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@moderntimes_ns
治療デバイス発表の報が知らされ、それが形になるまでの間に、どこからか世界人口の9割が発症もしくは潜伏期間にあるのではないかという噂が流れるようになった。 警戒リストに加えられたというニュースを見るに、強ちデマでもなかったのだと思う。 pic.twitter.com/hTOWsOB65N
2014-06-24 08:02:00
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この頃になると、妻をはじめとする多くの人々が架空の友人の妹の話もするようになった。 そうでない人もいたが、どちらの言が正しいのか、最早判断のつかない状況にあった。 世界的な治療薬開発が行われるようになったが、差は圧倒的だった。 pic.twitter.com/ttrRRXHhz6
2014-06-24 08:06:17
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終わり……終末を予感したのは、一体いつのことになるだろうか。私自身の記憶にも、彼女の影が差し迫るようになったころだろうか。 pic.twitter.com/sCfXyRXrDd
2014-06-24 08:08:05
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人々が共有していたように見えた架空の友人像に差異が見え始め、暴動や争いにまで発展するようになった頃か。 pic.twitter.com/iBmDAP5Y5Y
2014-06-24 08:11:16
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いや、違う。これはよく覚えている。忘れられるはずもない。架空の友人に会いに行こうとして死んだ妻が、墓から這い出して私を誘いに来た、あの夜だ。 あの夜、勘の悪い私はようやく世界の終わりが来たことを悟った。 pic.twitter.com/rX45YaJuWx
2014-06-24 08:15:10
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妻の二度目の埋葬のことは、あまり思い出したくない。 私を励ます〝彼女〟を、私は殺そうとしたが、それは大凡不可能だった。 pic.twitter.com/9J7EKN6DD1
2014-06-24 08:21:04
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埋葬のあと、私は家に閉じ籠り、抜け殻のように過ごした。〝彼女〟はそんな私を気遣う素振りを見せたが、それが罠であることに気づくだけの余力は幸いまだ残されていた。 私は出来る限りの力を持って、記録を行うことにした。 pic.twitter.com/mvoi2mx9oe
2014-06-24 08:25:20
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2016年6月17日。 人々は絶えず死に、蘇り、そしてまた死に続けている。 治療デバイスは治療薬開発に貢献しているとの報があったが、人々は未だ互いの理想の友人を奪い合い、争うことをやめようとしない。 暗黒の日々が続いている。 pic.twitter.com/uJkKrYM9Xu
2014-06-24 08:28:18
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2016年7月18日。 政府は漸く、彼らの存在を認めた。 制御下にある、と言う話は到底信じられないが、これで私以外にも備えを持ち始める人々が現れることを祈ろう。 pic.twitter.com/expufgXCYk
2014-06-24 08:31:11
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2016年8月4日。 彼らに対抗する武装集団が、ヨーロッパを中心に組織されつつある。組織は完成した治療薬を手にしており、構成員はこれにより〝彼女〟の支配下を脱しているのだと言う。 私も彼らに合流したいと思う。 pic.twitter.com/iBchjkJFib
2014-06-24 08:35:24
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2016年8月13日。 組織との接触で治療薬を得た私の元から、〝彼女〟の影は去りつつある。 しかし、状況は一向にして好転しない。遂に最初の感染者が出た国が、彼らにより飲み込まれてしまった。 テレビは既に灰色の波しか映さない。 pic.twitter.com/arcC6VMsdJ
2014-06-24 08:42:09
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2016年10月5日。 中央ヨーロッパにある本部が、彼らによる大規模な襲撃を受けたとの連絡が入った。 生存者は絶望的だろう。 〝彼女〟の、不思議と嫌味でない嘲笑が耳に入ってくるようだ。 pic.twitter.com/KV3y7uuDqs
2014-06-24 08:47:50
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2016年11月5日。 組織から受け取っていた治療薬の最後の一錠を使い果たしてから、もう5日程になる。 彼女の声は日に日に鮮やかに聞こえ、記憶は少女の微笑と星空に塗り替えられ、彼女への想いは日毎にこの身を焼き焦がす。 しかし私はまだ、あの夜の闇に飛び込むつもりはない。
2014-06-24 08:55:19
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2016年11月7日。 妻が死んでから5ヶ月と2日、仲間がいなくなって30日と少しが経った。最早他の生存者は見ることがない。 皆あの夜の海に身を投げてしまったのだろうか。 彼女は私に寄り添い、微笑み、甘い囁きをやめようとしない。 私は屈しない。一日でも長く生き延びて見せる。
2014-06-24 09:00:58