toshisato6010氏による「ウェーバーを挟むかたちでの実証性/実定性の転換」という仮説の彫啄過程

M・ウェーバーの『客観性』論文と「マイヤー論文」との関係性。 そこでのJ・フォン・クリース『確率計算の諸原理』の位置づけ。 「法則科学/文化科学」「法則定立/個性記述」の二分法的実定性から、「法則論的知識/存在論的知識」がスペクトル上に連続するような実定性へ。 たとえば、「相当因果関係」の措定における、「客観性」「因果帰属」「解釈」三者の位置づけ、等。 togetter「J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー」(http://togetter.com/li/668538)が更新されるまで、暫定的に公開。 続きを読む
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佐藤俊樹 @toshisato6010

M・ウェーバーの方法を論じるなら、『客観性』論文だけじゃだめで、「マイヤー」論文まで読んでね、というのは、どうも社会学業界の共有知識にはなっていないようで。全く別々の文脈で、ほぼ同時に、同じコメントをすることになった。

2014-05-17 21:33:26

エドワルト・マイヤー、マックス・ウェーバー『歴史は科学か』(改訂版)みすず書房.

マイヤー「歴史の理論と方法」
ウェーバー「文化科学の論理学の領域における批判的研究」所収
http://www.msz.co.jp/book/detail/00514.html

マックス・ヴェーバー『歴史学の方法』講談社.

http://www.amazon.co.jp/dp/406159320X

佐藤俊樹 @toshisato6010

『客観性』論文は1904年、「マイヤー」論文は1906年に発表されている。「プロテスタンティズム……」論文の雑誌版は1905/6年の発表だから、ウェーバーの経験的な社会学の分析は、基本的に「マイヤー」論文での考察を何らかの形で下敷きにしている、と考えてよい。

2014-05-17 21:34:04
佐藤俊樹 @toshisato6010

「マイヤー」論文はもちろん『客観性』論文とも連続性があるが、現代の社会学者には「マイヤー」論文だけの方が読みやすいかもしれない(特にⅡは)。それは、「マイヤー」論文ではJ・フォン・クリースらによる、確率論的定式化の影響が前面に現れているからだ。

2014-05-17 21:35:01
佐藤俊樹 @toshisato6010

一方で、フォン・クリースはウィーン学団の確率概念や帰納法の正当化の是非の議論にも影響を与えている。だから、例えばK・ポパーの反証主義や基礎命題の考え方を念頭において「マイヤー」論文を読むと、ウェーバーが何を問題にしていたかについて、むしろ明確な像が結ぶ。

2014-05-17 21:36:46
佐藤俊樹 @toshisato6010

少しわかりにくいのは因果連関の「偶然的/適合的」の二分法の導入だが、これは(偶然/必然)≒(自由/法則)という二分法で考えてきた19世紀のドイツ語圏の社会科学に対して、この二分法自体をずらすことで、

2014-05-17 21:37:18
佐藤俊樹 @toshisato6010

そもそも因果の記述がどうやって成立するかから考えないとだめでしょ、という形で、いわばカントを逆に突き抜けてヒュームまで差し戻した、と考えればわかりやすい。だとすれば、新カント派という枠組みで考える必要もなくなる。

2014-05-17 21:38:06
佐藤俊樹 @toshisato6010

さらにいえば、因果適合性と意味適合性の関係も、因果の具体的な特定には反実仮想が欠かせない、という線で考えた方がすっきりすると思う。それでそのまま分析哲学にも接続できるし。まあ、これはまだ検討中だけど。

2014-05-17 21:38:36
佐藤俊樹 @toshisato6010

要するに、「マイヤー」論文もまた、全称命題と有限個の観察をどう関係づけるか、をめぐる考察なのである。私はそう考えている。幸い、英訳も比較的容易に入手できるようだから、ドイツ語やドイツ語風日本語が苦手ならば、英訳と日本語訳を対照させて読めばよい。

2014-05-17 21:40:18
佐藤俊樹 @toshisato6010

英訳はMAX WEBER On The Methodology of the Social Sciencesに収められている。英訳も日本語訳も論文内の注に通し番号をふってくれているので、語句の検索や対照もしやすい。翻訳の底本がちがうのか、番号がずれることもあるが支障はない。

2014-05-17 22:08:19
佐藤俊樹 @toshisato6010

出版は1949年だから、英語圏でも「マイヤー」論文は比較的早くから注目されていたらしい。ちなみに、以前述べたように、I・ハッキングはフォン・クリースを「19世紀を通じて、確率に関する哲学的に最もinterstingなドイツ語の著作」だと高く評価しており、

