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白金桜花 @YamanekoOuka
やってしまった。そう私は疲労感とともに感じる。バレンタイン、女が男にチョコを渡す日、だが、男が女にチョコを渡してはいけないという法律はどこにもない。故に、私は部下の艦娘全員分の小さなチョコを作ろうとしたのだ。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
結論からすると、それは上手く行った。料理は得意だ、昔は野営するとき、自分の手で簡単な料理を作って飢えをしのいだものだから。だが、作る量が途方もなかった。百人分である、百人分の小チョコを作ったのである。百人分のチョコを溶かし、型に流し、トッピングを加える。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
シンプルだがライン工に似た行為、その作業は力作業に近く、やり終えた私は提督からのプレゼント配布ということで配布を那珂に任せ、廊下のベンチに座っていた。廊下の窓からは香港の曇天が見える、ここは曇りが多い、昔は違ったらしいが、今はこれだ。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
ふと、一人の少女が立ち寄り、私の顔を覗き込む。 不知火だ。 「大丈夫ですか、司令官」 「ちょっとチョコ作りすぎた」 私は彼女に強がらず、本音を語る。 #地獄鎮守府の日常
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「あれ、一人で作ったのですか?」 「うん、見事に燃え尽きたよ、私は」 「そういう時は本命以外市販品にするべきですよ」 不知火はあきれた顔を浮かべた後、笑顔を造り、突然腰を屈め、私の後ろの壁に手をつけ、顔を近づける。 そして、唇を合わせてきた。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
合わせた唇から舌を絡み合わせる、熱烈なキス。これでは私が女のようだ、そう思った私は積極的に舌を絡み合わせながら、今度は抱き寄せる。裸なら対面座位のような、そんな大勢で抱き合いながら、舌を絡み合わせる。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
誰かが来るかもしれないという興奮が私の脳裏を支配し、興奮と恐怖に包まれる。だがディープキスというのは意外と疲れる、唇を離すと、普段のクールな様子とは違う、彼女の惚けた顔と、その柔らかい吐息が頬に伝った。 #地獄鎮守府の日常
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抱き合った状態、不知火の生の太股が私の足に触れた状態から、彼女を隣に座らせる。 彼女は寡黙ではあるが積極的な性格で、キスを好む。だが積極性が強すぎる為か、時たまに私を翻弄する。 逆に言えば、依存する場所としては最適なのだが。 #地獄鎮守府の日常
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「プレゼントの一つ目は終わりました……どうぞ、これが二つめのプレゼントです」 何食わぬ顔で不知火は雑な包みの箱を渡す。 「口移しで渡すというのも考えましたけど、こちらのほうが好みかと思いまして、キスとチョコを別々に分けました」 #地獄鎮守府の日常
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「ならいきなりキスは静かな場所でほしかったな、ほかの子に見られたらきまづい」 「そういう要素もチョコレートと同じでいいデコレーションですよ。それに、特に大鳳には見せ付けてあげたいですし。ええ、彼女には……」 にやりと不知火は笑顔を浮かべる。 #地獄鎮守府の日常
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彼女は何故か大鳳を敵視している、それについて私は本人に聞いてはいない。ただ叢雲に相談をしたら、彼女は私に出会った後、第二の人生を幸せに満喫してる、依存をしてる、大鳳もまた同じで、彼女と大鳳の違いはその好意が素直に出るかどうかの違いでしかないそうだ。 #地獄鎮守府の日常
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同族嫌悪、互いの居場所争い、大鳳のアプローチも積極的だが、彼女は私にとっては娘みたいなものだと感じてるが、それを不知火にも大鳳にもどちらに言ってもろくな未来は見えない。 #地獄鎮守府の日常
