ダンス・イン・ザ・ダーク #3 (完)

ニンジャスレイヤー二次創作小説です。 ◇ニンジャが出て殺す◇ #1 http://togetter.com/li/668587 #2 http://togetter.com/li/671239
0
シロ @siro_xx

ニンジャスレイヤーは決断的に駆ける!チェーンを張り巡らされた暗闇のステージへ!「イヤーッ!」飛び蹴りでチェーンを引き千切り、そのままステージに着地!すかさず正面ワンインチ距離にスモーカーが再出現!そして自爆!再びの毒ガス攻撃だ! 19

2014-05-31 16:51:58
シロ @siro_xx

だが我らがニンジャスレイヤーは同じ失敗を繰り返す男ではない!彼は咄嗟に目を閉じ、呼吸を止めて毒ガス攻撃を回避!すぐに灰白色のニンジャが再出現!自爆!回避!再出現!自爆!回避!おお、ゴウランガ!なんたる精密なカラテを応用した平安時代の舞めいた動きか! 20

2014-05-31 16:55:36
シロ @siro_xx

「……何故だ」スモーカーが唸る。何故当たらない?数回はまぐれで回避できたとしても目を閉じたまま回避し続けるのは不可能!更に息を止め続けていれば窒息死することは必至!なのに何故?ニンジャスレイヤーはスモーカーの再出現と自爆の間に僅かなタイムラグがあることを見抜いていたのだ! 21

2014-05-31 17:00:21
シロ @siro_xx

その一瞬のタイムラグで彼は目を開け、次の攻撃タイミングと回避すべき場所を確認していた!それだけではない!毒ガスがステージに溜まり続けないよう自らの動きによって風を起こし、呼吸も確保!「何故だ」そのスモーカーの動揺を見逃すニンジャスレイヤーではない!「イヤーッ!」 22

2014-05-31 17:03:39
シロ @siro_xx

ニンジャスレイヤーは決断的にカラテ演舞し、ステージ上に残る忌々しい毒ガスを排除した!そして暗闇のステージを見渡す!見よ!ステージの奥!舞台袖に蹲る男の姿あり!白い煙の発生源、スモーカー本体!ニンジャスレイヤーは灰白色のニンジャ体の再度の爆発をかわし、本体背後に迫った! 23

2014-05-31 17:07:31
シロ @siro_xx

「見つけたぞ、スモーカー=サン」「……」振り返った男は何も言わず、澱んだ目でフジキドを見上げた。死人めいた皮膚の色、窪んだ眼窩、異常なまでに痩せた肉体。「オヌシ自身も薬物に蝕まれた後か」フジキドは警戒を解かぬまま、口を開いた。まだ殺してはならない。聞くべきことがある。 24

2014-05-31 17:11:30
シロ @siro_xx

「ヤキラ・サカエ=サンを殺したのはオヌシで間違いないな」スモーカーは頷いた。「何故だ」「……」スモーカーは口を僅かに開き、閉じ、それから手を動かして何かを伝えようとした。「……オヌシは喋れないのか」スモーカーは再び頷いた。「なら先程の木偶を出せ。あれは喋れるのだろう」 25

2014-05-31 17:21:13
シロ @siro_xx

スモーカーは僅かに驚いてから、手でわっかを作ってその中に息を吹き込んだ。すると先程よりもずっと小さい……灰白色の子供が現れた。「話をするというのか。この俺と。お前はバンナナ製薬の人間ではないのか」「私はあくまで個人の依頼でヤキラ=サンの行方を探しに来た探偵だ」 26

2014-05-31 17:24:36
シロ @siro_xx

「バンナナ製薬とは無関係なのか」「そうだ」「オヤジを殺したりしないか」「話の内容によってはマッポを呼ばせてもらうが、殺しはせぬ」「……わかった、話す。何故ヤキラ=サンを殺したという話だったか」「そうだ」「あいつはオヤジの忠告を聞かなかった。オヤジを脅して取引させようとした」 27

2014-05-31 17:28:05
シロ @siro_xx

「正当防衛というわけか」「正当防衛だ」スモーカーと灰白色の子供は同時に頷いた。「あいつらは俺が作るクスリを欲しがっていた。俺は人間の死体さえあれば無尽蔵にクスリを作れるからだ。でもオヤジは反対した。オヤジは俺を守ろうとしてくれた。だから俺もオヤジを守った。それだけだ」 28

2014-05-31 17:33:11
シロ @siro_xx

「……嘘は言っておらぬようだな」「嘘をつけるほど俺は賢くない」「オヌシは……」その時だ。どかどかと荒々しい足音と、出入り口の扉が開く音がした。「レミントン=サン!どうしてIRCに応答しない!カシバ部長もお怒りだ!大至急ケジメ……」開いた扉から白い煙が外に漏れた。 29

2014-05-31 17:36:28
シロ @siro_xx

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。オヌシは何者だ、名乗れ!」「アイエッ!?ド、ドーモ、コンパスです」「レミントン」灰白色の子供が呟いた。「さっき銃を乱射したニンジャの名前だ」「カシバ=サンはバンナナ製薬の部長だな。次はオヌシのインタビューだ、コンパス=サン」「アイエッ!?」 30

