アラ･ヤロシンスカヤ 隠された事故報告書『チェルノブイリ極秘』より抜粋

チェルノブイリ極秘 @AYaroshinskaya

ところが、シナリオ通りにはいかなかった。 演壇に「ジトーミル木工」コンビナートの労働者が立ち、区内代表者会議の代表者選挙が、自分たちのところでは行われなかったことを立証する労働集団の声明をいくつか読み上げたのである。

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党オルグと指導者たちは、自分たちの利益を代弁する権限を自分たちで横取りしていたのだ。声明はそうしたことに抗議していた。 　

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　労働者の声明は、集会の分岐点となった。全ての候補者をリストに入れることになった。こうしてジトーミルの労働者の小さな勝利がさらに一つ得られたのだった。ところが、先には工場、大工場、研究所、とくにコルホーズにおける事前運動伝最高権力との困難な、消耗する闘いが待っていた。

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まさにここに、どこにも見られなかったような、強固で不動の土台があったのだ。数十年にわたって絶えず苦しめられてきたコルホーズ農民は、自分の本音を表に出すことを恐れた。

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コルホーズ議長や党書記は、もし私に投票すれば、菜園を耕すための馬は与えない、石炭や薪は運ばない、と自分の奴隷たちを脅した。それは結構よく考えられた手であった。というのは、ソビエトのコルホーズ農民は、自分の主人、つまり議長に完全に従属していたからである。

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切り取り線 @kiri_tori

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それでも、やはりそこでも、つまり奴隷の要塞でも人々は背筋を伸ばして、黙ってはいても毛嫌いされているジャーナリストの候補者を支持したのだ。ましてや彼らの多くが、選挙の事前運動中に『イズヴェスチヤ』に載った私の二つ目の論文「割られたガラスのまわりを素足で」を読んでからはそうであった。

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私はその中で、コルホーズの議長ガリツキーによって追放された農婦ナボルスカヤの擁護を自分の新聞でいかに試みたかについて書いた。その後、新聞にはジャーナリスト､イリチェンコが登場し社会的注文を果たした。

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　全州がこれを読んだ。人々はコルホーズの仕組みをよく知っていて、頑固で堅実な彼女を、働いていた温室の門の外へ追っ払ったコルホーズ議長を擁護したイリチェンコの弁護記事で、全てを理解したのである。

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もちろん、自分が選挙で勝利するとは確信していなかった。不安材料が一つあったのである。つまり私たちは誰もが替え玉投票を懸念していたのである。というのは投票所が多く、党書記､金のためなら何でもするという労働組合のリーダー､村ソビエト議長､さまざまな色合いの党運動家が多いからである。

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しかし、我々の方が数が多かった。労働者たちはそれぞれの区域に監視員を配した。

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確かに、もし中央紙に被災地区における健康状態や汚染レベルについての秘密データが発表されていれば、即座にこの問題に全ての人々の関心を引き付ける、すばらしい可能性が開けたことだろう。　ところが発表はなかった。

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そこで私は、放射能重点監視区域で私が知り得た全てのことを情報公開するため、可能な限り選挙の事前運動を利用することにした。一般的に難しい事情の中で、私は二カ月の間にじつにいろいろな集団で約１６０回の懇談会をもった。

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至るところで私は、高度な国家レベルでの嘘について、今後の黙殺の危険性について、州の北部､つまり放射能に汚染されたウクライナのキエフ州でも､チェルニゴフ州でも起こっていることがいかにでたらめに報道されているかについて語った。白ロシアについても語った。

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当時私は、ロシアのいくつかの州や国のほかの地域も汚染の輪にあることはまだ知らなかった。全てこれらのことは後になって、私がソ連邦人民代議員になって、秘密の記録を入手してからわかったのであった。 しかし、そのことは後にしよう。

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　それからこの時、つまり１９８９年春に『ラジェンシカ･ジトーミルシチ』に掲載された私の正式の公約からも、チェルノブイリでの爆発の影響についての若干の文章が、その号の用心深い担当者ゴロヴァーノワによってカットされてしまうということがあった。

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１９８９年３月１日に新聞に掲載された通りに自分の公約のこの部分を引用して起きたい。【いまなお住民から入念に隠されているナロジチ地区における放射能汚染の影響を公表すべきである。汚染特別厳重監視区域と隣接した村がたくさんある。…

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放射能に汚染された場所で新しい建設工事が積極的に行われており、その費用はすでに五億ルーブリにのぼっている。建設工事の妥当性の問題を真剣に追求しなければならない】。厳重管理区域と隣り合った村の増加について、またナロヂチ出身の子どもの健康の悪化についての数字が原文から削除されいた。

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　我々の新聞におけるグラースノスチとはこんなものだったのである。その当時には。

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　私は自分の代議員資格認定書を何よりもまず、爆発とその結果について国家の官僚たちが腐敗したジャーナリストたちの助けを借りながら振りまいた嘘を、ソ連邦人民代議員大会のモスクワの演壇から暴くために、…

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また秘密資料を入手し、それらを情報公開して、騙されている人たちを助けるために使おうと決意した。そう、私は嘘はとてつもなく大きいと疑っていた。 しかし、後にそれに触れた時、私はその大きさに恐ろしくなった。

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＜第一部 わが内なるチェルノブイリ ４．ジトーミルでの政治戦争＞より抜粋 了 章 扉写真「人民代議員大会ヤロシンスカヤの中傷者よ恥を知れ！」 秘密議事録１号（89年4月29日）最初の議事録事故状況報告や化学部隊の派遣問題、政府発表確認 pic.twitter.com/QEhT7EE4PM

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＜第一部 わが内なるチェルノブイリ ５．議会での虚しい叫び声＞ 　１９８９年５月２５日、ソ連邦人民代議員大会の中でも第一回大会は、大きな希望に溢れていた。そこでは全体主義からの救済、人民代議員の一人が「若い娘」と呼んだ民主主義、グラースノスチのより高度な局面への飛躍が見られた。