春の月 -桜×土方歳三-

綺羅さん(@kiraboshi219)による薄桜鬼の創作小説第11弾。 桜×○○シリーズ2作目。 最終回更新しました。 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「沖田さんが仰っていましたけど、 土方さんは四季のうちで、春の月がいちばんお好きなんですか?」

2014-04-24 23:38:43
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

ふっと目の前の雪村に気持ちを戻す。 見上げた月はほとんど満月で、 月の近くの星は霞まされるほどに明るかった。

2014-04-24 23:39:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「そうだな。 お天道様もそうだが……、月も同じだ。 晴れの日も、雨の日も、必ず昇ってきて、

2014-04-24 23:39:39
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

文句も言わず、 ただそこにあるだけで皆に必要とされ、愛されて、 失うことが考えられない、存在だ」

2014-04-24 23:40:12
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方は雪村の瞳に移り込んだ自分の姿を見た。

2014-04-24 23:40:25
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「そうだ、あたたかくて、やさしくて。 いつも俺のこころの中にいて、俺を__狂わせる」

2014-04-24 23:41:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方の熱っぽい口調に異変を感じた雪村は、 はっとして力強く土方の両腕をつかんだ。

2014-04-24 23:41:36
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「今はその時期じゃないだけです。 いつかきっと、話してくれる日が来ると思います!!」

2014-04-24 23:41:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あ、あれ……? 沖田さんと猫の話じゃないんですか?」

2014-04-24 23:42:32
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方の口の中の熱っぽさは一瞬にして消え去り、思わず頭を抱えたくなってしまう。 「俺は今、“月”の話をしてたんだがな」

2014-04-24 23:43:31
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

(総司が猫を餌付けして、 斎藤が懐かれて困っていることくらい承知してんだよ!)

2014-04-24 23:43:47
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方は雪村の額を指で押し、雪村は理由がわからずにきょとんと呆けた。 「俺は、春の月が”好き”だ。わかったか」

2014-04-24 23:44:14
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

雪村は額を押さえながら、何度も頷いて同意を示す。 「わかったなら、それでいい。 行くぞ」

2014-04-24 23:44:33
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方が歩き始めると、雪村もついて来る。

2014-04-24 23:44:49
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

月がついて来ると錯覚するように、どこを見ても、どの角度からでも、 目に入るところにいさせてやる。 俺の生き様を、いちばん近くで、見せてやる。

2014-04-24 23:45:35
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方が前を進む。 それに従う雪村のその距離は、さっきよりずっと近い。

2014-04-24 23:46:03
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

少しだけ満ちるに欠けた月、 __水面で揺らめく不安定な月。

2014-04-24 23:46:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

土方歳三が、新選組副長に戻るまで。 それまでの時間は、桜と、春の月で充たしても、いいはずだ__。 (了)

2014-04-24 23:46:52
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