2014-05-31 17:41:35
シロ @siro_xx

……バンナナ製薬主任のヤキラ・サカエはスモーカーが作る薬物を手に入れるため父親のヤスダ・コオロギを脅迫し、逆にスモーカーに殺された。その後レミントンというバンナナ製薬のニンジャが強盗のふりをして店を襲撃、スモーカーを拉致する計画だったが、たまたまいた別のニンジャに殺された。 31

2014-05-31 17:46:08
シロ @siro_xx

「ということで間違いはないか」血塗れの床に倒れたコンパスの背を踏みつけながらニンジャスレイヤーはジゴクめいた声で言った。「な、ないと思います、アバッ」「ハイクを詠め」「ア、アイエッ!?ハイク!?嫌だまだ死にたくはない!レミントンのバカ!」「イヤーッ!」「サヨナラ!」 32

2014-05-31 17:49:43
シロ @siro_xx

コンパスは爆発四散した。ザンシンしたニンジャスレイヤーはステージ上を見やる。メンポを外した灰白色の若い男が正座していた。「あんたは強いんだな」「……」「オヤジは生きているか」「……よく寝ている」「……よかった」「……」「ならば今のうちに、あんたに頼みたいことがある」 33

2014-05-31 17:53:28
シロ @siro_xx

「――ハッ!?」コオロギは目を覚ました。真っ白なベッドの上だ。「どこだここは」「病院ドスエ」傍らで点滴を交換していた看護士が澱みなく答えた。「病院?病院ナンデ?」「貴方の店があったビルで大規模な爆発事故。奇跡的に助かったの、覚えてないです?」「爆発……?」 35

2014-05-31 17:59:37
シロ @siro_xx

コオロギは病室備え付けのテレビに視線を向けた。「次のニュースドスエ。バンナナ製薬が違法薬物ドリンクを販売しようとしていた問題でドリンク部門部長、カシバ=サンと他数名が逮捕されましたドスエ。また、責任を取ってバンナナ製薬取締役3名がセプク、バンナナ製薬の株は取引停止……」 36

2014-05-31 18:03:29
シロ @siro_xx

……あの後、探偵は調査結果をナンシーに連絡。夜明け前にはバンナナ製薬の一連の違法行為は世間に暴露された。コンパスが提示したIRCログによって一部の社員の独断ではなく会社ぐるみの計画であったことも明らかになり、バンナナ製薬は即座に営業停止処分、倒産も時間の問題となった。 37

2014-05-31 18:07:01
シロ @siro_xx

依頼人トモカ・サカエには仕事上のトラブルに巻き込まれ殺害されたと説明したが、トモカは全てを悟った顔でわかっています、わかっていますと何度も呟いていた。その後の彼女の行方は定かではないが、世間の目を避けてキョートに移住したという噂がある。或いは、夫の後を追って身を投げたとも。 38

2014-05-31 18:10:42
シロ @siro_xx

有毒ガスを吸って丸一日昏倒していたコオロギは実際軽症で、目覚めたその日に退院することができた。「ス、スズナリ!スズナリ!」コオロギはヤガネ・ストリートを全力で走る。あの角を曲がれば店が……。「……そんな」おお、ブッダ。そこにあったのは焼け焦げた建物だった。 39

2014-05-31 18:14:33
シロ @siro_xx

「外して保持」と書かれた黄色いテープを乗り越え、コオロギは中に入った。コンクリート製の階段を下って扉のなくなった店に入ると、そこはもぬけの空であった。テーブルも、カウンターも、ステージも全て燃え尽き、当然彼の息子……スモーカーの姿もなかった。 40

2014-05-31 18:17:58
シロ @siro_xx

「お……おお、スズナリ……!」コオロギは膝から崩れ落ち、両手で顔を覆った。彼はかつて有能なリアルヤクザであり、要領が悪く愚鈍な息子のスズナリを嫌ってさえいた。スズナリは劣等感から薬物に手を出し、間もなく廃人となった。脳が溶け、歯が抜け、言葉を失い、歩けなくなった。 41

2014-05-31 18:22:29
シロ @siro_xx

スズナリは最後の力を振り絞り、憧れであった地下クラブのダンスステージでセプクした。だが何の因果か彼にニンジャソウルが憑依。地縛霊めいた存在と化したスズナリ……スモーカーはステージ上に一人取り残された。全てを知ったコオロギはヤクザを辞め、この地下クラブを買い取ったのだ。 42

2014-05-31 18:25:55
シロ @siro_xx

(すまない……俺はダメなオヤジだ……!せめて少しでもお前に償いたかったのに……お前を守れなかった……!)コオロギは焼け焦げた床を何度も何度も殴りつけた。手に血が滲み始めた頃、彼の手元に、一枚のオリガミメールが落ちた。 43

2014-05-31 18:29:39