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―――足元には『人間』の死体が転がっていた。性別は男。胸部からは、まるで心臓が破裂したかのように『赤』が返り咲いていた。猩々緋 麻也は、その右手に持つルビーのナイフに付着した男の血を、丁寧に死体の服で拭う。右太もも辺りにぶら下がった腰袋へナイフをしまい、辺りを見回した。
2014-06-11 22:03:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼が殺した男は、生まれながらにして魔術を扱うことのできる子供を見世物として生計を立てていた。売り物にされていた子供達は彼の下でペット―――否、家畜同然に扱われていた。彼らに与えられるのは最低限の『餌』だけ。魔術を扱えること、ただそれだけで人間として見做されていなかった。
2014-06-11 22:03:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「…くだらんな。魔術を扱える俺達こそが、人間達の上に立つべき存在だと言うのに―――」吐き捨てるように呟く。先程見つけた鍵を使い、子供達を捕まえている檻を開け放した。これでいい。後のことは、彼ら彼女らが決めることだろう――――彼はその場を後にした。
2014-06-11 22:03:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……やあ」人影は肩越しに振り返り、にやりと微笑んだ。深い青から紫へとグラデーションした短髪が揺れる。「何の用で来たかは、多分わかるよね?」麻也は冷や汗混じりに微笑み返した。「随分速いな。そんなにお前達の『運命』とやらに俺は立ち塞がっているのか」「うーん、まあ、そうなんだけどね」
2014-06-11 22:05:44![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
人影は麻也へ向き直りながらからからと笑った。男とも女とも取れないその声は、雨の中でも麻也の耳へと真っ直ぐに、しかしながら絡みつくように、響いてくる。穏やかに、たゆたうように吐き出されるその語調は、いつものような『勧告』ではない。
2014-06-11 22:05:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「今日はね、君に『強制退去』を言い渡しに来たんだよ」その言葉に、麻也は眼を見開く。「『運命』もそうなんだけどね?」人影は仰々しく右手を上げていく。人差し指が、麻也へと突き出されて。「君の力は、もはや『世界』の敵になってしまったんだ」「待てッ、それはどういう……ッ」
2014-06-11 22:07:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そういうわけだから、頑張ってね~。」『世界の手先』と称されたその人物は、雨空を見上げながら笑顔でひらひらと手を振った。
2014-06-11 22:11:15![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
暫くすると、地面を睨みつけるように俯き、一瞬顔を歪め。「――――僕だって反吐が出る話なんだけどなぁ。カミサマは一体何を考えているのやら」彼もまた、吐き捨てるように呟いた。とん、とその場で跳躍すると、ふわりと穏やかな光を残して消えて――――
2014-06-11 22:11:33