NHKスペシャル「メルトダウン File4 放射能"大量放出"の真相(仮)」の予習をするよ

311から3年たちましたが、いまだ全容が解明されたとは言いがたい福島第一原発事故。 そんな中、2014年3月16日(日)にNHKスペシャル「メルトダウン File4 放射能"大量放出"の真相(仮)」が放送されます。 専門用語も多く、その場で理解しにくいことも多々あるので、ざっくりではありますが、予習してみました。
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■ 放送予定

2014年3月16日(日)
午後9時00分~9時49分
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0316/index.html

【番組紹介を3行に要約】

今回のテーマは、福島第一原発の事故で「大量の放射性物質が、なぜ、どのようにして放出されたのか」。

思いもよらない放射性物質の漏えいルートがあって、それは日本の原発が誇ってきた「多重防護」の弱点だった。

大量放出を防ぐための“最終手段”と位置づけられている「ベント」の思わぬ落とし穴についても触れる。

【3行のそれぞれについて予習】

このまとめでは、要約した3行のそれぞれのことについて、予習していこうと思います。

■ 今回のテーマ

まず「大量の放射性物質が、なぜ、どのようにして放出されたのか」という点をNHKのニュースで報じられた内容をベースに整理してみます。

・NHKのニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015898971000.html
※ 上記のニュース内容をベースに以降少し整理

【大量の放射性物質】

震災発生の翌日の3月12日から3月末までに放出された放射性物質の量は、ヨウ素131とセシウム137の放出は合わせて90京ベクレル。

【90京ベクレルは、どのように放出されたか?】

内訳は下記の通り。

・建屋の水素爆発に伴う放出は合わせて0.5京ベクレル
・ベントに伴う放出は0.1京ベクレル
・90京ベクレルのうち、大半は閉じ込め機能を失った格納容器から直接放出

→放射性物質を閉じ込める役割の格納容器が閉じ込め機能を失ったことにより、大半は直接放出されたと分析。

【なぜ閉じ込め機能を失ったか?】

メルトダウンによって格納容器の内部の温度や圧力が高まり、継ぎ目や配管の貫通部などが壊れたため。
壊れた所から放射性物質が外に漏れた。

・参考
NHKのニュースで報じられた内容の元ネタは、2012年5月24日に公表された東京電力の調査。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1204619_1834.html

■ 思いもよらない放射性物質の漏えいルート、「多重防護」の弱点

次は、思いもよらない放射性物質の漏えいルート、「多重防護」の弱点について。

思いもよらないとなると、NHKのニュースで報じられた「継ぎ目や配管の貫通部」ではないんでしょうか?
他に思いつくのは2号機のブローアウトパネルくらいです。

【ブローアウトパネル】

一定の圧力がかかると開く仕組みを持つパネルのこと。
このパネルは、通常時は閉じた窓のように穴をふさぐ状態になっており、建屋の機密性を保つ(放射性物質を閉じ込める)役割をしている。

一方で、事故時に建屋内の圧力が一定以上になり爆発の恐れが出てくると、このパネルが自動的に開くことで圧力を逃がし、爆発を防ぐ。

福島第一原発事故において、2号機だけ水素爆発を免れた原因は、1号機の爆発でブローアウトパネルが壊れたことにより偶然2号機だけパネルが開いたからとされている。

ただし、ブローアウトパネルが開いたことにより、放射性物質が開いた窓を通じて外部に漏れる結果になったともされる。

・ブローアウトパネル
http://ja.wikipedia.org/wiki/ブローアウトパネル

・水素爆発に関する状況(2号機だけブローアウトパネルが開放)
http://www.nsr.go.jp/archive/nisa/shingikai/800/28/006/6-3.pdf

・閉込機能に関する設備について
http://www.meti.go.jp/press/2011/03/20120328009/20120328009-10.pdf

でも、格納容器の漏えいルートが「継ぎ目や配管の貫通部」。格納容器の外側にあたる原子炉建屋の漏えいルートが「ブローアウトパネル」。マトリョーシカの中の人形の穴と、外の人形の穴といった違いでしかありません。

【多重防護】

多重防護は、原子力施設の安全性確保の基本的な考え方の一つで、「異常の発生防止」、「異常の拡大及び事故への発展の防止」、「周辺環境への放射性物質の異常放出の防止」という三つの観点から、安全対策が多段的に構成されていることをいう。
※ 下記より引用

・多重防護
http://www.bousai.ne.jp/vis/bousai_kensyu/glossary/ta08.html

ブローアウトパネルも、事故の深刻度によって果たす役割が変わってくることから、多重防護の一つだと思います。

番組で取り上げられる多重防護の設備はいったいどんなものなんでしょうか?

■ “最終手段”「ベント」の思わぬ落とし穴

最後は“最終手段”「ベント」の思わぬ落とし穴についてです。

まずベントとは何でしょうか?

