daisinmonkanさんの『虐殺器官』初読時感想

三年も前の他人様のtwitter上の感想(しかも初読時の)まとめるのもどうかと思ったんですが、アニメ化発表ということもあり……。 あと勝手ですみませんが、いずれtwilogのログからも消えて読みにくくなってしまうには惜しい連投だな、と思うので。
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以下、三年前の他人様のtweetを急にまとめて公開したきっかけ(になったTLに流れてきた話)も引用。

牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ああ、そうか。「伊藤計劃以後」と聞くと、「伊藤作品の影響でSFがガラリと変わった」図式と感じるひともいるのか(そちらのほうが多いかも?)。ぼくは、ある時代の感覚や問題意識があり、それが同時多発的に作品化されていて、その代表(先駆)が伊藤計劃だ――ってことだと了解していた。

2014-03-22 07:30:44
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

まあ、どちらにせよ、個人的には「○○以後」みたいなレッテルは、好きではないのだけど。鈍感に(都合よく)利用されて、作品そのものではなく、ジャンルや状況ばかり論じるふうになっていくので。まあ、戦略的にやっているひともいるだろうが。そういうのも、ちょっと引く。

2014-03-22 07:35:24
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

プロ野球みたいだな。まあ、それはそうなんですが、「世代」だと作者の年齢とかデビュー時期とかみたいな受け止め方をされてしまいがちなので、また誤解を招きそう。 RT @hirabat 僕は前者の意味でとらえてました。後者だと、「伊藤計劃世代」の方がしっくりきます。

2014-03-22 07:45:06
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

真面目に作品を読んだうえで「以後」と言いたくなる気持ちもわかる。いま世界でリアルに起きていることの生々しい実感が、従来の小説ではほぼ表現されていなかった。それと真っ正面から向き合う作品がついに現れたんだ――という気持ちが「以後」という“時代を画す”言葉に託されている。おそらく。

2014-03-22 07:50:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼく自身としては、「いま世界でリアルに起きていることの生々しい実感」との関わりかたが難しいと思っている。妙ににこじらせると、「時局的な状況」(つまり事実性)へと矮小化されてしまい、アンガージュマンみたいなカラ回りになる。そういう文学はタイクツだ。

2014-03-22 07:56:41
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その指摘は面白いですね。ぼくはJ・G・バラードと接続させて捉え、けっこう普遍的に思えたのだけど。 RT @Sakai_Sampo 私はちょうど伊藤氏の活動時期に日本にいなかったせいもあって、どうもその感覚が理解できなかったりするのでした。すごく「日本的」だなあ、とは思うのですが。

2014-03-22 08:00:12
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

詳しく聞きたい RT @Sakai_Sampo たとえば『虐殺器官』のアイデアも物語もすごくおもしろいと思うんですけど、あの登場人物たちの造形は、アメリカ人も含めてすごく「日本的」なメンタリティだと思ったんですよ。そこがすごく日本の読者にアピールしたんじゃないかとも思うんですが。

2014-03-22 08:11:10
堺三保/Mitsuyasu Sakai @Sakai_Sampo

@ShindyMonkey 『ハーモニー』に至って、遠未来のユートピアの話にすることで、ようやく普遍的なものに昇華された気がするんですよね。いや、伊藤氏のことは全然知らないので、ものすごく個人的な感想でしかないんですけど。

2014-03-22 08:10:07
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

どこかで企画したいですね。「伊藤計劃以後」の日本SFはどこまで普遍な訴求力を持っているか。もちろん、個別な作品をちゃんと評価しないと意味ないけれど。ぼくは『ヨハネスブルグの天使たち』が、ほかの読者に(海外も含めて)どう読まれるか気になる。 @Sakai_Sampo

2014-03-22 08:15:58
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そう言われて思いだしました。ぼくは『虐殺器官』を最初読んだとき、登場人物の行動原理に関連して、ちょっとティプトリー「エイン博士の最後の飛行」みたいだなと感じた。なんか極端だな、と。 RT @videobird 僕も最初読んだときにそう思いました @Sakai_Sampo

2014-03-22 08:27:02
相楽 @sagara1

『虐殺器官』、「登場人物たちの造形は、アメリカ人も含めてすごく「日本的」なメンタリティだと思った」https://t.co/CHlmYr43TX という話を見掛けたので、あの連投 http://t.co/Q8BUtSLNwC この機に(?)まとめときたいなあ、と。

