ニチョーム・ウォー……ビギニング #3
一時ネオカブキチョ・エリアを併呑寸前にまで拡大したドクロスケルトンウォリアー・クランは、当初下部組織であったこのデッドフェニックス・クランによってゲコクジョされ、斬首粛清されて根絶やしとなった。そんなデッドフェニックス・クランの冷酷非道の筆頭が、オヤブンのミロコ・ウノ自身だ。20
2014-05-02 00:21:51抗争においてはしばしばこのミロコ自身が先陣を切り、鬼神めいた二刀流のカラテで、敵対ヤクザを斬って斬って斬りまくるのだという。背中に双頭フェニックスの刺青を入れ、自らをエンプレス(女帝)と名乗るその胆力と野心は、けっして虚仮威しからくるものではない。 21
2014-05-02 00:29:41ニチョーム自治会はネオカブキチョの群雄割拠ヤクザクラン群と注意深く調停をやりとりし、相互不干渉の姿勢を貫いてきた。それはデッドフェニックス・クランとて例外ではない。では、ニチョーム自治会無き今、その野心の矛先は? 22
2014-05-02 00:34:43これまで各クランが手を出してこなかったニチョームを敢えて手中に収める事。それは実際の数字の利益では測れない象徴的な意味合いを持つ。デッドフェニックス・クランとディクテイターの密会。それが示唆する不穏なアルゴリズムは、今こうして息を潜めるヤモトにもごく自然に理解されるのだった。23
2014-05-02 00:40:55「好きにやれ!」ディクテイターの言葉が届く。「アマクダリ傘下に入れば、万事許される。俺の下にな。直々に上と掛け合い、例外的なまでの好条件を引き出してやる。まさにWIN-WIN……お前は実際得難い賢明極まるアマクダリ者を前にしておるんだ。他のアホ共ではそうはいかんぞ?」24
2014-05-02 00:47:48「お墨付きと取って良いのだな?ディクテイター=サン」「ああそうだ、手段は勝手に考えて、お前らで綺麗にしろ。未練がましいカスがニチョームにいまだ蔓延っている!如何せん傷を舐め合うコミュニティの粘着汚れがしつこく残ってやがるし、無駄に腕が立つニンジャもいる。だが、問題ないな?」25
2014-05-02 00:53:57「問題?ハ!」エンプレスは笑った。「貴殿、焦りがあるな。見えるぞよ。ニチョームの件、"上"とやらにせっつかれておろう」「痛くもない腹を探られるのは実際不快!」ディクテイターが声を荒らげた。「ニチョームの土着組織は段階を踏んで解体する。自治会解体も予定通り。段階だ、段階!」26
2014-05-02 01:03:44「……まあよいわ。どちらにせよ、貴殿の望みには叶うであろう」エンプレスが言った。「肝に命じよ、ディクテイター=サン。これからかわす盃は、恭順のしるしではないぞえ」「ブルシット!ニチョームが欲しくばもうちと殊勝にしろ、エンプレス=サン」だが、ディクテイターは盃を差し出した。27
2014-05-02 01:12:36ヤモトは歯を食いしばった。こういう事だ。こういう事なのだ。だから、あんな薬物が。あんなヤクザ達が、ニチョームに!……その時、「ゴーメン」それまで沈黙していたもう一人が立ち上がり、ショウジ戸を引き開けたのである。「会話中だぞ!躾のなっとらん犬だなァ!」ディクテイターが罵った。28
2014-05-02 01:20:40ヤモトは凍りついた。室外へ出て縁側に立ち、長い前髪を払いのけたのは……装束の上に着流しを羽織ったそのニンジャは、ジュクレンシャである! 29
2014-05-02 01:25:44「……まあよいわ。どちらにせよ、貴殿の望みには叶うであろう」エンプレスが言った。「肝に命じよ、ディクテイター=サン。これからかわす盃は、恭順のしるしではないぞえ」「ブルシット!ニチョームが欲しくばもうちと殊勝にしろ、エンプレス=サン」だが、ディクテイターは盃を差し出した。27