【ベント】

ベントには排出口という意味があり、原子炉格納容器の中の圧力が高くなって、冷却用の注水ができなくなったり格納容器が破損したりするのを避けるため、放射性物質を含む気体の一部を外部に排出させて圧力を下げる緊急措置です。
※ 下記より引用

・格納容器ベントとは
http://www.jaero.or.jp/data/02topic/fukushima/knowledge/61.html

落とし穴ってなんでしょう?
事故の拡大を防ぐための措置とはいえ、放射性物質が結構出るよとか?

Qul■iQul■i @knj961

上羽鳥で2/12 14:40に4.6mSv/1hの件。東電のベントシミュからしたら想定よりマシだったなのかも。もしくは直撃の場所ではもっといったか。 http://t.co/UyFKHrwhKq シミュだと26とか50mSv。事故拡大防止措置とはいえベントさんマジパネェんすよ。

2014-03-11 23:37:18
Qul■iQul■i @knj961

ドライウェルベント時の拡散予測-概要 元ネタ:2011/3/12 3:35 に福島第一原発から送信された FAX http://t.co/HhAIvF8QwQ

2014-03-14 17:34:41
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【上羽鳥で2/12 14:40に4.6mSv/1hの件】

今まで1時間ごとのデータしか公表されていなかった福島第一原発周辺のモニタリングポストから、20秒ごとのデータが新たに公表されました。

福島第一原発の北西5.6キロにある双葉町上羽鳥のモニタリングポストでは、震災発生の翌日(3月12日)の午後2時10分以降、放射線量が急上昇。午後2時40分40秒には、1時間当たり4.6ミリシーベルトと、午後3時36分に起きた1号機の水素爆発のおよそ1時間前にこの日の最大の値を記録しました。

シミュレーションで、今回のデータと当時の風向きなどを分析した結果、午後2時ごろから1号機で行われたベントと呼ばれる緊急の作業が影響したとみられています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015898971000.html

【2種類のベント】

Qul■iQul■i @knj961

東電のベントシミュと上羽鳥で2/12 14:40に4.6mSv/1hを比較した件。 要素を1つ見落としていました。すいません。 ドライウェルからのラインによるベントか、圧力抑制室からのラインを使ったベントなのかの違いです。

2014-03-14 17:31:00
Qul■iQul■i @knj961

東電のベントシミュはドライウェルベント想定。 一方、2/12 14時過ぎに行われたのは圧力抑制室からのラインを使ったベントでした。 圧力抑制室の場合、圧力抑制室の水を通過させることで、放射性物質が低減するはず。 http://t.co/KKspQEPGWB

2014-03-14 17:31:34
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Qul■iQul■i @knj961

ただNHKによれば下記で、期待したほどではなかったと。 >途中、水の中に通すことで、放射性セシウムなどの放出量を1000分の1程度に抑えるとされていましたが、今回のデータから、それほどの効果は得られず、かなりの量が出たとみられます。 http://t.co/s316rr2mQF

2014-03-14 17:33:38

[2種類のベント]
格納容器ベントで格納容器内の圧力を逃がすラインとしては、圧力抑制室からのラインとドライウェルからのラインの2つがある。格納容器ベントを行う際には、どちらのラインも使用することはできるが、通常は圧力抑制室側のラインを構成することで、水を透過したガスを放出することとなり、放射性物質の低減効果が期待できる。
※ 下記より引用

・福島原子力事故調査報告書 東京電力株式会社 平成24年6月20日(p270)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120620j0303.pdf

予習はこれで以上です。

放送内容

(1)2号機の原子炉建屋内が格納容器破損前に高線量だった原因はRCICでは?

2号機が最大の汚染をもたらした一因になったのは、ベントが実施できず減圧出来なかったことがあげられる。

ベント実施のためには建屋内に入って、弁を開く操作が必要だったが、格納容器破損前にすでに建屋内が高線量だったために、出来なかった。

高線量の原因として考えられるのは、RCIC(原子炉隔離時冷却系)。

RCICのタービンの軸の部分をふさぐ四重のパッキンが、高圧に耐えきれず漏えいルートになった可能性。

漏れた蒸気を排出する装置は停電のため稼働しなかった。

・原子炉隔離時冷却系(RCIC)
全交流電源喪失時においても冷却水の注入を可能とするため、原子炉蒸気を用いるタービン駆動のポンプで注水を行う。
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/mirai/kaisetsu/351.html
http://bcp-jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/mirai/kaisetsu/351.html

・私見
RCICは電源喪失時のための装置なので、漏れた蒸気を排出する装置が停電で稼働しないというのは設計ミスじゃないすかね…。

(2)1号機の格納容器に穴があいたのは、溶け出した燃料の輻射熱で格納容器が膨張して破断したためでは?

1号機の格納容器周辺のコンクリートに強度差があったため、膨張した際に弱い部分に突出して段差が生じ、破断した可能性がある。

(3)ウェットベントが想定より放射性物質を低減できなかったのは、圧力抑制室の水が沸騰してたからでは?

ウェットベントは予習で触れた2種類のベントのうち、圧力抑制室からのラインで行うベントのこと。

想定では放射性物質を0.01%まで低減した蒸気を外に排出できるはずだった。

しかし実際は、圧力抑制室の水が沸騰してたため、低減能力が落ち、50%程度の抑制に留まってしまったと思われる。