【傘ね愛】

ももちゅん @kj8mousooo

26 君はとてつもなく切ない目でその 背中を見つめてた。 『結構クるな…』 カメラを落としそうなくらい 胸に何かが刺さったまま、俺はその目に釘付けになっていたーーー pic.twitter.com/BzNkxweZlk

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27 でも部長の左薬指には指輪が光ってて。 奥さんも子供もいることもわかってる。 わかってるのに、優しくされると好きが積もって積もって そして苦しい…。 遅番が終わって、後少しで日付が変わるってとき、会社を出る。 田舎の夜道は街灯の光がやけに怖く見える。

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28 でも 怖いとか、もうそんなの感じない。 「つかれた〜」 1人の帰り道はなんだか、いつもよりさみしく感じた。 「雨…やんでる。」 そっか。行きはあの人と相合傘したんだ。 ぼーーーっとただ歩く。 と、いきなり後ろから首を締められて 「ぎゃーっ！！」

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29 誰？！ やばい…、息できない…、 どんどん閉められる首と 塞がれる口。 苦しくて抵抗できない。 耳元にある荒い息だけが 頭の中をどんどん支配していく。 あ、もうダメだ。 意識がなくなろうとしてた そのときーーーー 『やめろっ！！！』

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30 丸side 昼間の君のあのせつない 眼差しが忘れられなくて 内容も入ってこないDVDを 真っ暗な部屋の中、ただ回すだけ。 もう、寝ようかなって リモコンてに取りテレビ消した瞬間 「ぎゃー！」 外から悲鳴が聞こえてきた。 慌ててベランダに出ると 君が何者かに襲われてて

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31 靴もはかずに、玄関を出て冷たいコンクリートの階段を降りる。 『やめろ！！』 はぁ、はぁ、と息が上がってくる “な、なんだ！お前！” 黒いマスクを被った男も 動揺してて、俺はいっこくもはやく 君を助けたくて駆け寄った。 すると “くるな！！” 男の手にはナイフがーー

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32 「来ちゃダメ！！」 でも俺はただ君を助けることしか 頭になくて。 君の手を引いた 瞬間 その伸ばした先の、肩に ーグサッ 強烈な痛みが走った。 “お、俺は悪くない…、 悪くないぞ…うわぁあ” 男はそう自分に言い聞かせながら そそくさに暗闇の中に消えていった。

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33 だんだん意識が遠のく。 「き、救急車…、ね、ねえ！」 震える手でやっと電話をかけながら 俺を揺さぶる君。 「丸！丸！！」 俺は馬鹿なくらいあほな男やから そんなときさえ、君が俺の名前を呼んでくれて 嬉しいって思ったんやーーー pic.twitter.com/pVkvErb1Hu

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34 丸side 目が覚めると、真っ暗な天井。 そして、握られたその手の先に 君がいた ベッドにうつ伏せになって寝ながら 俺の手をずっと握っててくれてたみたい。 俺はそっともう片方の手で 君の頭を撫でる。 「んー」 と、こっちに頭を向けた君。 『綺麗なまつげやなぁ…』

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35 思わず目に触れる 「わっ！！」 っと、変な顔して起き上がる君を クスッと笑う。 「起きたの？！何笑ってんのよ！！」 小声で眉をしかめる君。 『いや「ねぇ、なんで？」 ？ 「なんで助けてくれたの？！ なんで走って来たの？！ なんで刺されてまで他人の私かばったの？！」

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36 早口で言ってた君は、 最後に切なげな言葉を 「あなたは…、誰なの？」 吐き捨てた。 俺の手をぎゅっと握って。 『誰って…、名前読んでくれてたやん。』 「へ？」 『まーる！』 その日から君は毎日のように病室にやって来てくれてた。

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37 最初はすごくそれが嬉しくて。 正直、肩の痛みが治まってくるのが嫌やった。 でも、段々苦しくて苦しくてたまらへんかったよ… だって君が 「部長ってなんでこう…、素直にさ〜」 嬉しそうな顔で、部長さんの話をするから pic.twitter.com/sg65DUeqGe

