艦これ✕鋼鉄の咆哮『大いなる冬』

WG2の真のラスボス、『フィンブルヴィンテル』と戦うおはなし。 前作:http://togetter.com/li/675378
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ろくせいらせん @dddrill

艤装の機能は、完全に停止している。クレーンから取り外したワイヤーで、船体をここまで登ってきたことを、今更のように思い出す。その瞬間、ぐるり、と。船体のあちこちに付いた『眼』が動いた。数十、いや数百の視線が、一斉に私に向けられる。52

2015-05-30 00:09:29
ろくせいらせん @dddrill

この瞳で、この視線で。この化け物は……いや、『彼女』は。何を見ようとしているのか。私達の世界を、壊そうとしているのだろうか。ここで攻撃すれば、脳を壊せるかもしれない。そうすれば、もしかすると一矢報いることが出来るかもしれない。53

2015-05-30 00:18:26
ろくせいらせん @dddrill

刺し違えようと、このままでいようと、私はどのみち死ぬ。いや、帰るのだ。水面の底へ。それで……いいのだろうか?本当に、『彼女』は。何かの敵意を持っていたのだろうか。「貴方、何がしたかったんですか?」私がここまで来られたのは、天文学的幸運の賜物だと思っていた。54

2015-05-30 00:24:06
ろくせいらせん @dddrill

でも、もしかすると。彼女は寝ぼけていただけで。そうでなければ、億が一にも私がここまでたどり着けるなんてことは、無かったんじゃないだろうか?もしそうなら、分かり合うことだって、出来たのじゃないだろうか?55

2015-05-30 00:28:16
ろくせいらせん @dddrill

私達は、過去の記憶を持ったまま人の姿で生まれてきた。それは、どういった意味を持つのか。人と艦娘(へいき)は、分かり合えるようになった。なら、超兵器は?「すみません……もう少しだけ、眠っていて貰えませんか」でも、例えそうだとしても、今は。56

2015-05-30 00:30:14
ろくせいらせん @dddrill

この場所には、あと少しで核が降ってくる。それは、貴方が世界を壊してしまう力だからだ。長い間、私達の70年の何十倍、何百倍……もしかしたら、もっと長い間。氷の中にたった一人で眠っていた。そんな貴方は、どうして目覚めたのか。57

2015-05-30 00:35:24
ろくせいらせん @dddrill

「寂しいなら、私も一緒に居ますから」そう言った瞬間、沢山の赤い目が、微かに動いた気がした。異形の船体が、再び鳴動を始める。いや、これは……「沈んでる……?」58

2015-05-30 00:45:36
ろくせいらせん @dddrill

海面が、確かに近付いてきている。艤装の無い私は、もう水に浮くことすらできない。このまま、地の底へ向かうのだろうか。それなら、いい。きっとまたゆっくり寝れる。艦隊のみんなはどうしたのだろう。生きていると、いいのだけれど。59

2015-05-30 00:52:00
ろくせいらせん @dddrill

目に浮かぶのは、鎮守府の景色。提督の執務室。艦娘のみんな……そういえば、走馬灯で『生まれ変わった』後の景色を見るのは初めてかもしれない。「おやすみなさい。今度は、良い夢を」未知の金属でできた船体をやさしく撫でて。私は、ゆっくりと眼を閉じた。60

2015-05-30 00:54:14
ろくせいらせん @dddrill

◆艦これ✕鋼鉄の咆哮『大いなる冬』#5おわり

2015-05-30 00:55:40
ろくせいらせん @dddrill

◆作戦終了◆ ◆新しい艦娘がドロップしました◆

2015-05-30 00:58:32
ろくせいらせん @dddrill

◆『大いなる冬』エピローグ◆

2015-05-30 01:20:02
ろくせいらせん @dddrill

結局、私は何故かまだ生きている。目が覚めたのは、帰りの船の中。艤装が壊れた状態で無茶をしたので、こうして鎮守府に戻っても暫くはベッドの上で絶対安静。艦娘になってからこっち、『入院』なんてしたことが無かったので、少しだけ新鮮だ。1

2015-05-30 01:22:16
ろくせいらせん @dddrill

「不死鳥の秘密は、修理のタイミングにもあるんだよ」……どうもあの後、颯爽と現れたВерныйさんが私を担いで沈没間際の超兵器から逃げたらしい。何だかんだで、艦隊に喪失艦は無し。皆こうして、時々お見舞いに来てくれる。2

2015-05-30 01:27:17
ろくせいらせん @dddrill

お陰でベッドの横には、お見舞いのメロンや果物、お菓子類に本や瑞雲が所狭しと積み上がっていく。「放棄した艤装についてですが、海流の流れから計算して……上手く行けば沖ノ島沖で拾えるかもしれません」そう口にするのは、大淀さん。私と入れ違いに艤装を回収し、今は秘書艦をしているらしい。3

2015-05-30 01:31:13
ろくせいらせん @dddrill

「そう……もう、戦うつもりは無いから、いいんだけど」あんな真似をするのは、一生に一度でも多すぎるくらいだ。「そういえば、『あの子』は?」「提督が匿ってますよ。どうするかは、まだ決まってないみたいですけど」4

2015-05-30 01:34:21
ろくせいらせん @dddrill

「上が核攻撃の話で混乱してるから、まだいいけど……早いうちに、どうにかしないと」「本当にびっくりしましたよ。まさか、『連れて帰って来る』なんて」「私が気絶してる間のことだから、それは知らないって」「でも、提督も何故か喜んでるみたいなんですよね……表情には出しませんけど」5

2015-05-30 01:40:47
ろくせいらせん @dddrill

そんなことを言い合って、二人で病室の窓から中庭を見下ろす。そこには……白いワンピースの女の子が、一人で空を見上げている。頭には、どこか双胴の船体を思わせる、2つに分かれた大きな青いリボン。6

2015-05-30 01:45:41
ろくせいらせん @dddrill

人と艦娘は分かり合えるようになった。北極で拾った「あの子」は、人の形になった。だから、超兵器とだって解り合えるかもしれない。いつか、きっと。それはきっと、決して遠い未来ではない筈だ。 春は、もう近いのだから。7

2015-05-30 01:50:06
ろくせいらせん @dddrill

艦これ✕鋼鉄の咆哮『大いなる冬(フィンブルヴィンテル)』◆完◆

2015-05-30 01:51:01
ろくせいらせん @dddrill

◆おまけ◆ 「『ヴォルケンクラッツァー』浮揚計画……?」 「なぁ、お前さん……地球空洞説って、知ってるか?」 -1999年7の月 恐怖の大王が空から降ってくるだろう- 「って、16年も前の話じゃないの!!」 艦これ✕鋼鉄の咆哮『恐怖の大王』へ続……かない。

2015-05-30 01:54:49
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