(仮題)平川さん イギリス出張レポート

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Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)SASの活動は全般的に「良質の啓蒙主義」といった印象。市民が科学技術について理解することが重要だとしても、「科学者が教えたいコト」を伝えるのではなく、「市民が何を懸念し何を知りたいか」を第一にして、市民が尋ねる力をエンパワするもので、父権主義的な欠如モデルを脱している。

2014-03-22 13:15:19
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

@tutiya 「研究そのものを見せる」というより「科学がどうやって妥当性検証・確立やってるのか」という科学プロセスを理解してもらい、メディア等の科学的情報の信頼性チェックをどうやったらいいか、具体的な質問の仕方含めて、身につけてもらうというのがSASのやっていることのようです。

2014-03-22 13:18:24
Syun Tutiya @tutiya

@hirakawah ということは、いわゆる市民科学推進というようなものでなく、実際に機能しているはずの科学研究実践のための規範的制約について市民に知ってもらおうという性格のものであると考えてよいのでしょうか。

2014-03-22 13:21:29
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

@tutiya また「科学プロセスを理解する」ということには、科学の妥当性について、過剰な信頼(信仰?)と過剰な不信の両極に転ばない態度を身につけてもらうという効果も考えてるようでした。(「そういう効果も期待できるよね」とコメントしたら「そうそう!」と首肯してました。)

2014-03-22 13:21:38
Syun Tutiya @tutiya

@hirakawah なかなか微妙ないし健全なスタンスですね。

2014-03-22 13:22:54
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

@tutiya そうですね。科学的情報の背後に何があり、何が行われているか、科学的実践がどう為されているかを理解してもらうことが目指されています。ただし、そうするの第一の目的は、メディア等に出る科学的情報の信頼性についてのメディア・企業・科学者の説明責任を高めることにあります。

2014-03-22 13:27:47
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

@tutiya なので「良質の啓蒙主義(というか、理念としては、本来の啓蒙主義というべきでしょうか)」と感じた次第です。

2014-03-22 13:28:31
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)もっとも、「良質の啓蒙主義」といえるSASも、昔はかなり露骨に欠如モデル的で科学主義的だったという話は、午後にあった研究仲間から聞いた。10年くらいかけて経験を積んだこと、スタッフがある程度世代交代したことなどによる変化らしい。

2014-03-22 13:31:33
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)それと、今日聞いた話の中にも、実は、わずかながら科学主義の臭いは感じられたのだけども。特定の科学的主張を支持するものではなく、何であれエビデンスに基づいた社会的議論を促進することが目的だといいつつ、基本、科学技術に対してoptimisticな感じ。

2014-03-22 13:35:35
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)たとえば遺伝子組換え(GM)作物についても推進派寄りっぽく、電磁波や放射線のリスクについても「問題ないでしょ」という感じ。ただし、その主張の押し付けではなく、エビデンスに基づいて議論することを促進することこそ重視している点で、僅かな科学主義を残しつつも良質な啓蒙主義といえる。

2014-03-22 13:39:05
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)これは今思ったことだが、僅かに科学主義的でありながらも非欠如モデル的な良質の啓蒙主義になってることには、過去十年くらいの経験からの学習ということ以外に、活動目標の根幹に「民主的な社会を作る」という感覚があるからなのではないだろうか。

2014-03-22 13:42:51
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)民主的な社会では、科学技術に関わることでも、市民に根拠が開示され説明責任が果たされなければならないし、根拠が怪しい政策が作られてはならないという信念から、市民が根拠を問い質す力、科学者等が根拠を説明し社会的責任を果たす力をエンパワするのがSASの根本と理解した。

2014-03-22 13:49:34
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみに彼女たち自身は、そういう言葉では理解してなかったようだが、こちらから「皆さんがやってるのは『科学に関する市民性(scientific citizenship)』を醸成することだね?」と言ったら「それはいい表現ね!うん、そうよ」と、ひらめくことあったような好反応だった。

2014-03-22 13:55:53
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)SASの話はここまで。午後に会った研究仲間と話したことも多岐にわたっていて面白いのだが、そろそろ眠くなってきたので一点だけ書いておこう。

2014-03-22 13:59:10
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)研究仲間(James Wilsdon)の話で特に興味深かったのは、英国でもここ数年、科学技術と社会の関係(とくに民主政の観点から見た関係)にバックラッシュというか先祖返りが起きているという話。「英国でも」と書いたのは日本でもそうであるから。もちろん違いもある。

2014-03-22 14:11:21
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)「日本でも」というのは、実質はともかく、少なくとも科学技術政策の理念としては、科学技術と社会の関係は、欠如モデル的・PA(public acceptance)的なものから、対話だとか政策への国民参加だとかテクノロジーアセスメント(TA)を重視・促進する方向に進んできたから。

2014-03-22 14:15:46
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)とくに民主党政権になってからはそのトレンドが加速される期待も高まった。第四期の科学技術基本計画の原案はほぼ2011年初めで固まっていて、そこにもさっき書いたようなことはすでに盛り込まれていたのが、震災・原発事故にはさらに加筆・修正が行われた。

2014-03-22 14:18:14
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)たとえば「テクノロジーアセスメントに基づく合意形成」を原子力についてもやるなんてことは原案にはなかったのだが、それが追加。霞が関的には、平時であれば経産省が絶対に文句つけてきそうだったのだけど、そのままスルーされて閣議決定された。

2014-03-22 14:20:48
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そういう下敷きもあって2012年夏には、大変不手際が多く、各方面から批判いっぱいだったものの、将来の原発比率に関する討論型世論調査(DP)を国家戦略室が実施。これは世界的に見ても相当にチャレンジングな試みだった。

2014-03-22 14:25:02
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ところが、DPの結果について閣議決定を避けたことや、全般的な事故・震災対応のまずさで民主党政権の支持率急低下、自公政権の復帰で一気に状況がリセット。DPのウェブサイトは一時期、内閣府のサーバーから削除されていたほど(いろんな人が文句をつけたので、その後復旧したが)。

2014-03-22 14:29:43
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)昨年、総合科学技術会議(CSTP)がまとめたイノベーション戦略でも、第四期科学技術基本計画にある科学技術と社会関係のトピック・課題はほぼ丸ごと無視。一気に政策が20~30年くらい先祖返りした感じ。

2014-03-22 14:32:17
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)第四期基本計画の政策理念の一つは「社会とともに創り進める科学技術イノベーション政策」なのだが、CSTPが作った戦略は「社会抜きで進め科学技術イノベーション政策」になってしまっている。ソーシャルイノベションなんて観点もなく、半世紀前のリニアモデルに戻っている。

2014-03-22 14:35:32
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)「リニアモデル」というのは、「基礎研究をしっかりやれば、それがやがて応用研究、実用化、社会への普及へと進む」というもの。第二次大戦後、米国のヴァネバ・ブッシュが提案した科学技術政策の理念でもある。

2014-03-22 14:38:32
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ブッシュは、自身が責任者だったマンハッタン計画(原爆開発計画)で、核物理学という、一見、何の実用性もないと見られていた基礎中の基礎科学が、核兵器という米国安全保障にとって極めて有益なものを生み出したという経験から、医学など他分野でも基礎研究進めればいいと考えた。

2014-03-22 14:40:39
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)話を戻すと、総合科学技術会議の戦略の先祖返りは、私見では、意図的に科学技術と社会に関わる内容を外したというより、現在の事務局や会議議員(政治家含む)にそういうセンスや見識がもともとないからではないかと思っている。"Banality of evil"の一例というべきか。

2014-03-22 14:44:14