座礁艦隊　２　リンガ泊地第1661支部

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

特に航続距離が顕著で、実物のものより桁違いに"飛べない"。アウトレンジが前提の空母に艦隊決戦を強いるほどだ。対深海棲艦戦闘規定による措置だが、この規定で最も割りを食っているのは明らかに空母であった。 #座礁艦隊

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だが赤城は規定がどうであろうと構わなかった。ただ艦載機を発進させて偵察し攻撃できればそれで十分だったし、続けていたらいつの間にかこの鎮守府の空母筆頭になっていた。他の正規空母や軽空母は自分を慕ってくれるし、とても心地よかった。 #座礁艦隊

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「赤城さん」 二射目を行おうとしたところ、入り口の方から呼ばれる。抑揚の無いその声の主は加賀だった。同型艦ではないが、同じ一航戦としてよく「つがい」に捉えられる彼女とは、この鎮守府に所属するどの空母よりも親しかった。 #座礁艦隊

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加賀はいつもの着衣装甲であったが、胸当てや前垂れなどの艤装は着けていない。この鎮守府では赤城と加賀はローテーションで待機についており、基本的に二隻一緒に出撃することはなかった。しかし、一航戦だからか、または「つがい」に引かれたのか、鎮守府ではよく一緒に行動していた。 #座礁艦隊

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かたや常に微笑を浮かべ、かたや無表情一辺倒。特に意識してやっているわけではないが、いつからか「鉄面皮コンビ」と言われるようになった。加賀はその呼ばれ方が気に障っていたが、赤城は特に何も感じなかった。ただ、加賀が嫌な気持ちになるならやめてほしいとは思う。 #座礁艦隊

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「あら、加賀さん、どうしたの？」 「木曾が出てくるのを見たわ」 加賀はさも不満そうな顔をした。他から見れば違いは分からないだろうが。 「また無断で借りていたのかと思ったのだけど」 「今回は私が立ち会いました。面白いものを見させてもらいましたよ」 #座礁艦隊

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「面白いもの？」 「ええ。空飛ぶ魚雷です」 「まだ陸のことを考えているの、あの人？」 今度はあからさまに嫌悪感を示す加賀。 「艦娘は海の上が戦場なのに」 加賀は艦娘にあるまじき考え方をしている木曾が好きではないらしい。 #座礁艦隊

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「木曾さんは木曾さんで考えているんですよ」 開発で出た使わない艦載機を提供するという話は加賀にはしない方がよいだろう、赤城はそう判断した。 「それに、日本ならともかく、ここでは実際に艦娘が陸で戦っていますからね」 「先日の髪を切った叢雲タイプたちのことかしら？」 #座礁艦隊

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「加賀さんはあの子たちもお嫌いですか」 「あまり気分の良いものではないわね。海から離れ、テロリストとはいえ人を殺している。私たち艦娘は深海棲艦を倒すために生まれてきたはず。自分たちの存在意義から自ら離れて。理解に苦しむわ」 #座礁艦隊

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加賀の思いは正しい。せっかく存在意義を与えられて生まれてきたのに、なぜそれに準じないのか。深海棲艦を倒す。私たち艦娘がここにいる理由だ。でも、もしも。 「加賀さんは、深海棲艦がいなくなったら、あるいは深海棲艦と戦わなくなったら、どうしますか」 #座礁艦隊

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加賀はきょとんとした顔で赤城を見た。ああ、またやってしまったかな、と赤城は思った。会話が飛躍してしまうのが自分の悪い癖だ。頭でいろいろ考え過ぎて、出る言葉は相手には飛び飛びに聞こえるのだろう。 加賀は顎に手をあてて、 「考えたこともなかったわ……」 黙ってしまった。 #座礁艦隊

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彼女は赤城の言うことは全て真摯に受け止めてしまうから、今の質問も真正面から悩んでしまっているのかもしれない。 「ごめんなさい、加賀さん。ねえ、散歩でもしませんか。午前の出撃まで間がありますから」 「……赤城さんとなら、いいわ」 そうして二隻は射場を後にする。 #座礁艦隊

