地獄鎮守府の日常 ＃１３～１４

白金桜花 @YamanekoOuka

それなら誰でも作れる、複雑な料理となれば話は別となるが、大鳳の場合、料理の知識が疎いためこの手のミスをするだろうとは前日に考えてはいた。 「ぷっ……あはははははは！やっぱり？」 叢雲がその報告を聞いて、堪えてたものが決壊して爆笑する。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「やっぱりだよ、あれじゃあ料理のやり方を仕込まなきゃいけない」 「あはは、は……おなかいたい……うん、きちんと教えてやった方がいいわ絶対、うん、確実に」 笑いすぎて涙が出た叢雲は手で涙を拭う。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「そういえば、叢雲からは貰ってないな」 私は叢雲に催促をする、と言っても冗談半分であり、用意するのは確実だから、期待してると言うニュアンスでしかない。叢雲のように気心が知れた相手だからこそ言える言葉だ。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

すると、急に叢雲の顔が赤くなる。 「あー、えーっと……仕事が終わったら部屋でね？と言うか、ほ、ほら仕事中じゃない！早く仕事済ませるわよ！」 真っ赤な顔で怒鳴りつけ話題を逸らす叢雲、それもそうだと私は思い、また、デスクワークに励むのであった。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

デスクワークが終わった後、夜の鎮守府で私は困惑している。資材庫に巨大なプレゼントボックスが何者かの手で運ばれてたというのだ。私は今、そのボックスの中身を調べてる。 「艦娘からのチョコ、か」 私は同じく送られてきたカードの内容を確認する。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

どうにもこれは、艦娘の作ったボーキサイト入りのチョコという。しかし人間は金属を食べれない、多分、そしてこの大きさはかなりのものである。よじ登って上から開けた所、表面はチョコレートであるのは確認できた、だとすれば食べれるのだろうか？ #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

私はボックスを閉じ、流石に考え込む、誰が犯人なのだ、これは。 考える。 考える。 考える。 一人だけやりかねない奴の顔が浮かんだ。 「でっかいね、これ」 ボックスの上に、やりかねない奴が乗っかっていた。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

暁型駆逐艦、雷のような何か。 今日の分の仕事は終えてる為、私服姿になっている。 少年らしいショートパンツと、ラフなランニングシャツの季節外れな恰好、その左肩にはDD-107と刻印されている。 #地鎮

白金桜花 @YamanekoOuka

わけのわからない刻印、他の雷にはないらしいが、恐らくは何かのエラーでそうなったのだろうと、私は考える。 「君がやったんじゃないのか？」 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「ううん、私は何もやってないよ、多分これ、この鎮守府全体の艦娘に無意識下でアンケートを取った結果、提督が求めるものを統計した結果よ」 「それがこのチョコかい？」 「うん、ちょっと開けるよ、いい？」 そう言って雷がストンと箱から降りる。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

次の瞬間、ボックスはサイコロが開かれるように前後左右の面にそって開かれ、残った上の蓋もストンと落ち、中身がむき出しになる。 箱の中にあったのはチョコレート仕立てのハート型のオブジェだ。 雷はどこからかスプーンを取り出し、掠めとり口に入れる。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「甘いミルクチョコね、チョコ自体は提督も食べれるわ」 そう言いながら雷はまた口に入れ、私に近づき、そして。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

口づけをして、チョコを流し込む。 柔らかな舌が舌に触れていた。 華奢な身体が服の上から触れていた。 柔らかな唇の感触があった。 甘いチョコの、味がした。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

私は動転し、彼女を突き飛ばす。 「きゃっ」 突き飛ばされながらもさっと受け身を取る雷。 「すまない、びっくりしてね……」 私は反射的に彼女に謝罪する。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「ううん、別にいいよ、キスできたし」 にっこりと笑う雷、このキスで何か仕込まれたのでないかと、嫌な気分になる。 或いは、何も仕込んでいなくても、その言葉で不信感を与えられるという彼女の策謀なのか。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

彼女は接続なんてしなくても人を操れる。 もっと単純に、振る舞いや言葉で『かたち』を造り、誘導できる。 「別にキス以上の事でも、望めばいつでもやっていいのよ、司令官」 「深い沼に自分から溺れたくはないさ」 「もう沼に嵌ってるわよ？」 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「君の沼よりはマシだよ」 「そう、でも、あの人は司令官が考えてるような人じゃないよ？司令官と同じぐらい闇が深いもの」 「似た者同士、結構じゃないか」 私は断言する、彼女の言葉に聞き入れないよう、流すように、取りこまれないように。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「そう」 雷はあっさりと話題を切り捨てる。 取りこめなければ、悪魔はドライに誘惑を止める。 「けど、このチョコレートどうしよう、二人で食べたら糖尿になるわよね？」 雷が、また口を開いた。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「じゃあ、資材倉庫でチョコレートパーティーだ、決定、私だけじゃ食べられない」 「それが一番ね。でもこの大きさだとチョコレート地獄になっちゃいそう」 雷がチョコレートを見上げる、私も見上げると、その大きさは大体４ｍぐらいはあった。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

そしてその日の夜はチョコレートパーティーと化す。 テーブルや椅子を置いて、チョコレートを削って食べる。 大和がアイスを造り、チョコを上に乗せみんなに食べさせる夜のパーティーだ。 チョコがどんどん削られ、中から資材入りのカプセルが露出すると歓声が沸き立つ。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

そうしてパーティーを終え、私は今私室に居る。 ベッドに座り、叢雲が来るのを待つ。 正直疲れたが、彼女のチョコを貰うのは礼儀であり、義務だ。 そう考えてるとコンコン、と扉がノックされる。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「入っていいよ」 私がノックに返答すると、扉が開かれる、入ってきたのは叢雲だ。 それも結構大きなビニール袋を手に持ち、中には同じホワイトチョコが大量に入ってる。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

「これは？」 まさか、これが私に渡すチョコなのだろうかと考える。 「えーっと、ほら、体にチョコかけるやつあるじゃない、あれやろうと思ったけど、今日いっぱい食べちゃったから……その、ね？」 叢雲はもじもじとしながら私に弁明をする。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

その様子がいじらしく、私は叢雲の手を掴み、ベッドに引き寄せる。 「あ……」 そのまま唇を重ね、舌を絡めあう。 バレンタインプレゼントは君だ、と言う洒落た言葉を思いつく。 #地獄鎮守府の日常

白金桜花 @YamanekoOuka

だがあまりにもこっぱずかしく陳腐で、むしろ照れ隠しにぶん殴られそうだと思い口に出すのを辞め、彼女をベッドにそのまま押し倒す。 そしてストッキングを脱がし、上着を脱がす。すると服の下には赤と金色のラインのリボンを体に下着代わりに撒きつけてる、彼女の裸体があった。 #地獄鎮守府の日常