「プールでの放尿は危険！」は本当か？

エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

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ネット上で、「プールで放尿すると化学兵器に使われる化学物質が発生して危険である！」という主旨の記事が拡散され大きな話題となっている。しかし、これは本当に正しいのだろうか？素人ながら検証してみた。

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この話題の元となる論文は、2014年2月25日に Environmental Science & Technology に掲載された以下のリンクの物である。 http://t.co/HexhVIfl1k

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そして、日本語で参照できる記事では、以下のものがおそらく拡散の火種になっている可能性がある。あくまで参照数が多いものを挙げたので、これ以外にもあるかもしれないが省略。

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[記事1] 【危険】プールで排尿すると化学兵器の一種「塩化シアン」が発生する!? - IRORIO 2014年3月7日付 http://t.co/y7T4F3blxM

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[記事2] 【注意喚起】プールでオシッコをすると「化学兵器に使用される有害物質が発生する」との研究結果　- ロケットニュース24 2014年3月19日付 http://t.co/pC563glC7A

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[記事3] プールでおしっこは危険！な理由とは？―大学調査 - マイナビウーマン 2014年3月20日付 http://t.co/yBQu5i0tPT

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また、上記マイナビウーマンの記事のニコニコニュースへの転載もよく参照されている。 http://t.co/aNHqvfbyll

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こうしてみるとどうだろう？所謂信頼性のあるマシなメディアが1つとしてあるだろうか？私にはそうには思えない。私から見ればどれも個人のブログか週刊誌程度の信頼性しかないメディアである。探す限り日本語の記事はこれだけである。

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これらの記事は、大元をたどればInvironmental Health Newsの記事(http://t.co/8ShyTn0CL8)を参考にしている。

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日本語の記事はDaily mailの記事(http://t.co/7HFvPRxVAt)かLos Angeles Timesの記事(http://t.co/94rQWaDQ01)を参照しているものもあるが、これは最終的に先ほどの記事にたどり着く。

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まず記事の内容そのものに入る前に、「危険性を煽るタイトルの記事は、内容が恣意的である場合が多い。」という経験則を踏まえたい。今回の場合で言えば、日本語の記事に「化学兵器」という単語が使われている事が目につく。タイトルで使われているのもあるし、本文中に使われている記事もある。

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しかし、参照元となった英語の記事には、いずれも "Chemical weapons" ないしそれに類する単語は見当たらない。これは日本語の記事を書く際に付与された可能性が高い。

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まずこの時点で、内容の真偽に関わらず恣意的な部分を感じる。今回の研究は、プール中の塩素化合物と尿に含まれる尿酸の反応で生じる化合物についてであり、化学兵器とは一切関係ない。発生する化合物が化学兵器に使われる事は事実だが、それは今回の研究とは何の関係もない事である。

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今回生じると述べられている化合物であるシアン化塩素・三塩化窒素のいずれも毒性が強く不安定で、稀に産業用に使われる事もあるが、あまり積極的に使われず、化学兵器以外の用途が実質ないとも言える。かといって、「化学兵器」という元記事にはない単語をわざわざ書き足すのは恣意的としか思えない。

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また、危険性を煽る記事にしばしば見受けられる事として、量が一切書いてない事である。「薬が毒に成り、毒が薬になる」とか「薬も過ぎれば毒となる」という言葉があるが、生体に対する化合物の影響は、摂取の仕方という重要なファクターを省くとしても、量そのものでだいぶ話は変わってくる。

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毒物の事を書くとしたら、量の話は重要だ。生体に必須の食塩でも量を摂り過ぎれば死ぬし、猛毒として有名なヒ素も微量は生体に必須とも言われている。結局は量次第なのだ。今回の記事も、シアン化塩素・三塩化窒素が生体にもたらす影響は述べられており、それは事実だが、量についての言及がない。

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中には、論文に書かれた発生量からするとまずありえない、致死量に至るまでの症状を書いているものもあるが、それはハッキリ言えば煽りレベルで、それを言っていたら全ての化合物に対して同様の事が言えてしまう。

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さて、この論文は、プールの水に使われる塩素消毒剤に含まれる塩素イオンの濃度別に、尿や汗と同じような組成にした化合物を混ぜて発生する化合物の量について述べている。その結果として、尿に含まれる尿酸が塩素イオンと化合してシアン化塩素と三塩化窒素が発生し、その量は条件によって違う。

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また、汗の影響は無視できる程度に小さく、ほとんどは尿に由来すると述べている。人工物を使ったのは、おそらく個人差による尿酸濃度の影響を小さくしたかったからだろう。

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まず、シアン化塩素と三塩化窒素は、塩素消毒剤を投入した時点で必ず副産物として発生する。この論文でも全部が尿酸由来ではなく、プールの水に含まれるシアン化塩素の24～68%、三塩化窒素の3～4%を尿酸由来のものとしている。その量は塩素イオンの濃度と水のpH・温度によって変わってくる。

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なお、尿酸と塩素化合物の関係を述べたのは今回が初ではない。放置したプールでは塩素化合物の濃度が増加すると言う主旨の論文が2011年にも出されている。 http://t.co/gRTufLBTQ6

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しかし、この論文は尿酸によって増加したシアン化塩素と三塩化窒素が、呼吸器と皮膚に作用して悪影響をもたらす恐れを指摘はしているものの、害があると確定的に述べてはいない。むしろ、これ以上の増加をもたらすファクターである放尿を控えよと警告しているのがこの論文の主旨である。