モーサイダー!~Second Lap~Episode IV
- IngaSakimori
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「亞璃須、悪い!」 「えっ、ち、ちょっと志智!?」 あとほんの数秒待てば、これからUターンする自分たちの側は青信号になる。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:06:32だが、志智は待っていられなかった。瞬時に左右へ視線を飛ばし、こちらに向かってくる車両がいないことを確認すると、赤信号にもかまわずVT250スパーダを発進させる。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:06:35(CB750! 教習車と同じバイクじゃないか!) スパーダの速度が50kmへ達しようとした時、先行するCB750は直角の右コーナーを曲がっている最中だった。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:06:47(うまい……) 鮮やかである。バンクセンサーを取り払ったノーマルステップに接地するかしないかという、ギリギリのバンク角。前後のサスペンションはよく沈み、リアタイヤは滑り出す直前のもっともおいしいポイントで、750ccのトルクを受け止めている。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:06:56「逃がすか……よ!!」 所詮、クォーターの加速力ではCB750に及ばない。 しかし、コーナーリングスピードでは明らかにスパーダが勝っている。そして、ふるさと村から川野駐車場へ向かうこの区間は、ゆるやかではあるが、下り傾斜である。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:07:07伝統的な鉄フレームにビッグマシンらしい重量を誇るCB750と、カジュアルなスポーツマシンとは思えないアルミフレームと現行車が溜息をつくような軽量を兼ね備えたVT250スパーダでは、ブレーキングに絶大な差が生じるのだ。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:07:20コークスクリューを抜けた先で、志智はCB750のテールに食いついていた。 (あんな重くて曲がりにくいバイクなのに……この人、よくここまで走らせるな) 単純に速さだけなら自分が上かもしれない。しかし、志智はCB750というマシンの特性を知っている。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:07:31だからこそ思う。もし、自分があのマシンに乗っていたとして、こんなに速く走らせられるだろうかと。 答えは限りなくノーに近い。それはつまり、『乗り手』に差があるということなのだ。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:07:41(少し……盗ませてもらうぜ、そのテクニック……!!) 自分より速い。あるいは、上手い。 そんなバイクを、ライダーを真後ろからたっぷりと観察する。これ以上に贅沢なライディングスクールは存在しないのだ。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:07:57(ハングオンもしないし、ブレーキングもそんなに詰めてる感じはないのに……コーナーが妙に速い。それに加速がすごいな……) 前後のタイヤが、まるで強固に保持された溝の中を走っているかのように、CB750の走行ラインは迷いなく、そしてスピーディーだった。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:08:06見とれている間に、もう香蘭橋を渡っている。 エンブレだけで減速したCB750が川野駐車場へ滑り込むと、思わずほくそ笑みながら志智も続いた。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:08:20(よーし……) この人から話を聞こう。 うまく走るため。速くなるため。何かきっと学べるはずだ。 そんな純粋な、そして無邪気な期待をこめて、VT250スパーダを停止させた志智は、CB750とそのライダーを見つめた。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:08:29「ふうっ」 ひゅるひゅると鳴る四気筒エンジンが停止すると、CB750の主はヘルメットをしたままで、安堵したような息を漏らした。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:08:37そして愛機から降りると、グローブをつけたまま、きめ細やかなフィンが美しいシリンダヘッド周りをぽんぽんと叩く。 応えるようにエンジンがキン、と一鳴り。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:08:45「ちょ……お前、ひょっとして三鳥栖か!?」 「山打……教官、ですか……?」 明らかに慌てた様子で、目を丸くしているのは他でもない。 志智と玲矢をこれまで指導してきた、教官の山打だった。 #mor_cy_dar
2014-06-29 23:09:18