始まりへ至るまで - 選定のオルディナンス

『選定の儀』が始まるよりも古い記録です。
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キュセル @ozQuseL

暗い室内に、薄緑の光が灯った。部屋には、都合六つの台座がある。その一つ、上方の虚空。薄緑の光が、輪を描き、そして『開いた』。 「――――『次元超越(ロクリミテ)[LoklimitE]』、成功。存在の認証に成功。具現します」 女の声を、切って貼り付け滑らかにしたような声だった。

2014-05-10 20:08:24
キュセル @ozQuseL

蛍火の輪は、文字を形取り、渦巻いていた。それは『魔法陣』に他ならない。虚空に成形された境界を潜り、漆黒の機械が降りて来る。甲高い何かを砕くような音に混ざり、金属が組み合う音が部屋に響き渡る。 「――『換装(アント)[ant]』、『炎(ホムラ)[homla]』。待機状態に入ります」

2014-05-10 20:14:28
キュセル @ozQuseL

薄緑の光が、消える。台座の上には、剣掛台が誂えられていた。かちゃん、と。小さな音を鳴らして、形を変えた金属の塊が、それに収まる。 「認識。キュセルは『選定の儀』に到着しました」 機械仕掛けのフランベルジェ。台座の漆黒の刀身には、余所行きの心算なのか赤いリボンが結び付けられていた。

2014-05-10 20:20:25
ヨモギ @ord_yomogi

ほどなくして今度は黄色い灯火が部屋を照らした。科学の進んだ世界の住人からすればごく低い温度の、――原始の火。 一つの台座の足元に灯ったそれは光の軌跡を残しながらゆっくりと這い上がる。 「ひ、ふ、み、」

2014-05-11 00:07:19
ヨモギ @ord_yomogi

「ふるへ」 光が台座の上で結ばれる 「ゆらゆらと」 この場を見ているものがいたならこう言ったであろう。空間が《斬》れていた、と。 「ふるへ」 引き裂かれた空間から一振りの青銅の矛が現れる。

2014-05-11 00:07:32
ヨモギ @ord_yomogi

からん。乾いた金属音が灯火を掻き消して、緑青身に纏う暴威がその身を座に横たえた。 「かしこみかしこみもうす……なんちゃって」 場の空気の一切に縛られないかのように戯けてみせた少女の声はそれきり止んで、空間には再び静寂が戻る。 (転)

2014-05-11 00:07:44
ニゲルニグ @niger_nig

くらやみが揺らめいたように見えた。 ついでジャラリ、と重い鎖の鳴る音。 「ああ、もう次か。そうか。」 億劫だと言わんばかりの声色が響く。

2014-05-11 00:28:53
ニゲルニグ @niger_nig

ジャラ、ジャラジャラ、ジャラ、鎖の音が大きくなり、 ジャリ。 いつしか一つの台座には巨大な斧が一つ立てかけられ。 そしてその台座ごと、大きな鳥籠がその斧を包んでいた。 よく見ることが出来たのであれば、鳥籠は鎖で出来ているのが分かっただろう。

2014-05-11 00:33:38
ニゲルニグ @niger_nig

しかし灯りなど一切無く、また、全てが真っ暗闇を固めたかのような籠の中の斧は、音だけを響かせて、 「次のご主人はどんなだろうな?」 ひどくくたびれた声で最後にそう呟き。 また、空間には静寂が戻る。

2014-05-11 00:37:47
マキナ(machina) @ord_machina

暗闇に満ちた部屋に宿るは灰色の光、色を失くしたか、闇を薄めたか。

2014-05-11 01:15:25
マキナ(machina) @ord_machina

それは如何なる場から来たのか、或いはまだそこにはないのか。 台座の上には白と黒、そして歯車からなる、槍と見まごう物が鎮座している。 目を凝らして、それが白の弓身にそう黒い弦であると気付かねば、それが弓であるとは分からないだろう。 「はて、さて」 と軽快な愉しむような男の声。

2014-05-11 01:19:02
マキナ(machina) @ord_machina

「選定の舞台が粛々と、選定の儀が粛々と」 カチリ、と音を立て歯車が鳴る。無機の歯が噛みあい回りだす音。 「始まりますな、始まりますか。いかに選び、決断し、先に進むのか」 規則正しく廻る音、淀みなく語られる声。 「願わくばその身に――」 無機の音が声を塗潰し、そして声は消えゆく。

2014-05-11 01:25:34
人間《ディアドラ》 @actSkbz

《星の巡りが、変わったようです》 革張りの表紙に埋め込まれた虹色に輝く宝石が、きらきらと瞬いた。色は移り変わり、鮮やかな色彩を灯す。真白の分厚い表紙。銀の縁取り。宙に浮かぶ一冊の書は、くるりと回転をした。 《――嗚呼、漸く。私(わたくし)と、契約を結べる者が現ると云うのですね》

2014-05-11 03:48:07
人間《ディアドラ》 @actSkbz

機械的な口調ながらも、歓喜に打ち震えるように、書はくるりくるりと廻る。 《星の運命をも物ともせず、私と共に巡りを操るお方(マスター)》 《運命に敗けず、運命を物にし、運命を操りしお方》 女性的な音。決して甘やか過ぎず、涼しさすら感じる声。 《『星廻運命操作支配の書』、参ります》

2014-05-11 03:52:50
人間《ディアドラ》 @actSkbz

《――選定の儀へ》 星々が一層の煌めきを見せて、虹色は瞬く。 捲られた最後の頁。作者の署名は無い。其処に有るのは、契約を交わした者が名を綴る欄のみ。 《廻りを、思うが儘に操る器のあるお方を、求めんと――》 ぷつり。音はそこで途切れ場に残ったのは、ただ静寂と星々の煌めきのみだった。

2014-05-11 03:56:15
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

――動かない、時計があった。人間の背丈を越えるほどに大きな時計。聳える巨大な柱のよう。黄金と白銀とが緻密に組み合わさって。宝石と水晶とが星のごとく端々を飾って。植物の緑と幾つもの花冠を、衣裳のように帯びた柱時計。それは、動かない。短針も長針も、すべてが止まったまま。

2014-05-11 15:02:43
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

まるで聖人の墓標のように、静謐に佇んで。それが――かちり、と動いた。糸のように細い秒針が、前触れもなく時を刻み始めた。ちくたく、チクタク。素早く、正確に。かっちこっち、カッチコッチ。静かに、淑やかに。Tick-Tack。沈黙の中で。

2014-05-11 15:02:48
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

「……さぁ、刻みませ」柱時計から、声が響いた。甘い囁きを思わせるそれは、子どものようで。妖しい響きを思わせるそれは、大人のようで。曖昧な、中性的な声音だった。「今が目覚める、その時だ」マレビトの来訪を覚えて、時計は歓喜していた。停滞の戒めから解放される機会が、巡ってきたためだ。

2014-05-11 15:02:58
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

柱時計は独り、告げる。静かに、愛しげに。覚醒の言葉を。「クリック・クラック・クロック……」<時>は、近い。

2014-05-11 15:03:14
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