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「そろそろ箱、開けてみて下さい」 そう不知火に急かされ、雑に梱包された包みを開ける。中には一枚のハート型のチョコレートがあった。ホワイトチョコで上から文字を何か書こうとしたけど訂正した跡が伺え、彼女の不器用な面が感じ取られた。 #地獄鎮守府の日常
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「ここで食べてもいいかな」 「はい、お願いします」 そう言いながら不知火は鞄にあった水筒からお茶をカップに淹れ、私に手渡す。この手の甘物には茶が相性がいい、私は前に語っていたことを思い出す。甘味のくどさが茶で中和されるのだ。 #地獄鎮守府の日常
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そして、私はチョコを一口食べる。ホワイトチョコのとろける甘味がまず来て、次はビターチョコの苦いけど、確実に甘い、チョコの味がした。 「どうですか」 不知火が私に問う。この場合素直に「おいしいよ」って言っても嘘くさい、なら私はそっと隣に居る彼女にキスをする。 #地獄鎮守府の日常
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「んっ……」 唇を話すと、顔を紅潮させた不知火はぷいっと私から顔を逸らす。自分から攻めるのは得意だが、受けるのは苦手と言うのは、ある種似た物同士なのかもしれない。 「……ありがとうございます」 そう、不知火は不器用に礼を述べた。 #地獄鎮守府の日常
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こうして不知火と蜜のように甘い一時を楽しんだ後、遠征に向かうのを見送り。その後何個かチョコを貰った後私は執務室で様々な報告書に目を通していた。 「3‐4海域もきついわね、もっと火力のある艦が欲しい所だけど」 私の秘書艦をやる叢雲が語る。 #地獄鎮守府の日常
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「雷巡を育成するのならその時間を攻略に回した方がいいさ。第一、あれは軟すぎる、あれなら空母の方が有用だ」 「確かにね……大鳳が育てば話は変わるのだけど、あと通常陣形についてだけど、短縦陣にしない?複縦陣だと雷撃の効果が薄いのよ」 「そこら編は考慮しとくよ」 #地獄鎮守府の日常
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「長期化しなければいいけど」 「全くだ」 私はそう言い捨てた。 提督である以上、ある程度危険な海域に艦娘を出し、深海棲艦の巣を潰さなくてはいけない。 海域には大抵深海棲艦が潜む<中枢>があり、そこを潰す事である程度生産ペースを落とせる。 #地獄鎮守府の日常
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これを各地の鎮守府が一丸となって行っているが、敵の侵攻ペースを落とす程度の焼け石に水程度でしかない。 「あ、そう言えば……アンタのチョコ、美味しかったわよ」 恥じらいを混ぜた顔で、叢雲が私に言う。彼女は仕事中はきつく、世話焼き女房に近い。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
オフの時はそうではなく、割と普通の少女、と言った所なのだが。 「ああ、ありがとう、結構気合い入れたからね」 「流石に百人分一人でやるのは気合い入れ過ぎよ、全く……それで、貰った数は?」 #地獄鎮守府の日常
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「不知火から一つ、金剛からも高そうな市販品を貰ったよ」 私は正直に言う。彼女は愛人に寛容だ、彼女曰く、何時か自分が死んでしまった時、縋れるものは増やした方がいいという哲学があるため、許容している。その言葉はどこか重みを感じ、私もそれに答えてはいる。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
私をこの鎮守府の制御装置と考えるなら、叢雲は戦闘員である以上に、それがストレスで崩壊しないようメンテナンスをする整備員なのだろう。不知火もまた同じだ、原始的な愛情のぶつけ合いが、鎮守府自体を円滑にするメンテナンスとしての性質を持っている。 #地獄鎮守府の日常
白金桜花 @YamanekoOuka
「大鳳は?」 「お湯をチョコに鎔かして謝ったよ」 予想通りの結果である、彼女はカレー以外の料理が苦手だ。そもそもカレーの作り方は野菜の皮を剥き切って肉と一緒に痛めて煮込んでルゥを入れるだけだ。 #地獄鎮守府の日常
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