2014-05-17 22:08:51
佐藤俊樹 @toshisato6010

ケインズやウィトゲンシュタインやカルナップにも深い影響をあたえた、と指摘している。そこまで知っていながら、ウェーバーを"antistatistical"として、西/東の二分法に押込めるのだから……。まあ、この二分法はもっと手前でいろいろ深刻な問題があって、あぶなすぎるのだが。

2014-05-17 22:09:43
佐藤俊樹 @toshisato6010

計量や数理を苦手とする社会学者がウェーバーをもちあげる、という第二次大戦後の社会学の風潮が誤解をうんだ面はあるかもしれない。フォン・クリースを介しての「マイヤー」論文とウィーン学団との内容的な関連性が見落とされがちなのも、知識社会学的には、その一環かな。

2014-05-17 22:10:14
佐藤俊樹 @toshisato6010

付け加えておくと、ハッキングは目の付け所がとても良い人だと私は考えている。ただ、それで何か面白いことを思いつくと、その図式的面白さに囚われて、データによる修正をなかなか受け付けない。そんな感じがする。

2014-05-17 22:10:46
佐藤俊樹 @toshisato6010

つまり、彼自身の西/東の二分法をつかえば、ハッキングはむしろ東に属する人だと思う。実際、あの二分法って、ヘーゲルだしねww。代表作は著者自身が気づかない形で著者を物語る、という経験則がよくあてはまる一例じゃないだろうか。

2014-05-17 22:11:09
佐藤俊樹 @toshisato6010

ちなみに、社会学史としていえば、第一次大戦までのドイツ語圏の社会学と、第二次大戦前後からの英語圏の社会学の間には、戦間期のウィーン周辺という媒介項がある。そう考えると、いろいろ腑に落ちることが多い。

2014-05-17 22:12:08
佐藤俊樹 @toshisato6010

A・シュッツの現象学的社会学だけでない。P・ラザーズフェルドらの経験的調査と計量分析もそうだし、今述べたように、ウェーバーの方法論もそうだ。そしてそれらがそれぞれ部分的に重なる社会科学の理論と実証両面での確率論的考え方の導入でも、そうである。

2014-05-17 22:12:43
佐藤俊樹 @toshisato6010

だからもちろん経済学や統計学にもあてはまるわけで……。ナチスの政権奪取がなかったら、今も社会科学ではドイツ語が共通語だったのではないだろうか。そんな反実仮想にふっと襲われる。

2014-05-17 22:13:15
佐藤俊樹 @toshisato6010

J・フォン・クリースの『確率計算の諸原理』(第2版は1927年、初版は1886年)を数理科学研究科の図書室から借り出す。杉森滉一さんの論文「『客観的可能性』としての確率」を読んでいて、いささか衝撃的な文章に出会ったからである。

2014-06-01 15:01:59
佐藤俊樹 @toshisato6010

(あ、杉森論文は、ウェーバーの方法的検討との関係を念頭において『諸原理』の議論を追跡したもので、理念型論と分析哲学系のモデル論の異同にも目を配っており、v.クリースの確率論を考える上でも、ウェーバーの方法的検討を考える上でも、とても有益でした。)

2014-06-01 15:02:36
佐藤俊樹 @toshisato6010

v.クリースは『諸原理』で「法則論的規定性/存在論的規定性」の区別を導入する。前者がG・ラートブルフの修正こみでウェーバーの方法的検討に取り入れられて、「法則論的知識nomologische Wissen」となり、1904年の『客観性』論文以降の重要な鍵概念になる。

2014-06-01 15:03:16
佐藤俊樹 @toshisato6010

ところが杉森論文によると、v.クリースは『諸原理』の第2版の序文でこう述べているのだ(なお以下は私の要約)。--『諸原理』初版での「法則論的/存在論的」という区別はその後、W・ウィンデルバントの「法則定立的科学/個性記述的科学」に近いものとされ、

2014-06-01 15:03:42
佐藤俊樹 @toshisato6010

ウィンデルバントの区別はH・リッカートによって「自然科学/文化科学」の区別に発展させられたのだが、v.クリース自身が「法則論的/存在論的」でそれぞれ考えていたのは、喩えていえば、微分方程式の変数関係と積分定数みたいなものだったのだ、と。

2014-06-01 15:04:14
佐藤俊樹 @toshisato6010

これがなぜ衝撃的かというと.... 例えば「微分方程式の変数関係は自然科学(法則科学)で、積分定数は文化科学だ」などと言えば、誰もが笑うだろう。どちらも微分方程式という一つのアプローチにおける、二つの部分だからである。

2014-06-01 15:04:55
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