2014-05-03 21:45:55ヤモトは歯を食いしばった。こういう事だ。こういう事なのだ。だから、あんな薬物が。あんなヤクザ達が、ニチョームに!……その時、「ゴーメン」それまで沈黙していたもう一人が立ち上がり、ショウジ戸を引き開けたのである。「会話中だぞ!躾のなっとらん犬だなァ!」ディクテイターが罵った。28
2014-05-03 21:49:35ヤモトは凍りついた。室外へ出て縁側に立ち、長い前髪を払いのけたのは……装束の上に着流しを羽織ったそのニンジャは、ジュクレンシャである! 29
2014-05-03 21:51:50ヤモトは躊躇わなかった。ジュクレンシャの凝視がヤモトを捉えた瞬間、彼女は既に身を翻し、バンブーを蹴って斜めに跳んでいた。「イヤーッ!」だがその時、斜め上後方からヤモトへ飛びかかる別のニンジャ有り! 30
2014-05-03 21:58:06「イヤーッ!」空中で身をひねったヤモトは後方に回し蹴りを繰り出し、追手の危険な爪攻撃を弾いた。落下しかかる彼女の下方、カモメ状に折られたオリガミが幾つか飛来し、わずか一秒の足場を作った。「イヤーッ!」ヤモトはカモメを蹴り、再び上へと跳ね上がり、茶室からひととびに遠ざかる。 31
2014-05-03 22:01:29「"ヤッター!逃げられた"」ヤモトの右横であざ笑うような声。「……とでも思うたか?小娘!」ヤモトの血中をニンジャアドレナリンが駆け、咄嗟に防御姿勢を取った。「イヤーッ!」「ンアーッ!」ヤモトはクロス腕で敵のアクロバティックな空中回し蹴りを受けた。斜め下に弾かれるヤモト! 32
2014-05-03 22:06:38弾かれた先の地面には、ナムサン、鋭利なタケノコが突き出ている!「来い!」無惨なオブジェとなる寸前、バンブーの間を滑るように数羽のツル・オリガミが旋回して飛来、ヤモトを受け止めて炸裂した。「イヤーッ!」ヤモトは空中でくるくると回転、近くのバンブーを蹴り、再び斜めに跳んだ。 33
2014-05-03 22:10:09「イヤーッ!」追手ニンジャもバンブーを蹴り、ヤモトめがけ斜めに飛来する。「イヤーッ!」繰り出される回転爪攻撃!これに対し、ヤモトはコヅカ・ダガーで応戦した。切り結んだ二者が交錯し、互いにやや離れた落ち葉の上に着地する。ヤモトは呻きをこらえる。脇腹に血が滲んだ。 34
2014-05-03 22:31:45茶室の柔らかな灯りを遠くに、二人のニンジャはオジギをした。「ドーモ。ヤモト・コキです」「ドーモ。テネイシャスです」ニンジャの異常痩身が、装備した爪の危険な長さを強調してみせる。「殺りあうか?それとも鬼ごっこか?」「イヤーッ!」ヤモトは二つのオリガミ・ミサイルを同時に放つ!35
2014-05-03 22:40:39「イヤーッ!」テネイシャスはその場で回転し、飛来したミサイルを一瞬で撃ち落とした。爪とは逆の腕のブレーサーに装着された棘付き鎖分銅である。「ハッハ!鬼ごっこに決まりか」テネイシャスは笑い、身を翻したヤモトの追跡にかかる。 36
2014-05-03 22:45:11「イヤーッ!」跳びながら後方へ散布したオリガミが空中で風車となり、機雷めいてテネイシャスの進行方向に配置される。「イヤーッ!」テネイシャスは横へ鎖分銅を放ち、バンブーに巻きつけ、遠心力をかけて弧を描くように跳んだ。ヤモトはあっという間に背後ワン・インチ距離へ迫った敵に戦く。37
2014-05-03 22:48:55「イヤーッ!」襲いかかる爪!「ンアーッ!」ヤモトの背中を切り裂く!ヤモトは墜落し、着地点でゴロゴロと三連続前転すると、そのまま走ってバンブー林を抜けだした。「イヤーッ!」突き当たるトタン壁を蹴り、そのまま壁を走る。「ハハァー!」二秒後、テネイシャスが同様に林を飛び出し、追う。38
2014-05-03 22:51:43(((大丈夫だ、平気だ)))壁を蹴って着地し、通りを目指しながら、ヤモトは己に言い聞かせる。(((逃げながら斬られても傷は浅い。間合いから遠ざかるからだ)))彼女はニンジャ自律神経で血中に含まれる毒をはかる。幸い、自身のニンジャ耐久力で浄化可能な程度の毒だ。 39
2014-05-03 22:56:37