ケンペイ天狗「パンツ・サンダーボルト」

アナ・イゴール @KNPITNG

BLAM！「グワーッ！」突如銃声が響き、エンブリーの右腕から血飛沫の花が咲く！衝撃と激痛で彼は持っていたスイッチを取り落とした。「やらせねえよ」電子ロック式の司令部の扉を蹴倒し現れるは、右手には愛銃ベレッタクーガーを構え、頭にパンツを被った軍人。スエズ提督！　５１　#ケンペイ天狗

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「グヌゥーッ……！」エンブリーは憎悪の篭った目でスエズ提督を見ると、一瞬息を吐き認識タイミングを狂わせ、ホルスターから左手で銃を抜き放ちスエズ提督に向けた！ハヤイ！歴戦の軍人が故の射撃速度だ！「若い上に甘いな！パンツ食いのイエローモンキーが！」BLAMN!!　５２　#ケンペイ天狗

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……しかし、血飛沫は舞わぬ。スエズ提督の前に立ちはだかった赤い眼鏡をかけた栗色の髪の艦娘が、射撃をその腕で受け止めたのだ。「サンキュー、望月」「しれーかん、あんま無茶しないでよ。戦闘だったら私達でやるからさー」「人間相手に戦うのは艦娘の仕事じゃねえよ」　５３　#ケンペイ天狗

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「艦娘がいる以上そっちに勝ち目は無い。投降しろ」スエズ提督は頭に被ったパンツを脱ぎ、おもむろに口に運ぶ。「ジーザス……本当に日本人はパンツを食えるのか……」エンブリーは震えた。「人間なら誰でもパンツが食える。お前たちはパンツに目を背けてるだけだ」「ゴッド……」５４　#ケンペイ天狗

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「もうお前の陰謀は国連軍上層部にバレてる。暴走した単独犯だってこともな。大人しくお縄につけ……それと一つ言っておく」スエズ提督は替えのパンツを再び頭に被せながら言った。「パンツ食は繊維の消化吸収じゃない。もっと素敵で深い何かだ」エンブリーは膝から崩れ落ちた。　５５　#ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」　５６　#ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」「ンアーッ！」一方その時ツラバヤ鎮守府では、恐るべき竜巻カラテ応酬の末ケンペイの強烈なショートアッパーが矢矧の鳩尾を貫いていた！「イヤーッ！」「ンアーッ！」更にケンペイは一瞬前のめりになった矢矧の側頭部に強烈な後ろ回し蹴りを加え、吹き飛ばす！　５７　#ケンペイ天狗

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「……エンブリー＝サン！応答してくれ！」「ンアーッ！」「や、矢矧＝サン！？」応答の無いIRC端末に向かって絶叫していたツラバヤは、目の前にボロ雑巾めいた矢矧が吹き飛ばされてきたことで我に返った。「矢矧＝サン……？」そして彼は顔を上げ……「アイエエエエエ！？」　５８　＃ケンペイ天狗

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そこに立つは悪鬼すら裸足で逃げ出す存在！憤怒のオーラを全身から吹き出したテング・オメーンの狂人！「ブラック提督！殺すべし！」虐げられる艦娘！踏みにじられた民衆！不本意にもパンツを食わされた経験！彼は今、あらゆる理不尽への怒りをツラバヤに叩きつけようとしていた！５９　#ケンペイ天狗

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「アイェ…、ッ！」迫るケンペイに対しツラバヤは意を決し、奥歯を噛み締めた。もし目の前の存在がパンツを食うことでこれだけ強くなったのならば自分にも出来るはず。目の前には気絶し倒れた矢矧。彼は矢矧のスカートの中に手を突っ込むと、パンツに手をかける！「イヤーッ！」　６０　#ケンペイ天狗

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ケンペイは一歩一歩と進む。迸るは深い怒り。スエズからの１万キロの道のり、これまでの全て苦難は目の前でブザマに腰を抜かすブラック提督が仕組んだこと。ブラック提督は常にそうだ。艦娘を容易に殺しながら、自分が死ぬ時になると怯え無様に命乞いをする。「殺すべし！」　６１　#ケンペイ天狗

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「！？」ケンペイが振り下ろしたチョップは、しかし金属音で迎えられた！ケンペイは目を見開く。目の前にいたのは軍刀を抜き放ち、口にパンツを咥えた提督！「ドーモ、ケンペイ天狗＝サン……。ツラバヤです……！」モゴモゴと口を動かすツラバヤ！　６２　#ケンペイ天狗

