高校生のための『論考』出前講義まとめ

光文社文庫のヴィトゲンシュタイン論考に収録されている、野家啓一の行った出前講義の内容をまとめています。ヴィトゲンシュタインへ至る論理学の流れが解説されており、論考を読み始める前に大変重要な部分です。ちなみにまだ途中です
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話はかわって、ついにヴィトゲンシュタイン論考を借りてきました。面白かったところをちょいちょい抜いていきたいと思います。 『論理哲学論考』ヴィトゲンシュタイン、光文社古典新訳文庫、丘沢静也訳

2014-06-13 19:13:09
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アリストテレスが三段論法を体系化したのは『分析論前書』において。この体系は「伝統的論理学」と呼ばれますが、カントは純粋理性批判において次のように述べます。 「論理学がこの確実な途をすでにもっとも古い時代から歩んできたことは、アリストテレス以来一歩も後退する必要がなかった(続)

2014-06-13 19:19:26
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(承前)ことからも見てとられよう。(中略)論理学についてさらに注目すべきは、この学はまた今日にいたるまで一歩も進歩することができず、したがってどうみても完結し完成しているように思われることである」

2014-06-13 19:23:09
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そして、19世紀の終わりに大胆にもその一歩を踏み出したのが、ドイツの数学者フレーゲでした。 おわり

2014-06-13 19:23:54
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フレーゲ『概念記法』 1879年100ページ足らずの小著で、(アリストテレスの論理学が基盤としていた)「名辞」ではなく「命題」を基盤とする新たな論理学を提起しました。 「語(word)」から「文(sentence)」へ転換したわけです。ただし論理学が扱うのは直説法の平叙文で、

2014-06-13 19:33:19
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しかも真/偽(これを「真理値」という)が明確に決まるもの、すなわち「命題(proposition)」に限られます。 このように命題のとりうる値として真/偽のみを認める論理を「2値論理」と言います。

2014-06-13 19:35:57
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「トートロジー(恒真命題)」という概念を確立したことこそ、「論理学の革命」へのヴィトゲンシュタインの最大の功績でした。 トートロジー もともとは同語反復の意 トートロジーの例「p.~p(pかつpでない)」 明日の天気は晴れかまたは晴れでないという天気予報は100%的中する=恒真

2014-06-13 20:06:50
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花話をヴィトゲンシュタインから先のフレーゲに戻します。命題を基盤とした2値論理まで説明しました。 さらにフレーゲは命題の構造を関数の形式で書き表すという方法を導入しました。このアイデアがラッセルとホワイトヘッドの共著『プリンピキア・マテマティカ(数学原理)』(1910-13)で

2014-06-13 20:12:32
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全面的に展開されてゆきます。その体系は伝統的論理学と区別して現代論理学ないしは記号論理学と呼ばれています。 現代論理学は大きく「命題論理」と「述語論理」という二つの部門にわかれます。 命題論理:命題同士の推論関係 述語論理:命題の内部構造と量に関わる推論関係 をそれぞれ扱う

2014-06-13 20:15:20
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命題論理について 命題には「要素命題」と呼ばれる最小単位があり、命題変項(p,q,r)によって表示されます。これらの要素命題を「論理結合子」という、論理的な接続詞によって結び付け、複合命題を作ります。 この論理結合子には著しい特徴があります。それは、論理結合子を用いて作られた(続

2014-06-14 14:01:33
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(承前) 用いて作られた複合命題の真理値(真/偽)が要素命題の真理値によって一義的に決定されるということです。たとえば「p.q(pかつq)」という複合命題の真理値は、それを構成する要素命題pとqがともに真であるときのみ真となり、それ以外の場合偽となります。

2014-06-14 16:17:44
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このように部分の真理値から全体の真理値を決定する論理結合子の働きを「真理関数」と呼びます。要素命題の真理値を入力すると複合命題の真理値が出力されるという関数の構造を持っているからです。

