二日目、夜の出来事 - 異世界奇譚婚礼祭

2014/04/23から2014/04/25までの、王子王女殿下方の記録です。
1
前へ 1 ・・ 20 21
ニルファタ @Nirfata

「んん……」 舌で粘膜を撫でられると、角に触れられたのと似た痺れが走った。逃れたいわけでなくとも、大きく震える。私が私でなくなりそうで、怖くなる。それでも、離れない。手は背中に縋って。 呼吸が乱れ、心臓が跳ねる。足りない酸素を求めて、口を開く。塞がれる。深く、近く。もっと、狭く。

2014-04-25 21:46:58
ジェルト @jeltferluo

蜜の味の、唾液が、絡む。逃がさない。私を捕らえた檻は、許してはくれない。呼吸が、廊下に音を鳴らす。求め合う声が、視線が、熱が、絡めた舌に沿って流れていく。離れる。糸を引く。紅玉が、恍惚に燃えていた。 「……迎えに来た」 囁くような、声。 「俺は、其方を迎えに来たのだ。ニルファタ」

2014-04-25 22:03:10
ニルファタ @Nirfata

甘い蜜に溺れて、藻掻いている。逃げられない。逃げたいわけじゃない。許されない。許してほしいわけじゃない。 ぞわぞわと皮膚の下を這いまわる痺れに、考える力が奪われる。離れて、その波が引いても、頭の芯がぼうっとしたまま。炎のように燃える紅を映して、緑が蕩ける。

2014-04-25 23:24:41
ニルファタ @Nirfata

「……連れて、行って」 どこへでも、行こう。其方が誘ってくれるなら。

2014-04-25 23:24:45
ジェルト @jeltferluo

視線が、融け合う。吐息に火が点(とも)る。熾き火のように熱くなった肌に、言葉が、転がる。それ以上に、瞳が、答えていた。 「……やっと、連れ出せた」 もう一度、抱き締めた。それを、答えとした。扉の外。一歩も動けぬまま、何処へも行かぬまま。婚礼は、今此処に成る。夜が滔々と更けていく。

2014-04-25 23:39:58
ジェルト @jeltferluo

きゅい、と。何かが鳴く声が、漸く聞こえた。 「……そう言えば、リェンは、何と言っていた?」 繋いだ、手。 「……いや、言いたくない事ならば、言わなくても良い。明日の昼にでも、直接問い詰めるさ」 それを、離す事も無いまま。 王子は、夜が明けるまで、王女が眠れるまで、ただ、傍に居た。

2014-04-25 23:44:50
ジェルト @jeltferluo

「……これを、俺は知っているぞ。知らなかったが、今、理解した」 それは、譫言(うわごと)であるのか、睦言(むつごと)であるのか。 「――ニルファタ。俺は、こんな些細な事で、嫉妬しているのだ。俺の剣に触れるなと、有りもしない伸ばされた手に、嫉妬している」 夜が、直に明けてゆく。

2014-04-25 23:47:36
リェン @lyenrow

きゅい。逢瀬の邪魔をしてはならぬ。フアンは使命感に燃えていた。一言のみの文を抱えたまま、天井に張り付くように隠れるフリをしていた。 ――うっかり鳴き声をあげてしまい、しょんぼりと項垂れたような声をあげたのはまた、別の話で。

2014-04-25 23:59:42
前へ 1 ・・ 20 21