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38 「まぁ、好きとか言われなくても いいって。そう思えるの。 今は。」 もう俺は耐えられへんくなって。 『もう帰ってくれへんかぁ？』 「何言って…『もう、お前に世話されたない言うてんねん。』 お前なんて似合わない言葉吐いてしまって。 君は驚いたあと、静かに病室を去った。

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39 彼女side あんな目して怒るなんて… 優しい丸しか知らなくて。 恐くて、それから病室には行けなかった。 わたしはこのとき自分がひどい女 だったって、まだ気付いてなかった。 ただ、守ってくれた丸に 駅で傘を貸してくれた丸に 恩返ししたかった。 のにーー

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40 それから1ヶ月が経って。 病院から足を背け、 丸のことはわたしの中で消えつつあった。 どこで何してるのかもわかんなくて… それとは裏腹に 「はぁ、今日…、奥さんは？」 『主張って言ってきた…、 やっぱ君の身体が1番だ…』 部長との距離も縮んでいった。 身体だけ

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41 今日も会社終わりラブホで 「んぁっ…、痛っ…ぁ」 “溜まってるんだ…、嫁すぐ寝ちゃうし…。” 部長の腕の中で鳴く。 いいの…、これでいいの… 幸せ。 本当に？ 行為後、ぐったりする私を撫でてくれる部長。

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42 「部長…」 “ん？…” 「好きです…」 嗚呼、 馬鹿だな私。 “わかってるだろ？これ以上はないって。” わかってるよ。わかってるけど なんで泣いてんの私 それからお互い別れて、 部長が私に身体を求めることはなくなった。 好意があるならできない、と。

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43 そのあと また真っ暗な道をひとり歩く 送ってくよ、なんて言葉も無視して。 「泣くなよ、馬鹿女…」 上を見て涙を拭くと、満面の星が私を元気付けるように輝いてる でも涙でまた見えなくなって 泣いてる自分が嫌い 自業自得なのに そんな惨めな姿の中 『ひさし…ぶり』ーーー

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44 丸side 自分が好きな人が好きな人の 話をするほど辛いことってない。 胸が切った肩よりも痛んだ…。 自分の苦しさが積もっていく前に 離れていって欲しかった。 君の来ない病室はさみしく広く感じたけど、 これでいいんだって 毎日自分に言い聞かせて過ごした。

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45 いつか頭の中から消えるだろう。 そう思っていたのに。 君と過ごした少ない日々を忘れるどころか 美化しながら、肩の傷も癒えて、 僕は無事退院したーーー もう会わない。 決断した。 そう、君はそういうときに限って現れんねん…

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46 家の前を歩いていると、 泣きじゃくる君の姿。 『ひさし…ぶり』 やっと出た言葉。泣きながらも、君は僕と同んなじくらい驚いた顔してた。 「久しぶり…」 街頭に照らされる君に駆け寄り、 『なんで泣いてんねん…』 ちょっと半笑で問いかけると 「フラれちゃったよ…」

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47 馬鹿でしょ…？と眉尻さげて 笑ってよってなく君。 久々に会えてちょっとでも 舞い上がった自分がどん底に落ちた瞬間だった。 久々に会えて…、また部長さんの話… ごめん…、俺もう〝いい人〟でおられへん。 『癒してやるよ…』 「え？」

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48 涙を吹く君の手を掴んで 君を無理矢理 自分の家に連れ込んだ。 「どこ…、ねぇ！」 玄関入った瞬間、 大きい声出す君の言葉なんて 力付くでで口で塞ぐ。 息苦しくなって、ヘトヘトになった君をベッドに運んで 『弱ってる女の顔って、めっちゃそそる…』 思ってもないことを言う

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49 意地悪言ったつもりやったのに、 「うん、癒して…、いっぱい癒してよ…」 泣き籠った声で、僕の首に手を回した君 理性は崩壊して、めちゃくちゃに君が僕を求める以上に僕も君を求めては抱いたった。 でも途中で気がついたねん 「ぁっ、部長っ…」 君が求めてるのは俺やないって

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50 身体は繋がってても、 心はなかなか繋がらない。 涙流しながら喘ぐ君を 撫でながらも、切ない思いで 君を包み込んだーーーー 好きって伝えればいいだけの話なのに。 楽になるのに。 それができひんねんーーーー pic.twitter.com/kovk7DtpFb

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