2014-06-14 16:19:18
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ちなみに論理結合子のうち基本的なものは以下四つ。意味と、ヴィトゲンシュタインの記法と読み方を列記します。 否定(not):「~p(pでない)」 連言(and):「p.q(pかつq)」 選言(or):「p∨q(pまたはq)」 条件法(if~then):「p⊃q(pならばq)」

2014-06-14 16:23:41
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排中律について 排中律はトートロジーのひとつであると言うことができる。 現代論理学で表すと「p∨~p(pまたはpでない)」 これを伝統的論理学で表すと「AはBまたは非Bである」という言い方になる。 違いは、否定が命題につくか(~p)、名辞につくか(非B)という点です。

2014-06-14 16:48:20
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伝統的論理学と現代論理学の違いを説明している箇所について 野家啓一という人が、「丸い四角は存在しない」という命題を例に挙げて考えています。 伝統的論理学では「丸い四角は非存在である」となります。ここは、先ほど排中律が「AはBあるいは非Bである」になったのを考えれば納得できます

2014-06-14 17:02:59
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ところがこれには問題があるそう。 主語名辞(ここでは「丸い四角」)は何らかの対象を指示しなければならないが、この場合は指示対象がない(原理的に存在しないから)。すると主語名辞が指示対象を持たないので、この命題は無意味ということになってしまうそう。

2014-06-14 17:05:12
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一方現代論理学では「丸い四角」という主語名辞を「丸い(R)」と「四角い(S)」という述語の組み合わせとして分析します。 すると「丸い四角は存在しない」という命題は記号を使えば~(∃x)(Rx・Sx)と表現され「丸くかつ四角いxは存在しない」という真なる存在否定命題となります

2014-06-14 17:33:21
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ていうか、この本、さっきは「かつ」は.(ピリオド)表記だったのに、ここではなぜか中ぽつになっています…(~(∃x)(Rx・Sx)のところ)なぜだ。単なる誤表記か?ちなみに私たちが学修した義務教育では「且つ」は「∧」だったよね

2014-06-14 17:36:24
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この存在否定命題では指示対象は消去されています。 これは論理分析の一例で、このように見かけの文法構造に惑わされず背後に隠れた正しい論理形式を明らかにすることが、論理分析ないし言語分析、つまり哲学の役目と考えられたのです。現代論理学という武器を手に「論理学的世界像」を構築し、(続)

2014-06-14 17:42:01
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(承前)それを通じて規制の伝統的哲学概念を根底から変革しようというのが、『論考』の初期の目的でした。 小休止

2014-06-14 17:48:48
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要するに伝統的論理学は鬼才アリストテレスのおかげで大変に古い時代からほぼ完成していたが、いくつかの問題を抱えていた。その一つが、存在否定に関する命題を述べる際にそれが真なる命題であるにも関わらず、論理のルールに触れてナンセンスとなってしまうことであった、ということか?

2014-06-14 17:52:47
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論考 3本の柱と7の一桁命題 論考の三本柱は以下 「真理関数の理論」これは命題論理のところで述べたものです。現代論理学は大きく分け命題論理と述語論理の二つだという、あれです。 「像の理解」 「語る/示すの区別」

2014-06-14 18:12:34
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論考の一桁命題とは 論考は、約526の短い断章に十進法の番号がつけられており、この数字がそれぞれの命題の「論理的な重さをあらわしている」そうです。 n.1はnに対するコメント、n.11とn.12はn.1に対する一番目および二番目のコメントです。そうすると、

2014-06-14 18:16:51
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他の命題へのコメントでない、nという整数の命題こそ最も重い命題ということになるでしょう。この一桁整数の命題は、論考に7あります。 以下列挙 1 世界は、そうであることのすべてである。 2 そうであること、つまり事実とは、事態が現実にそうなっていることである。

2014-06-14 18:19:13
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3 事実の論理像が、考えである。 4 考えとは、有意味な命題のことである。 5 命題は、要素命題の真理関数である。(要素命題は、それ自身の真理関数である)

2014-06-14 18:27:30