【彼は王様】福間健二 #2factory67

福間健二 @acasaazul

父は泥沼に足をとられて死んだ。母は希望の時代のピクニックから帰らない。妹は奪いとる目をしたミス・インデペンデンス。彼はひとりぼっちの王様。だれもいない部屋で頭をガリガリ掻く。指先に電流が走る。コピーされた大陸の蝶たち、よく見るとなんて醜いんだ。（彼は王様１）#2factory67

福間健二 @acasaazul

木次乳業のブラウン・スイス牛乳。高いけれど買った。アールグレイに入れて飲む。おいしい。KISUKI、大好きな叔父さんの生まれた町。流れている斐伊川とは別な川が二股に分かれるところまでホットパンツのカスミ先生を追いかけて、叔父さんもいなくなった。（彼は王様２）#2factory67

福間健二 @acasaazul

叔父さんたちの立川ピストルズ。結局、自分のことばかり心配していた乾杯好きの「社会主義」。やりのこしたことだらけだが、いまはもうない。カスミ先生の誘惑授業と国分寺ドールズもヴィデオのなかで暴動をおこしているだけだ。どうする。彼は死ぬのが怖い王様。（彼は王様３）#2factory67

福間健二 @acasaazul

愛に酔って。おばあちゃんのブルース。フィーチャリング、Ｊじいちゃん。いいけど、彼の心配はしてくれない。彼は林檎のむき方もかじり方も知らない王様。簡潔でぴったりとした服の娘たちが消えて何もかもが脹らむカリフォルニアにどうしてぼくのベッドがある？（彼は王様４）#2factory67

福間健二 @acasaazul

朝、肩や腕にさわってくる金属の虫たち。半分は輝き、半分は錆びついている。藁を着ない。材木をかつがない。水の上の煙を追わない。ファシストたちに殺された詩人の、蜜の歌を思い出さない。せつない女心も家に帰る急ぎ足の理由もわからない王様。雨ふってるよ。（彼は王様５）#2factory67

福間健二 @acasaazul

雨にけむる海のむこうでは、美しい目をした帰る家のない子供たちが動物に罠をしかけたりゴミをあさったり盗みをしたりしている。それを思うマリアを退屈な文学にして、トゥナイト。何でも入ってくるインターネットラジオ聴きながら、彼は荒地の、釣りをする王様。（彼は王様６）#2factory67

福間健二 @acasaazul

ミス・インデペンデンス。どうしてるかと電話してみた。一日平均五万円以上稼いでる。頭はパンク状態。詩人じゃないから、言いたいことを言うんじゃなくて世のため人のために言わなくてはいけないことを言う。お兄ちゃんに会ったら言って。不可避性、自分で招く。（彼は王様７）#2factory67

福間健二 @acasaazul

深夜のＮＨＫラジオ、小池マーちゃんが一葉を読んでいる。なんていい声なんだ。ビーフィーターの壜の転がる荒地に倒れていた彼が起きあがる。生き返った。自分を生贄にしても何をお願いしていいかわからなかった。赤い制服、黙ったまま。不可避性、やってこない。（彼は王様８）#2factory67

福間健二 @acasaazul

彼は焼却炉の前に立って思い出した。友だちがいた。絵を描いていた。そのアパートに行く。友だちはパレットに頭をのせて死んでいた。描きかけの絵にはさびしそうな牛がいた。自分だと彼は思った。国分寺の牧場。ウイスキーと柿ピーもってだれが遊びに来てくれる？（彼は王様９）#2factory67

福間健二 @acasaazul

積乱雲、見ていた。偉いなあって。雹がふってきて、奮発したラフロイグの筒を落としそうになった。雑草通信局の日給の半分以上したよ。いまは縦にライトニング、雲がまた出ている。マリアでもマーちゃんでもないけど、あんたのクイーンは濡れても元気なこの私。（彼は王様10）#2factory67

福間健二 @acasaazul

心底言いたいことを言う。詩人も王様もやってない。見抜いた雑草通信局が、ウイスキーと不可避性をもった彼女を送り込んだのだ。どこからでも出てくる雑草がみんな彼女の親戚。おとなしい茶色の、生乾きのワンピースの裾が波打つ。ウイスキーと水、一対一でね。（彼は王様11）#2factory67

福間健二 @acasaazul

曇り空の下、キングとクイーンがおかずを分けあう地上のぬくもりを夢見ている。理由になってない。理由なんかいるか、ばか。ばかでわるかったわね。季節が季節だから、これ、今日中に食べないと危ないよ。じゃあ食べる。食べざるをえない。やっとここまで来た。（彼は王様12）#2factory67