大倉君と年上彼女

クラゲ @04kurage

#99-1 大倉君と年上彼女 [忠義side]① 「なぁ、電話鳴ってるで」 週末の夜 決まって2人で過ごす事が習慣になっていた キッチンに居る彼女に携帯を渡す 着信は彼女の実家になってて 『もしもし。あ、お母さん。ん？元気だよ』 って会話を始める彼女

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#99-1[忠義side]② ソファに戻って 音量の下げたテレビ見るけど 盛り上がってる彼女が気になって全然集中出来ひん そう言えば全然帰省してる様子ないし 一度帰らへんのか聞いた時 お兄さんの家族が同居してて帰りにくいから帰っても年一回やって言ってたな

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#99-1[忠義side]③ 友達もほとんど地方から出てきてて 同窓会すらこっちでするし 『え？ちょっと待って』 そう言うとリビングを出て行った彼女 聞かれて困る様な話なんやろか まぁ親との会話を聞かれたくないんやろな そう思ってまたテレビの音量を戻す

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#99-1[忠義side]④ 10分程して戻って来た彼女 『はぁ…』 ってため息をついてる 「どうしたん？」 『え？ううん。お母さん話長いのよね』 洗い物終えてこっちに来る彼女 「お母さん何て？」 『荷物送るねーって。柿を毎年たくさん送ってくるの』

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#99-1[忠義side]⑤ そう言えば俺ももらった事あるな 「それだけ？」 『あとはお父さんとかお嫁さんの愚痴』 「そっか」 『あのさ、明日一回荷物受け取りに帰るね。受け取ったら柿持ってくるよ』 「ほなら明日はそっち行ったらええやん」 『え⁈いいよ！こっちに来る』

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#99-1[忠義side]⑥ 頑なな彼女 「柿やって重いやろ？」 『大丈夫。毎年だし！』 その後も色々言っても全然引かへん 「なんかあんの？」 『なにもないよ！』 でも怪しい… めっちゃ気になるんやけど あんまりキツく言えへんし… しゃーなし彼女を通す事にした

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#99-2[彼女side]① どうにか忠義からの誘いを断って 翌日お昼前に家に戻ってくる 入っていた不在者伝票を手にして電話をかける 1時間ほどでと言ったお兄さん その間に洗濯をして あ、忠義の所に持っていく様に袋探さないと そんな事を考えていたら鳴った携帯

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#99-2[彼女side]② “買い物行きたいし、来れそうになったら連絡したい” って来た 荷物が届いたら連絡する旨を送って インスタントのコーヒーを飲もうとお湯を沸かす 『結婚か…』 そりゃしたいかしたくないかと言われたらしたい でも忠義は年下で焦ってる感じもないし…

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#99-2[彼女side]③ でも自分の年齢を考えると少し焦る 同窓会で集まる友達の多くは結婚してて 子どもが1人、2人… とても幸せそうな彼女達を見ると 羨ましくもある かといって結婚をせがんだりするのも気が引けて 忠義との未来がある事を願うばかり 『はぁ…どうしよう…』

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#99-2[彼女side]④ 今からくる荷物の中身を想像するだけでため息が出る お湯が沸いてカップに注ぐ 『どう断るかだよね…』 試行錯誤してもいい答えもでないまま鳴った部屋のチャイム “お届けものでーす” 『はーい』 それをキッチンに運び中を開ける

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#99-2[彼女side]⑤ 柿や野菜の中 小綺麗な紙袋に入ったそれを取り出す 中を開けると 思ったよりも分厚い冊子 初めて見るそれに少し感動しつつ 中を確認する 『これはないわ…』 忠義と比較すると雲泥の差の男の人がそこには写っている そう これはお見合い写真

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#99-2[彼女side]⑥ 昨日の母からの電話の途中 “もう30にもなって独り身の娘が心配だわ。お見合い写真入れといたから。来月に帰って来なさい” と言った母 いらないと断っても 元々人の話なんて聞いていない人だから そのまま切られた電話

