悪い男に騙されない榛名 外伝『霧が晴れたら』決戦!!九十九島沖海戦 五十鈴覚醒編

負傷の為引いた前衛部隊に代わり突撃を開始した五十鈴と木曾 窮地に立たされたその時、五十鈴はある教えを反芻し・・・?
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五十鈴改 @isuzu_kankore

「さぁて、どこから片付ける?」 指をぽきぽき鳴らしながら、木曾が問う。 「翔鶴さんの蝸牛は浸食爆雷だったはず。それをクラインフィールドで防いできたとなると……もうちょっと削ればいけそうな気はするわね」 「一気に畳みかけるか」「ええ、シンプルにね」「悪くない」 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:03:09
五十鈴改 @isuzu_kankore

「それじゃ……やるか!」 木曾がマントを翻すと、両足、そして右腕にマウントされた魚雷発射管から次々と魚雷を打ち出す。 照準は……自分の目が頼りだ。隻眼になり、距離感と引き換えに水中を見透かせるようになった眼が。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:07:10
五十鈴改 @isuzu_kankore

「そこかぁーっ!」 次々と脱落していく深海棲艦の中に、ひときわ大きな影を見つけ―――躊躇いなく魚雷を撃ち込む。全てヒュウガさん謹製の浸食魚雷を8発。当たれば無事ではすむまい。 …だが、その影はあっさり魚雷に抉られ、粉々になった。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:09:24
五十鈴改 @isuzu_kankore

「ちっ、アクティブデコイか」 本体と同じくナノマテリアルで作ったダミー。肉眼、ソナー、レーダー、全てを欺くことが出来る”霧”ならではの代物だ。 先ほど翔鶴さん達が仕留めたと思ったのは恐らくこれだろう。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:11:00
五十鈴改 @isuzu_kankore

「次、私ね」 木曾の前に出ると、ソナーを張り耳を澄ます。 …深海棲艦8。大型艦4。向こうが撃ってきてくれれば回避して見分けられるのだが。 恐らくこっちの攻撃にカウンター気味に合わせてくるだろう。どうするか。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:26:28
五十鈴改 @isuzu_kankore

「…どうもこうもないか」 ふっと笑うと、機銃を取り出す。 …いや、正確には使うのはその上にマウントされている爆雷だ。 「まずは数を減らす!」 ソナーの音量を絞りながら爆雷を投射、最初の一発は足元に迫っていたカ級に直撃させる。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:30:22
五十鈴改 @isuzu_kankore

背中の艤装から2発目を取り出すと、次に近い場所にいたホ級に打ち込む。水柱を横目に、次の敵に。 こちらも浸食弾頭を利用した爆雷である。直撃すればひとたまりもない。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:33:07
五十鈴改 @isuzu_kankore

十数秒後。 全ての深海棲艦を沈め、大型艦4隻がいるであろう場所を見下ろす。 「木曾、そっちから選んでいいわよ」 「おう、じゃあ俺はそことそこだ」 ソナーのデータは木曾と共有している。2隻づつ目標を定めての同時攻撃。単純だが効果的だ。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:47:21
五十鈴改 @isuzu_kankore

「じゃあ、せーので行くわよ」 「おう、せーの……」 木曾が魚雷、私が爆雷を構えたその時。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:48:11
五十鈴改 @isuzu_kankore

声が響いた。 「「!?」」 私も木曾も一瞬戸惑う。 直後。 「木曾!」 「ああ!」 子供が我を通そうとして放つ敵意。 そんな感じの気配が私達を貫き、一瞬遅れて魚雷の発射気配がする。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:52:07
五十鈴改 @isuzu_kankore

直後、一瞬前に私達がいた位置で浸食兵器特有の爆発が起こる。翔鶴さんはこんなものを喰らったのか。背筋が寒くなる。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:54:39
五十鈴改 @isuzu_kankore

立て続けに魚雷発射音。私達は慌てて海面を走りながら、魚雷や爆雷を撃ち返す。 3つのデコイが本体の身代わりになり消える。残り1隻にはなったが、状況は悪化しているような気もする。 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:58:16
五十鈴改 @isuzu_kankore

「木曾、弾は?」 「1セット、4発だけだな…深海棲艦相手に大盤振る舞いしすぎたか」 「私も4個ぐらいね…でも多分、向こうのクラインフィールドは健在よ」 #霧が晴れたら

2014-05-06 01:59:38
五十鈴改 @isuzu_kankore

「参ったな、神頼みか」 「潜ってサーベルで突く?とったどーって」 「サーベルやるからお前がやってくれ」 軽口をたたきあっている間にも魚雷は次々に襲ってくる。私達は回避し続けながら打開策を考える。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:05:34
五十鈴改 @isuzu_kankore

こういう時、山本提督ならどうする?群狼戦術を破り、後は相手の鎧を引きはがすだけ。だがその手段がない。 こちらにあるのはたった4発の爆雷と、スピード……スピード? #霧が晴れたら

2014-05-06 02:08:36
五十鈴改 @isuzu_kankore

―――その時、突然鮮明なビジョンが浮かんだ。山本提督の姿が。 「いいか五十鈴、スピードはカラテを生み、カラテは攻撃を生む。カラテだ、カラテあるのみ」 それだけ言い残し、消える。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:15:41
五十鈴改 @isuzu_kankore

「カラテ……」 抽象的だったが、今はそれに賭けるしかない。 海を駆けるスピードを上げる。 「あっおい、五十鈴!?」と木曾が驚いた声を掛けるが、気にせずさらに速く動く。 まだだ、もっと速く。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:17:59
五十鈴改 @isuzu_kankore

自分自身と、自分の中の山本提督の声が重なる。 スピードはカラテ!カラテは攻撃を! カラテあるのみ!もっと速く!スピードを! そして、無我夢中で腕を振った。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:19:45
五十鈴改 @isuzu_kankore

―――何かを握っている感触がある。 走りながら目を落とすと、それは爆雷だった。 指の間に、4つ収まっている。 艤装の重みは変わっていない。振り向いてみても、ちゃんと爆雷は置いてある。 ……つまり、これは今、私の手の中で生まれたものだ。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:21:16
五十鈴改 @isuzu_kankore

「これがカラテ……」私は一人ごちた。 スピードがカラテになるとはこういうことか。すんなりと納得する。 同時に、身体に自信があふれてくる。 いける。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:22:07
五十鈴改 @isuzu_kankore

「木曾、ちょっと下がってて」 「…?おい、何する気だ五十鈴」 「いーから。キメさせてあげるから、ちゃんとタイミング見てなさいよ」 「お、おう…」 木曾を下がらせると、私は前傾姿勢を取る。 そして……爆雷を投げながら、さっきと同じスピードで走り始めた。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:24:10
五十鈴改 @isuzu_kankore

「イヤーッ!」 爆雷を投げる時、自然と口からシャウトが飛び出す。 何というか、投げる動作とシャウトが連動している感じだ。 ―普通の爆雷ごときで…!― また声が聞こえた。今度は明らかに苛立っている。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:25:41
五十鈴改 @isuzu_kankore

再び手を翻すと、また同じように指の間に爆雷が4つ収まっている。どうやらこれは通常の爆雷らしい。まあアレは特殊な弾だし当然と言えば当然か。「イヤーッ!」再度投げ落とす。 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:27:00
五十鈴改 @isuzu_kankore

―この…!― 敵も撃ってくるが当たらない。こちらのコースを先読みして撃って来られても、こちらにはその軌跡が何となく分かってしまう。避けながらさらに爆雷を投げる。「イヤーッ!」 #霧が晴れたら

2014-05-06 02:28:08