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【傘ね愛】丸 ある田舎駅。 駅員さんなんていない。 朝と夕方は学生とサラリーマンで たくさんだけど、 遅番の私が電車に乗る時間は ホームがやけに広く感じる。 今日も電車を降りて、そんなホームに足を踏み入れる。 pic.twitter.com/QCfDmh5Dg9
2014-06-18 14:37:362 あー、早く行かなきゃ… 職場まで駅から徒歩五分。 向かおうとする。 と ザーーーーー… 「出た…」 雨女の成果が出てしまった。 案の定傘もない。 「も〜なんで降っちゃうのよ〜」 って、頬を膨らませて溜息つく。 タクシー代痛いなーと思いながら足を踏み出そうとする
2014-06-18 14:37:383 『あのぉ…』 ん? 声がする方を見ると、 こんな田舎では珍しい可愛い顔の 男の人。 「あ、すみません…ひとりごとを…」 人がいたなんて気づかなかった… 『よかったら、これ使ってください!』 差し出されたオレンジ色の傘。 pic.twitter.com/k2WWGG2ofv
2014-06-18 14:37:504 「いや、そんな悪いです!」 気ぃつかわれてる! 『僕、傘もう一個持ってるんです。』 笑顔で言うから、なんで傘2個も持ってるのかなんて聞けなくて。 「いや、でも…」 『時間、やばいんちゃうんですか?』 ハッとして、腕時計を見る。 「わ、ほんとだ!!」
2014-06-18 14:37:525 「ありがとうございます。お言葉に甘えて…」 『はい!』 名前も知らない人に借りた傘で 小走りで会社に向かう。 間に合わないと!!という一心でどうやって返すのかとか一体彼が何者だとか。 考えられなかった。 そのときはーーー pic.twitter.com/lvoat9kcqZ
2014-06-18 14:37:586 間に合ったものの、ギリギリでやっぱり先輩にはげんこつくらった。 まぁ、でもなんとかやり遂げて退社する。 「あ、傘…」 忘れるところだった… でも、いつ渡せばいいんだろ。 もう会えないかもしれないし。 なんて名前なのかな… そう思いながら傘を見る。 「あ!」
2014-06-18 19:19:327 傘のマジックテープのところに 『丸』って書いてある 「丸…」 今時傘に名前書く大人っているんだ。 駅に置いておくわけにも行かないし…。 駅にいたってことは、またきっと来るよね? 毎日傘を持ってきておけばいつか渡せる日がくる。 そう思ってそれから私は毎日傘を持ち歩いた
2014-06-18 19:19:368 3日経っても駅には彼どころか 男の人なんていなくて、じぃちゃん ばぁちゃんばっかり。 「今日もいないよなぁ〜」 ダメもとで一応傘持って ホームに降りる。 キョロキョロしながら駅を出ると 花壇に向かってカメラ構えた私服の男の人 いやいやいやこの間の人は 作業着だったもん。
2014-06-18 19:19:489 違うなって会社に行こうと踏み出しながらも、 こんなとこで写真撮ってる人って… 珍しい思いで振り返る。 カメラから離れた横顔を見ると 「あ!!!」 えっ?って振り向いたと同時に尻餅を付く彼。 pic.twitter.com/wZmt5PxxCp
2014-06-18 19:20:0310 『いって…』 「あ、大きな声出してごめんなさい…」 駆け寄って、同じ目線になるようしゃがむ。 『ぁあ!あのときの!』 「先日はどうも!! あの、この傘ありがとうございました!」 カメラを大切そうに持ちながら屈託のない笑顔で 『ええ!持ってくれはったん?!』
2014-06-18 19:20:0911 「は、はい。あのぉ、何してらっしゃるんですか?」 捨ててくれてもよかったのに…ブツブツいいながら、カメラを見えるように差し出して 『ぼく、休日は写真撮るんです。趣味で』 「写真…?」 私に向けられたカメラ 『そう、ほらっ!』 パシャっ その1枚が私たちのはじまりーー
2014-06-18 19:20:1612 【傘ね愛】 「もう!いきなり撮らないでくださいっ!変な顔残っちゃうじゃん…」 『ごめんなぁー』 って眉しかめて笑いながら、 カメラを弄る彼。 『でも、ええ顔撮れてる…』 って満足そうにデータを見るから 恥ずかしくなって pic.twitter.com/3ucr9NJgUW
2014-06-21 00:43:2113 「消してください!!」 つい大声になる。 『わかったって…、それより、仕事やばいんちゃいます?』 またあの時みたいに煽る彼。 そして、またあの時みたいにーーー 「まじで…」 『いきなり降り出したな…』 ザーーーッと激しく降り出した雨。 『これ、使えばええですやん。』
2014-06-21 00:43:2814 返したばかりのオレンジの傘を差し出してくる。 「いや、そんなの悪いです。」 『今日も二つあるで…』 「嘘丸見えです。」 もう迷惑かけられない。 と思って、時間に迫られて雨の中を駆け出しで踏み出そうと決意する 雨女の宿命だと思って。 よっしゃ!濡れ女上等! 走り出そう!
