《IF邂逅》二つの船

くぐさん(@hakuzia)と結奈(@a_yuina)の創作っ子がエンカウントしました
0
前へ 1 ・・ 3 4
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

緑色の少女の姿を見つめる。本当に綺麗で可愛らしい形をした少女だ。男は息を吸った。 「俺は『傲慢』!『楽観』の『傲慢』だ!」 そして男が叫んだのは、男自身の『役割』であった。いつ与えられたのか、誰に与えられたのか、明確なことは判然としない。しかし、男はその『役割』を負っていた。

2014-05-26 00:54:37
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「もしまた会う機会があれば、『贖罪』!俺はお前の友人として会いたい!だが、お前が敵であったその時は!俺は、『傲慢』として——」 ラピスラズリの瞳は、鋭い刃の如く輝き。その表情は氷の如き冷たさで。先程までの男と同じであるとは思えぬほど凍えた空気を纏い、男は。 「——お前を『貰う』」

2014-05-26 00:54:53
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

凄絶に、笑った。 「それじゃあな、お嬢さん!元気でやれよー!お嬢さんのお仲間にも宜しく言っといてくれ!あ、土産……になりそうなもんは今はねえか……世話んなったのに、悪いな!」 しかし、それもほんの一瞬で。それが嘘であったかのように明るく朗らかに笑って、男は少女に手を振った。

2014-05-26 00:56:01
紺青ものえ @almiyy

「楽観、の傲慢……」 叫ばれた言葉、含まれる言葉を反芻する。役割として聞くことのなかった『傲慢』は、目の前の男の役割なのだろう。少女の『贖罪』と同じで違う。 鋭く冷えたその目を見返す。別人のそれ。少女はその冷えにも変わらないまま。

2014-05-26 15:26:32
紺青ものえ @almiyy

「貴方が海を荒らさない限り、敵として見えることは無いでしょう」 一息。 「敵として対峙した者に『贖罪』を掲げど、貴方に差し上げるものはない」 笑みを深くし、首を軽く傾けた。その笑みに含まれているのは真っ直ぐで計り知れない感情の色彩のみ。 「楽しいお時間ありがとうございました」

2014-05-26 15:26:35
紺青ものえ @almiyy

お土産だなんて苦笑し、右手を振った。そして両手を祈りるように軽く組み、 「良い船旅を。貴方に海神様の深い慈悲と加護がありますように」 小さく呟いた。 この広い海で再び会うことがあるのか、それは海神様にしかわからない。しかし、その時は、敵としてではない方がいい、と思い。

2014-05-26 15:26:41
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

凛として麗しく、それでいて可愛らしい。男はそんな少女の姿を満足そうに見つめて頷いて、背を向けた。 「欲しくなるねぇ」 呟きは誰にも届かないほど小さく。船員から受け取ったマントを羽織り直し、銃を懐に。突き立ったままの剣を引き抜き、それを掲げて叫ぶ。 「船を動かせ!」

2014-05-27 15:30:18
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

鋭く響く命令に、船内は俄かに慌ただしくなる。少しづつ少女が乗っていた船から遠ざかり、航海は再開される。 「さっさと仕事済ませて帰んぞ!気張ってけよお前ら!」 応と答える船員たちの声。それに満面の笑みを浮かべると、小さくなりゆく少女の船を振り返って呟いた。 「良い船旅を、お嬢さん」

2014-05-27 15:30:23
紺青ものえ @almiyy

外していたマントを羽織った姿を一瞥し、目を閉じ、離れる船と男を再び移すことなく、後ろで並んでいた船員たちを振り返った。緊張を残した顔を見てふっと笑い、 「このまま、予定していた航路に戻ります。お待たせして申し訳ないです」 軽く頭を下げれば、船員たちの緊張もゆっくりではあるが解けた

2014-05-28 18:34:14
紺青ものえ @almiyy

だいぶ心配をかけてしまったようだった。心の中で謝罪し、軋みと共に動き出した船、その大きな帆を見上げた。澄んだ空に白いそれ。緑眼をやんわりと細めて、ひとつ、空を飛ぶ見慣れた鳥の姿を認め、笑う。 遠い場所から飛ばされた鳩。何かの伝言を携え、此処へ来た。恐らくは、と遣わした者を予想。

2014-05-28 18:34:17
紺青ものえ @almiyy

いい事か、悪いことか。まずは確かめねば。そう思い、少女は遠く離れて波間に消えゆく、小さな小さな船影を見た。 「さようなら、よい日々を」 差し出した手に留まる鳩は、くるっぽーと鳴いて運んだ文でこの船の、そして少女のこれからを伝えた。

2014-05-28 18:35:14
前へ 1 ・・ 3 4