【第二部-七】扶桑といっぱいの紙吹雪 #見つめる時雨

扶桑×山城 ※後半R-15
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扶桑視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

今日は私が秘書艦を務めています。本来は山城だったのですが、急用が出来たとかで私に代わって欲しいと言って来ました。…急用って何かしら?聞いてはみましたが、話してはくれませんでした。珍しいこともあるものね。でも、本当に何かしら…少しだけ気になります。

2014-03-28 22:00:46
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「扶桑、こっちは終わったよ」 時雨が処理を終えた書類を持ってきてくれました。このコは本当に働き者。年度末ということもあって、提督の仕事量も通常の比ではありません。でも、進んで手伝いに来てくれたこのコのお陰で、仕事は順調に片付いていきました。 「ありがとう、時雨」

2014-03-28 22:05:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「扶桑…いいってば…」 気づいたら時雨の頭を撫でていました。時雨の顔がほんのり赤くなっています。いけませんね、褒めてあげたいと思うと、つい撫でてしまいます。自分でも撫で癖があるのは自覚していますが、このコは特に撫でやすいので、それこそ無意識に手が出てしまうようです。

2014-03-28 22:10:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…最近、山城がとてもいい笑顔をするようになりました。それは、一重にこのコ…時雨のお陰でしょう。このコが謂わば、身を引く決断をしてくれたお陰で、今の私達の関係があります。…時雨にはとても辛い決断だったでしょう。私は一度、聞いたことがあります。本当に良かったの…?と。

2014-03-28 22:15:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…時雨は「扶桑と山城をこれ以上苦しませたくなかったから」と言いました。…その言葉を聞いたとき、私は改めて罪悪感を覚えました。私と山城の、二人分の気持ちを背負って、更に自分の気持ちに押し潰されそうになりながらも、時雨は答えを出してくれたのです。こんな…小さな体で。

2014-03-28 22:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

その上で時雨は言ってくれました。「ずっと私達の傍にいたい」と。私達は…幸せ者です。本当にありがとう、時雨。 「扶桑ってば…もう…」 …気づいたらずっと撫でていたみたいです。私が撫でたせいで乱れてしまった髪を直しながら、時雨は苦笑していました。ご、ごめんなさい…。

2014-03-28 22:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…はい、そう。わかったわ。ありがとう」 そう言って、提督が電話を切りました。 「時雨、準備出来たって」 提督が時雨に言います。…何の準備でしょう? 時雨も何か用事があるのでしょうか。 「わかった。ありがとう、提督」 時雨が、机を整理し始めました。

2014-03-28 22:30:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「扶桑、行こう」 …え、私?突然、時雨に手を引かれました。そして、私を部屋の外へ連れだそうとします。ま、待って…何が何やら…。 「時雨、私…まだ秘書艦の仕事が…」 そう言って提督を振り向くと、笑顔で手を振って私達を見ていました。え? 「ほら、大丈夫でしょ?さ、こっちだ」

2014-03-28 22:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨が私の手を引いて廊下を進んで行きます。向かっているのは…食堂かしら…?そういえば鎮守府内が妙に静かです。普段この時間ならもっと賑やかなはずなのに…。どうしたんでしょう…?今日は何だか、不思議なことばかりね…。

2014-03-28 22:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨はずっと私の手を握っていました。身長差もありますし、あまり無理はしないで欲しいのだけれど…。 「え?大丈夫さ。僕は扶桑の手、好きだよ」 そ、そういう問題かしら…? …時雨の手を改めて見ると、随分しっかりしてるなと思いました。とても小さい、でも、頼りがいのある、そんな手。

2014-03-28 22:45:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「着いたよ、扶桑」 食堂の扉の前で止まり、時雨は手を離しました。…いつもなら、食堂の扉は開け放たれてるはずなのに…。 「さ、入って」 疑問に思って立ち止まっていると、時雨が入るように促しました。…入ればわかるかしら。私はドアノブに手をかけ、そして…扉を開きました。

2014-03-28 22:50:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…え?」 扉を開けた私の目に飛び込んできたのは、私を拍手で迎える鎮守府の皆さんでした。これは…?状況を飲み込めないでいると、続けて榛名が大きな声で言いました。 「皆さん、お願いしまーす!!」 それを合図に、皆さんは手に持っていた籠から、何かを空中に撒いていきました。