2014-06-21 00:43:3715 後ろから追いかけてくる彼なんて気にしないで走る。 けど バッと、手首を掴まれて頭の上をオレンジが覆った。 『はぁ…、はぁ、あほちゃう自分 …』 カメラを大事そうに服の中に入れて、息切らしながら 同じ傘にわたしを入れた彼。 『風邪引くで。送ったるから…』
2014-06-21 00:43:4616 まさか追いかけて来るなんて思ってなくて、 「あ、ありがとう…」 驚きながらも掴まれた手首に意識がいく。 パッと離れた瞬間、なぜか淋しいと思ってしまう自分がいて。 『ほな、はよ行きましょう!』 世間で言う、相合傘ってやつで彼に会社まで送ってもらった。
2014-06-21 00:43:5217 会社に着くと 『んじゃ、頑張ってください〜』 って手を振る彼を 振り返り礼をして仕事に向かったーーーー pic.twitter.com/pXmNt4hdaw
2014-06-21 00:44:0318 丸side 君に会うために写真、 撮ってたんやで っていったらまた怒るんよな。だって君はーーーー pic.twitter.com/imMzVb4MoE
2014-06-21 00:44:1019 会社に着くと、案の定部長に怒られる。 〝お前!またギリギリじゃないか!!〟 「ごめんなさい…」 でも、部長に怒られるの嫌いじゃない。 むしろ、もっともっと話したい。 それは憧れてから1年経った今も変わらない。 そう。私は部長に恋してるのーーーー
2014-06-22 01:31:4120 丸side 毎日毎日、仕事行って家戻って、休日撮った写真を整理する。 そんなおんなじこと毎日繰り返すだけの生活。 おかんには、そろそろ女の子でも連れてきなさいよ〜 なんて毎回電話でガミガミ言われて。 昨日投げ捨てたネクタイもそのまま そんなある日のこと
2014-06-22 01:31:5421 ザーーーーっと降り出した雨。 『洗濯物入れな!!』 ベランダに出る。 3階立てマンションの2階の俺の部屋。 スリッパはいて洗濯物を入れる。 ーーーーと 「もー!!なんで、雨には好かれちゃうのよ〜」 1人でぎゃーぎゃー言いながら走る女性。
2014-06-22 01:32:4822 それからその時間に外を 覗くと、君はいつもバタバタと 慌てて仕事に向かっていた。 でもどこか嬉しそうな顔もしてて。 そんな君と話してみたくて、 雨の日に駅に行ってみたんや… そりゃ、俺のことなんてみたことないやろうし。傘を言い分に君に駆け寄った。
2014-06-22 01:32:5923 もちろん、俺は傘2つなんて計算高い男やあらへんし、持って行ってなんかなかったから、あのあとずぶ濡れで仕事向かったんやけど…。 俺の傘、持っててもらえるだけでも嬉しかったけど、やっぱりもう一度会いたくて。 ちょっとの期待とカメラを抱いて駅に向かったんや…
2014-06-22 01:33:0624 来ぉへんなぁ チューリップちょっと撮ったら帰ろう… と撮ったチューリップを確認しようとすると 「あ!」 って言われて尻餅ついた。 それから君を会社に送ってった。 逃げる君を追いかけて。 でも俺は会社に送ったこと 君を待ち伏せしたこと 君を追いかけたことを 正直後悔した
2014-06-22 01:33:1925 会社にいく君に手を振って、 家へと向かう。 もう会えないかもな…なんて 名残惜しくて、しばらくして 振り返る。 と、2階の窓越しに映る君の 屈託のない笑顔。 向き合ってるのは男の人。 男の人が背を向け、君から遠ざかる。
2014-06-22 01:33:24