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<lingga 1661> #座礁艦隊

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薄くリップが引かれた細い唇に、幼さを固定された唇が吸い付く。遠慮なく互いの舌が絡められる。幼い方の舌が急いて相手を求める。ちゅっ、ちゅっ、と粘液質な音が部屋に響き渡る。唾液があふれ、つつ、と顎へ垂れてゆく。熱を帯びた吐息が互いを昂らせる。 #座礁艦隊

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執務室。元ホテルの支配人室だったそこで、木曾は初雪の"ごほうび"の現場に居合わせてしまった。「邪魔したな」と出て行こうとすると、"ごほうび"をあげている最中の朝生提督が手で「そのまま待て」と制した。 #座礁艦隊

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ひときわ強く初雪が提督の唇をはむ。提督は初雪の小さな舌を自分の口腔に招き入れ、ぢゅうう、と音が出るほど強く吸う。初雪の顔はすっかり紅潮し、目尻に涙の粒が浮かぶ。口と口が距離を置き、二つの舌が蛇のように絡み合う。初雪はもう漏れ出る声を抑え切れていない。 #座礁艦隊

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"ごほうび"は初雪が満足するまで続けられることはない。朝生提督は必ず一抹の物足りなさが残るようにした。そうすることで初雪は次の仕事も良くこなす。なにより、可愛い。自分はサディストなのかもしれないと朝生中佐は思った。二人の顔が離れ、今回の"ごほうび"は終わった。 #座礁艦隊

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「はい、おしまい」 唾液をハンカチで拭いながら、まるで母が子に諭すように提督は言った。 「続きは今夜。出撃から帰ってきてからね」 「ん……」 まだ息が荒い初雪は、こくり、と頷いてとてとてと執務室を出て行った。 #座礁艦隊

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「お待たせしたわね」 何事も無かったかのように、提督は木曾へ向き直る。 「あ、ああ。いや。いいんだ。それにしても、相変わらず激しいな」 木曾は頬をぽりぽりと掻く。少しばかり雰囲気にあてられてしまった。 「うふふ。それで、赤城さんは了承してくれたのね」 #座礁艦隊

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「ああ。拍子抜けするほどすぐOKしてくれたよ」 木曾は執務室の机へ寄りかかる。重い立派な木材で組まれており、クロスはドバイで売られていた品をあしらってある。机上は片付けられており、書類の類は少ない。机の四分の一を占拠する端末機だけが独特の存在感を放っている。 #座礁艦隊

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秘書艦の仕事を一つ終えるたびに"ごほうび"を求める初雪を置いていてなお、朝生珠子中佐の提督としての手腕は高かった。今でこそ物腰の柔らかい母親のような女性であるが、艦隊を指揮している時の彼女を、木曾はまるで別人であるかのように見ていた。 #座礁艦隊

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「木曾は、あの水陸の子達をずいぶん気にかけているのね」 椅子に座り、机に両腕で頬杖をついて、提督は言った。 「すまんな。本来の仕事に響かせないように気をつけるよ」 「そうじゃないの。あなた、いままでで一番楽しそうに見えるから。私も嬉しいのよ」 提督はにこにこしていた。 #座礁艦隊

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「俺はいつでも楽しいぜ。流れ者の俺を拾って、こうして第二次改装まで育ててくれて。一線で活躍までさせてもらってる。いくら感謝してもし切れない」 「でも、陸を忘れられない」 提督のその一言が、木曾には妙に刺さった。 「そう、かもしれないな」 帽子を引いて、目を覆う。 #座礁艦隊

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「長く陸で戦ってきて、やっぱりおかしくなっちまったんだ。俺は。今日だって朝っぱらから、海も泳げん魚雷もどきをいじくっていたものな。こんな俺を快く思わない連中が居るのも知ってる。それでも、……」 木曾はそれ以上継げない。自分は艦娘で、海で戦わなければならないのだから。 #座礁艦隊

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「木曾……」 「古鷹に挨拶してくるよ。出撃の準備もしなくちゃなァ。大丈夫だよ、俺は。飛行機の件よろしくな」 手を振り足早に部屋を出てゆく木曾へ、提督は声を掛ける暇もない。 #座礁艦隊