2014-03-28 22:55:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「これは…」 それは、紙吹雪でした。色とりどりの紙が、食堂に舞っています。…私は、この光景を、何処かで…。 「姉様!」 皆さんの真ん中に立っていた山城が、私のもとに駆け寄って来ました。そして…大きな花束をくれました。 「姉様、進水日、おめでとうございます!」

2014-03-28 23:00:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あ…」 そうか、これは…この光景は…あの時の…。私の記憶の中にある、呉の工廠。そこで私は、帝國海軍独自の、最初の超弩級戦艦として進水した。これは、その日の光景…。皆さんの想いの詰まった紙吹雪…。私の大切な…記憶の…。 「姉様…?」 私の目からは、涙が…溢れていました。

2014-03-28 23:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城の手が、そっと私を包みました…。 「…皆、扶桑姉様の為に、集まってくれたんですよ」 …山城…胸が一杯になるって、こういうことなのね…。どうしましょう…胸の奥から込み上げてくるものを抑えることが…出来ません…。皆さん、私の為に…こんな…。 「…ありがとう、ございます…」

2014-03-28 23:10:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ほら、主役がこんなところで立ってちゃ駄目ですよ」 山城が私の手を引いて進んでいきます。私は泣き顔が皆さんに見られたくなくて、山城の背中に隠れるように歩きました。そして一番奥の机の、所謂上座に座らされました。 「じゃあ、私飲み物を取って…姉様?」

2014-03-28 23:15:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

あ…。私は無意識に山城の服の裾を掴んでいました。どうもこういう雰囲気は久しぶりというか、このような場で主役になるのにはあまり慣れてなくて…。その心細さからつい、山城に助けを求めてしまいました。 「姉様ったら…ふふ」 山城に笑われてしまいました…恥ずかしい…。

2014-03-28 23:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「僕が取ってくるよ。二人は座ってて」 いつの間にか入って来ていた時雨が、私達の分の飲み物を取りに行ってくれました。…こんなに何でもして貰っていると、何だか悪い気がしてきます…。 「いいんですよ、姉様。今日は、扶桑姉様の特別な日なんですから。それを皆でお祝いしたいだけなんです」

2014-03-28 23:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

会場は、本当に沢山の艦娘で賑わっていました。私は、こんなに沢山のコ達に囲まれて、支えられて…今、ここにいるのね。…こんな日が来るなんて…あの頃は思ってもいなかった…。 「…山城」 「はい、姉様」 「…ありがとう」 「…はい」

2014-03-28 23:30:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「Oh、扶桑も山城も、Sweet Timeにはまだ早いネ!それは部屋に戻ってからでお願いシマース!」 …!?金剛の言葉に私達は体を離しました。山城が顔を真っ赤にして金剛を睨んでいます。 「こーんーごーうー!!」 や、山城も落ち着いて…。

2014-03-28 23:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

制するように山城の肩に触れると、目が合いました。合った瞬間、山城は更に顔を赤くして、私から顔を背けました。そ、そんな反応をされると…私まで余計に恥ずかしくなるじゃない…。 「相変わらずアツアツですね、お二人は」 「榛名まで…」 これじゃ…暫く山城の顔が見れないじゃない…。

2014-03-28 23:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「持ってきたよ…って、あれ、二人とも…どうかした?」 時雨が不思議そうな顔をして私達を見ています。…ありがとう、何でもないのよ…。 「コホン…改めまして、これより我らが艦隊旗艦、扶桑さんの進水日記念パーティーを始めさせて頂きます」 司会の翔鶴さんが、会を進行させていきます。

2014-03-28 23:45:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督はまだいらっしゃらないようです。提督お一人に仕事を任せてしまってよかったのでしょうか…。 「大丈夫ですよ。霧島と比叡お姉様が応援に行ってくれてます」 榛名が言いました。ああ…もう、本当にごめんなさい…。 「扶桑!悪いと思うなら、思いっきりEnjoyしてくだサイ!」

2014-03-28 23:50:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…そうですね。皆さんのご好意に甘えさせて頂きます。私は立ち上がり、皆さんを見ました。 「今日はこのような会を開いて下さり、本当にありがとうございます。欠陥戦艦と呼ばれた私が、艦隊旗艦を務める事が出来ているのは、皆さんのおかげです。これからも妹の山城共々…宜しくお願い致します」

2014-03-28 23:53:28