、槌柄を握りにかかる。

2014-03-12 23:36:22
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

同時。右手は予定通り、額に向かって歪曲した軌道の拳撃を放っていた――。

2014-03-12 23:36:27
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

振り下ろしたのは六連の錫の飾り、それぞれに慈愛の加護の名が彫られたそれのうち一本、己の加護が刻まれたものを懐に引き寄せた無学の顔へと振り下ろした。…振り下ろした。 ……擬音にしたなら、きょとん、とか、ぽかん、とか。とにかく、そんな顔をした。

2014-03-13 20:19:16
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

え、とか、へ、とか、疑問符に似た声が出ていないのが不思議なくらいの驚きの表情。 それは振り下ろした先から伝わる手の感覚と光景と、それから、その動作を行い眼前の光景を作り出した自分自身に対して。 例えるなら。盲打ちのはずが矢が全て的に命中したとか、

2014-03-13 20:19:36
【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

手応えがないけれど揺れる釣り糸を引き上げたらとてつもない大物がかかっていたとか、空は快晴なのに土砂降りの雨に襲われたとか、とてつもなく理不尽な何かに遭遇したような、そういう顔だった。 つまりは、茫然としていた。 得物を持った敵を、懐に招き入れる真似をしていた癖に、

2014-03-13 20:19:59