2014-03-22 10:09:28

蛇足ですが、他人様の過去tweetだけ晒すのもなんなので、daisinmonkanさんの連投を見て当時書いた自分の感想も。

相楽 @sagara1

(『虐殺器官』は様々な媒体に載せてアレを放ちながら、どうやってか「国境」を区切りに影響をコントロールできている描写のように感じられたのだけれど、あそこの理屈付けが今でもよくわかっていない。ただ、見落としの可能性大。また再読してみるか)

2011-06-22 12:10:21
相楽 @sagara1

あと伊藤計劃『虐殺器官』関連で諸々ぐだぐだと。前提として「アメリカそのもの」でなく「伊藤作品に通底する(と思える)「「じょおおおおだんじゃない」の叫び」が向けられるべき「秩序」であり「力」の担い手の象徴してのアメリカ」へと向けられた視線だろうとは思えつつも(続く)

2011-06-22 12:47:25
相楽 @sagara1

あまりにも悪い面のみ強調され過ぎ、バランスを欠いていたようにも感じられてしまっている。それは各所で度々指摘されているように「主人公を含めた登場人物たちが、外国人なのにメンタリティが日本的な感じだったり日本人が考えがちな外国人ぽかったり」http://t.co/atLKCdY

2011-06-22 12:48:01
相楽 @sagara1

(続き)するのと併せ考えると、より考えこまされてしまいもする。なお「各所で度々」とは例えば@daisinmonkanさんの6/14-16の精読、特に15日あたりhttp://t.co/aXdtJQ8 の評でも指摘が出てきていると思えるし、個人的にも妥当な受け止め方だと思える。

2011-06-22 12:49:01
相楽 @sagara1

なお、これも定番の指摘である「作品にサンプリングされたサブカルネタに日本由来のものの比率が高いこと」などもその読みに影響する話だと思う(ときメモとかMGSとか無数に含まれている、そこらへんのことです)

2011-06-22 12:50:29
相楽 @sagara1

で。対アメリカ(アメリカ的なるもの)への偏った視線がこれだけアメリカの傘の下での長い繁栄の時間を過ごしてきた「日本人」の手によりその「日本人的メンタリティ」を元に語られるとなると、そこには非常に屈折というか鬱屈したあまり宜しくない何事かを感じざるを得なくて。

2011-06-22 12:51:34
相楽 @sagara1

恐らく十分以上に意図的なものだったろうとはいえ、その面ではあまり好きにはなれませんでした。それは同時期の幾つかのSF(及びライトノベル)に目をやってみたとき、より強くならざるを得なかった印象でもあって。

2011-06-22 12:52:33
相楽 @sagara1

「国としての「アメリカ」への、また「「秩序」であり「力」の担い手の象徴してのアメリカ」への視線、その要素が強調されたSF」ということになると『虐殺器官』(2007)に対し冲方丁『スプライトシュピーゲル4 テンペスト』(2008)の存在がまず僕には意識されたところであって。

2011-06-22 12:53:17
相楽 @sagara1

作中において冲方丁がある人物に仮託して描き抜いてみせた「良き保安官としてのアメリカという側面」。「シュピーゲル」シリーズを通じて「悪い側面」はそれはもう存分に描きつつ、それに加えて「確かにあるのだろう「良き側面」を描く」そのバランス感覚。それは僕にはより肌にあうものと感じられて。

2011-06-22 12:56:19
相楽 @sagara1

なお、ここで同時期に「「秩序」であり「力」の担い手としてのアメリカ」を通り越し「~としての人類」に対し、なかなかに厄介な視線を投げかけたものとして捉えることも可能と思えた田中ロミオ『人類は衰退しました』シリーズ(2007~)も比較に加えると、より面白い話になり得るようにも思う。

2011-06-22 12:56:46
相楽 @sagara1

ちなみにやはり同時期には(その比較の構図には当然入ってくるべき作家と思える)小川一水は『不全世界の創造手』(2008)を出していて。又、長谷敏司『円環少女』シリーズ(2005~)も絶賛進行中だったわけで。諸々、相当無理矢理にはなりがちだけども、併せて考えると面白いところだと思う。

2011-06-22 12:57:22
相楽 @sagara1

なお、そうした『虐殺器官』に感じざるを得なかったもやもやは、『ハーモニー』では僕には感じられない。むしろ『虐殺器官』に連なる世界での物語とも読める『ハーモニー』においてその「もやもや」に通じるものが無いわけが無いとして、それは昇華され、作品をより優れたものとしていると思わされた。

2011-06-22 13:05:04