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#99-2[彼女side]⑦ だいたいその人の職業が農家だって時点で 嫁いだら地元に戻る事になるのに… 絶対ヤダ どうせウマが合わない兄嫁の愚痴をこぼしたいから 私に帰って来いって思ってる母の策略だし でもどうやって断るか… そしてこれを絶対に忠義に見つかる訳にはいかない…

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#99-3[彼女side]① 写真はとりあえず違和感のない分厚いアルバムの横に挟んだ 忠義に連絡をして 柿を用意する 10分ほどで来た忠義 「めっちゃ入ってるやん」 『うん。まだ半分くらい』 「え⁈ほなやっぱり重かったんちゃうん？だから運ぶって言ったのに」

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#99-3[彼女side]② やっぱり優しい 「そういう時は俺頼ってや」 『ありがとう…』 このまま一人でずっといるのもいいかな なんて一度考えた事もあった 30を目前に結婚していった友達を尻目に つくづく男運のなさに嫌気をさした けどそんな時に忠義からの告白

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#99-3[彼女side]③ でもきっと結婚とかそういうのはまだまだ先の話 だって彼は年下だし 「○○の地元ってどんなところなん？」 『んーすごく田舎』 「前聞いたってー」 『田んぼしかない』 「それも聞いた」 『それしかないんだもん』 「へー。でもまた行ってみたいなー」

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#99-3[彼女side]④ 忠義がどういう意図で言ったのかわからない 『そのうちねー』 なんて適当に流した ーーーー 『はぁ…』 結局あの後お母さんに電話をして “まだお見合いはしたくない” とか “仕事が忙しい” とか言ってみたけど 「とりあえず会うだけ会いなさい」

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#99-3[彼女side]⑤ そう言って一蹴されて 結局今週末の予定 忠義には何も言えないまま どう言うか悩む 「偉いデカイため息やな。週末頑張り過ぎたんか？」 『ち、違います！』 隣のディスクの渋谷さん 「でも大倉は腰がーとか…」 『言ってないですよね！』

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#99-3[彼女side]⑥ 『渋谷さんって結婚しないんですか？』 「結婚？するんとちゃう？相手がおらんだけで」 『いないんですか？』 「女には困ってないで」 渋谷さんでそうなら忠義何かもっとだろうな… 「何や。結婚すんのか？」 『しませんよ。親はうるさいですけど…』

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#99-3[彼女side]⑦ 「あ、それを大倉に言えんし悩んどるんか」 『まぁそんなところです…』 「言ったらええやん」 『そんな重い女にはなりたくないです…』 「深く考えすぎとちゃう？」 『んー…』 渋谷さんは笑って 「大倉は少々ケツ叩くほうがええんとちゃう」 何て言った

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#99-3[彼女side]⑧ 結局その後帰って来た村上部長に頼み込んで 週末に架空の出張を作って貰った 「出張えらい急やね」 何て言った忠義 『う、うん。先方のアポがそこしか取れなくて…』 何て言う私を笑う村上部長と渋谷さん

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#99-3[彼女side]⑨ とりあえず会うだけ… すぐに断ればいい話だし それにお父さんとお母さんにちゃんと言おう “ちゃんとお付き合いしてる人がいます” って 今度帰る時は忠義と一緒に帰れたら そんな事を思って迎えた土曜日

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#99-4[忠義side]① ここ1か月くらい彼女の様子がおかしい そう、 柿やら野菜やらが実家から大量に送られてきたあたりから 彼女の部屋に行った時とか 「先ベッド行っててええ？」 って言うと 『ちょっと待ってて！一緒に行こう』 とか言うねん

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#99-4[忠義side]② 寝室に何かあるんかなって思っても 特に変わったところはないし ただ甘えたいだけなんかなって思ったりして それはそれで嬉しいし それならと思いっきり彼女を抱いてみる 『もうっ…ムリっ…』 「まだまだやって」 『ああっ…ンッ…やぁっ…』

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#99-4[忠義side]③ 流石にやり過ぎたんか その日はそのまま深く眠った彼女 俺は逆に寝られんくって 彼女の本棚を見る 付き合って知ったけど 彼女と俺は本の趣味が良く合うねん 俺の持ってない本もあったりして時々読んでる ふとアルバムを見て 「今やったらバレんよな」