モーサイダー!~Second Lap~Episode I
- IngaSakimori
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「で、志智。どうなんです?」 「どうって何がだよ」 「大型免許ですわ。取るんですね? わたくしがすすめるんですからね」 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:33:21「何でお前に言われたら取らなきゃならないのかは知らないけど……まあ、そうだな。 興味はあるけどな。加速とか凄いんだろうな……」 ━━振り返ってみれば。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:33:30(亞璃須のXR650Rは当然として……あの『深紫(ディープパープル)のYZF-R1』も大型バイクだよな……) もう1年近く前だというのに、その後ろ姿は。 そして、尋常でないブレーキングと加速力は、志智の心に強烈な印象を残している。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:35:17(大型バイクに乗れば、俺でもああいう走りができるのかな……?) 漠然とそんなことを思う。 けれど、大型バイクだからといって、何か決定的に変わるのだろうか、とも考える。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:35:24(バイクなんて、腕だって言うじゃないか。 そもそも、ただ加速が速いっていうなら……) 4気筒も2stも追いかけた。400ccのマシンと競ったことも、一度ではない。 そのいずれもが、VT250スパーダより加速力は勝っていた。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:35:58なにより、志智は日原院亞璃須という一流の技量を持ったライダーがあやつる、XR650Rの性能を知っている。 その爆発的な加速力を、しかし大型バイクだからといって、完全無欠ではないことも。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:36:22「………………まあ」 けれどあくまで━━それは実際に乗ったことのない自分の感覚だという事実も。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:36:34「春休みにずいぶん働いて、バイト代は結構入ったし……大型免許、取ってみるのも悪くないかな」 他人事のように呟きつつも、既に志智の心には。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:36:44(とにかく乗ってみたいよな……大型二輪) そして、その性能を味わってみたいという期待感が芽生えていたのだった。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:36:53「さてと、手続きはこれで終わりか……あっさりしたもんだな」 念のためにと用意してきた住民票は、すでに免許証があるならいらないと言われ、写真撮影機までしっかり完備されている。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:39:56教習待ちのサロンには、フリードリンクコーナーがあり、係員の説明もやたらと丁寧で、まるでお客様になったような気分である。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:40:09(いたれりつくせり、ってのはこういうことかな……) 教習コースにあふれる二輪車を、なぜか腕組み仁王立ちで見つめている亞璃須の背中をながめつつ、志智は思った。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:40:21(でもまあ、教習所って結構経営とか厳しくて、ちょっと前にもこの辺りで一つ潰れたっていうもんな……印象よくしないといけないのかな) そんなことを考えながら、所内を見て回っていた志智が、廊下の角を曲がったそのとき。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:40:32「……きゃっ!!」 「おっと」 胸元に重量感のある何かがぶつかった。志智はすぐにそれが人間の頭だということに気づく。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:40:45「いったぁ~!」 「悪いな、大丈夫か」 見下ろす先には、栗色の尻尾があった。 少女━━と言ってもぎりぎり通じるであろう、やや幼い顔立ちの女性が、額をおさえてぷるぷると震えている。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:40:59「い、いえっ、あたしも前を見てなかったですから……あっ」 「書類、落ちてるぜ」 足下に転がった数枚の紙を志智がひろうと、そこには顔写真や名前が記されている。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:41:09志智自身も先ほど同じものを渡されたばかりだった。 この後のオリエンテーションが終わったら、教習所へあずけることになってる個人用のファイルである。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:42:02「す、すいませんっ」 「いや、別に。それじゃ」 「あ、あのっ!」 足早に立ち去ろうとする志智を、ポニーテールの女性はどこか切羽詰まった声で呼び止めた。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:42:48「その格好……えっと、あなたも二輪の教習ですかっ?」 「ああ、今日入ったばかりだけど……大型二輪だよ」 「わっ、それじゃあこれからオリエンテーションですよね? あたしも大型二輪なんです!!」 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:43:08「へえ、そうなのか。じゃあ仲間ってわけだな」 志智はなんとなくそう口にしただけだった。特別な興味を目の前の彼女にもったわけでもなかった。 だが、栗色のポニーテールはやたらとうれしそうに揺れている。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:44:37「はいっ、おんなじ仲間ですねっ! あたし、瀬尚玲矢(せなお れや)っていいます。よろしくお願いしますね!!」 「………………あ、ああ」 その笑顔は、疑問を差し挟む余地なく、快活で。健全で。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:45:31「俺は三鳥栖志智だ。よろしく……って言えばいいのか?」 「はいっ!!」 どこか志智にとっては、戸惑いをもたらすほどのまぶしさだった。 #mor_cy_dar
2014-05-30 21:45:51