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「これで私とお前は互角だ！イヤーッ！」ヤバレカバレ！ツラバヤは大きく軍刀を振りかぶるとケンペイに振り下ろす！ケンペイはこれを身を捻るだけで避けると強烈な右フックをツラバヤの脇腹に叩き込んだ！「アババーッ！」口から吐瀉物を撒き散らしながら吹き飛ぶツラバヤ！　６３　#ケンペイ天狗

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ケンペイは床に転がったツラバヤを見据えるとカイシャクのために歩き出す。しかしツラバヤはゾンビーめいて再び立ち上がった。ケンペイは一瞬目を疑った。内蔵の１つ２つは破裂する一撃だったはずだ。「流石パンツだ……なんともないぜ……！」ツラバヤが血を吐く。　６４　#ケンペイ天狗

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「一つ問おう」ケンペイは無慈悲に言った。「何故、マラソンでパンツだけは補給可にした？」「今は私も同じことを思ってるよ、なんでパンツの補給を許してしまったのかとな……イヤーッ！」軍刀で斬りかかる！「イヤーッ！」「グワーッ！」反撃で吹き飛び、もんどりって倒れる！　６５　#ケンペイ天狗

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「その通り、貴様らの下らぬ嫌がらせが私に水分を与えた。インガオホーだ」「その通りだ、だが今は俺もパンツを食っている！イヤアアーッ！！」ツラバヤが再びケンペイに斬りかかる！ケンペイはカラテを構えた！軍刀が迫る！ケンペイはチョップで受ける！「一つ言っておく！」　６６　#ケンペイ天狗

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ケンペイのチョップが赤黒い血管で覆われ、深海艤装めいて硬質化する！軍刀にヒビが入り……「パンツを！消化吸収出来る！人間など！おらぬ！！」折れた！！「ソンナバカナーッ！？」追撃の回し蹴りがツラバヤ提督の膝を砕く！「アバーッ！」「ツラバヤ＝サン！ハイクを詠め！」　６７　#ケンペイ天狗

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「我が陰謀/パンツに敗れた/悔いは無し　サヨナラ！」ハイクを読み終えた瞬間、ケンペイのチョップがツラバヤの首を切断！跳ね跳んだ生首はドン・ハリマの映るモニターに直撃、モニターは誤作動を起こし爆発四散！炎は壁に燃え移り、鎮守府全体を燃やしていく……！　６８　#ケンペイ天狗

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――――――　６９　#ケンペイ天狗

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数日後。ネオヨコスカ　RH探偵事務所　７０　#ケンペイ天狗

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奥ゆかしい音量でラジオがかかる雑然とした部屋の中で、龍驤はサイウンが映し出す電子新聞を眺めていた。目当ては国際欄。そしてスエズのスの字も無い。龍驤は安堵の息を吐いた。「どうやらうまく隠蔽してもらえたようやな」パンツ食い探偵など噂が流れたら商売上がったりだ。　７１　#ケンペイ天狗

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ケンペイ天狗はあの後３日間は目を覚まさなかった。無理も無い、不眠不休で水分以外ろくにとらず１０日間走り続けたのだから。実際あの１０日間のことは龍驤もあまり思い出したくはない。思い出しただけで少し股間がスースーする思い出などそうは無いし、実際要らない。　７２　#ケンペイ天狗

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とはいえ悪いことばかりではない。龍驤は着信音の鳴るIRC端末を手にとった。「おう、モッチーか。なんやまたお洒落について？」龍驤には新しい友人が出来た。「スエズだと流行が掴めない？あの提督サンだと流行とか気にしないやろ？え、そういう問題じゃない？お年頃やなぁ」　７３　#ケンペイ天狗

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「うん、そっちも提督が無事みたいで良かったわ。ウチの方もまあ生きとるよ」結局、ケンペイとスエズ提督は会話を交わしていない。そのことに龍驤が気づいたのは探偵事務所に帰ってからだった。「ま、ええか！伝染っても困るし」マグカップを２つ取り出し、コーヒーを淹れる。　７４　#ケンペイ天狗

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「ほら、どーぞ」「ああ、感謝する」ソファに座ったケンペイはコーヒーに口をつける。実際龍驤こだわりのコーヒーだが、ケンペイの味覚は半身が深海棲艦化したことで失われている。どれだけ龍驤が心を籠めて淹れようと、その思いが届くことは無い。龍驤もそれは知っている　７５　#ケンペイ天狗