海の大戦：第一戦闘フェイズ【三の海域】

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

そんなことをするものだから必然、隙が生まれる。……いや、隙どころではない。突っ立っているだけの案山子と同じ状態。刺すも斬るも殴るも好きにしろと言っているに等しい。 右手で握っていた槌に違う重みを感じても、がらんと何かと何かがぶつかった音が聞こえても、

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

何らかの動作をしなければいけないという考えすら抜け落ちていて、迫る無学の右手を視界に捉えたところでやっと思考の白紙が埋まる、慌てて顔を逸らすも遅く。 「――！」 無学の拳は、こちらの左目を潰すに足る威力で繰り出されていた。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

無防備に一撃を貰った片側の視界は暗い。拳の勢いに押されるようにしてのけぞり倒れそうになったのをどうにか数歩後ろへ下がり転倒を避けた。 「――――」 左手で目を押さえて声なく呻く。腕を動かしたときの違和は思考の範疇外。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

……口の中のものを甲板に吐き出し、なんとか荒い息をつく。 下を向いたままなら、赤い何かが邪魔をしないで言葉を出すことができるようだった。 手で、甲板に落下していた槍を掴む。 「『恩赦』……てめェは可哀相なヤツだ」 下を向いたまま、そう言った。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「聖典とかいうのに教わった通りにしか生きれない、憐れなヤツだ」 海賊は自由だから、可哀相だった。 「だが、勿体無ェが、ここで決着を着けなきゃいけねェ」 舌の傷は治らないことぐらいは知っている。小さな切り傷ならともかく、半分の半分ぐらいがどっかに行ったのだ。 「……幕、ひくぜ」

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

片目で照準を付ける。槍を右手に構えて、ようやく出来た"間合い"に槍を引く。 左手に柄を握る槌をぐいと『無学』の後方に引き、『恩赦』の身を『無学』から、今度は引き寄せる。そのまま、槍を突き出した。右に短い槍を持つ場合、簡単に狙えるのが心臓である。無論、そこを狙った。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

喋っている時間は、眼の照準を切り替えるために使っていた 掴む左手は、致死の可能性を引き寄せるために使った 槍の右手は、しっかりと胸へ、刺し貫くために、筋力を解放する 今度こそ――。確信すると同時に、自分のギャンブル運や即興策の溺れやすさを心の底で顧みて、次の不意打ちを警戒していた

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「……海賊に、同情されるような、謂れは無い」 呻きながらも顔を上げる。無視できない左目の痛みに耐えようとして失敗する。痛みは動きを鈍らせる、それは柄を握る右手も例外なく。 引き寄せる動きにつられたのは一瞬、惜しむ様に柄から解けた手を、突き出された槍を受け止めるように身体の前へ。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「閉廷の、宣言を、した覚えは、無いぞ、海賊――！」 左目と深々と右腕へ突き刺さった槍の痛みとで途切れる声、それでも。 左手を目から外して再び飾りへと伸ばす。千切り外した飾りに刻まれた加護の名は殉教。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

「判決を、言い渡す、罪名、宗教侮辱罪、」 宣言した罪名が指すのは無学のこれまでの言動全て。 「量刑、極刑に、処す。」 ――槌ではないから、宣言した刑がそのままの通り執行されることはないが構わない。自分の手で執行すればいい。 握りしめた錫を、 「死を以て、贖え――！」 振り下ろす。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「手応え――あった、か？」 右腕だ。血潮の遮りがおさまってみれば、外していた。 警戒していたのは一瞬。だがその一瞬で判断するしかない。 頭上に迫る殺気。断罪の錫が鳴り響く。 「――《　　　》」

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

償わねェ、それが触れるより先にてめェを殺す。 「――　射て」 刃、高速高威力の直進する刃が右腕、その向こう、さらにその向こうを貫くべく放たれる。 だが、手応えの誤認――それに要した時間が誤算といえばそうだ。意識が明滅して、死を理解していっている。

【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「……殺したか？オレは、暴れたかい。格好良く、死ねたかい？」 後頭部で、鳴ってはいけない音がした。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

殴りつけた感覚が伝わる一瞬前、耳が微かな音を捉えた。判断は瞬間、反射と同等。槍が刺さったままの右腕無理やり外側へと逸らして、かつ体を捻じるようにして右腕から引き離す、錫が頭蓋を砕く感覚が届くと同時に発射された銀の刃は、右腕を斬り飛ばし虚空へ。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

次いで二か所からそれぞれ重みの違う鈍い音。崩れた無学の体がもう動かないことを確認して息をついたが、くらりとふらつく。それは少し軽くなった右側と痛みとだけが理由ではない。左肩から流れた血は相当量、海色の外套を赤く汚している。

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

霞み始めた意識の中、腰の青布で断ち切れた右腕を縛りひとまずの処置、それから船室に控えていた船員を呼び出し進路を慈愛の拠点へ取ることと、無学の死体の処理を命じる。 ……この海域は、海図に示すと海賊の拠点とさほど距離は離れていない。しかし、己の負傷の度合いからして、

【魔女/魔法使い】 @mm_ssd

一旦戻ることを優先したほうが良いだろう。 小さくなっていた槌を左手で拾い上げる。左肩と左目の負傷で左側の自由がややきかない。槌を持ったままポーチのベルトを回して収納部分を左側へと寄せて仕舞い込む、かちん、留め具の留まる音が小さく響いた。