嘘つきプラムは魔女だった。彼女の髪は蠱虫の沈む琥珀の色。瞳はガーネットの光の色。寂しい少年の夢の中に、誰にも知られず暮らしていた。彼女の魔法は多くの人に恐れられた。今はもう魔女はいない。 shindanmaker.com/451011
2014-06-07 22:46:42愁夢は魔女だった。彼女の髪は星座の輝く夜空の色。瞳はアイスランドの氷の色。異形だらけのどこかの町で、夜が空けるのを待ちながら暮らしていた。彼女の魔法は多くの人に恐れられた。今はもう魔女はいない。 shindanmaker.com/451011 #双り遊び
2014-06-07 23:31:53寂しい少年は異形だらけの夢を見る。その夢の中に閉じ込められた魔女ふたり。蠱虫の沈む琥珀の髪とガーネットの光の瞳の魔女と、星座の輝く夜空の髪とアイスランドの氷の瞳の魔女。琥珀の魔女と夜空の魔女は少年の夢が終わるのを待っている。ねぇ、夜はまだ明けてはくれない。 #双り遊び
2014-06-07 23:40:45ふたりきりの微睡み。揺蕩うような夢心地が、けれど違和感に歪んだ。迷い込んじゃったね。どちらからともなく声が漏れた。肯定の意味の沈黙。ねぇ、どうしよっか。こんな夢、破いちゃってもいいけど、なんだかおかしな気配がするよ。退屈していたから、ちょっとだけ、遊んでみようか。 #双り遊び
2014-06-08 00:04:32町を面白そうに見下ろす氷の瞳。眠たげに細められている柘榴石の瞳の少女を振り返って、楽しげに笑う。「この町、とても変わっている。私達よりずっとおかしなものたちでいっぱい」「私達、より?」紅い口角が上がる。「魔女よりおかしいものってなぁに?」琥珀の髪を揺らし、首を傾げる。 #双り遊び
2014-06-08 00:31:49「人間なのに、人間じゃないものを持ったものばかりなの。動物の耳や手、翼や尻尾」「人間なのに、人間じゃない」乱れたままの琥珀の髪を白い手が梳く。ぼうっとした表情の少女はされるがままだ。「えぇ。私達みたいに。私達よりずっと」柘榴石の瞳がやっと興味の色を浮かべた。「ふぅん」 #双り遊び
2014-06-08 00:43:59「町に降りるの?」琥珀の魔女の興味は冷めやすい。面倒なことは無かったことにする悪い癖。星が見えないから、と明るい町を三つほど消したのはつい十年前の話だ。「この格好だと魔女だって分かっちゃうし、バレたら楽しくないよね。お互いに、変身魔法なんてどう?」ふたりの目が光る。 #双り遊び
2014-06-08 23:12:53「ご希望は?」「美しいこと。ご希望は?」「麗しいこと」ふふり、ふたりの笑みは止まらない。「じゃあ、せーのでかけよっか」#双り遊び 「「せーの」」ぱちんと音がして、一瞬白む景色。お互いを見つめ、満足げに頷く。夜空の魔女は黒猫の耳とヒゲが生え、少し猫目の魅惑的な雰囲気である。一方、
2014-06-08 23:13:39琥珀の魔女には変化が見えない。「何これ?失敗しちゃったの?」文句を言ってから気づく。吸血鬼の牙だ。「目の色も覚醒すると変わるんだよ。どう?」そう言うと、髪をかき上げ白い首筋を露わにする夜空の魔女に、紅い瞳の最奥、瞳孔が開く。「なんて良い夢」「覚ますのは私達、だけど」 #双り遊び
2014-06-08 23:14:01静かに重なる影。痛みよりもくすぐったさに襲われて目を細めた夜の魔女の喉がごろごろと鳴る。そんな首筋でふふ、と笑いが漏れた。悪戯を見逃すように強く青の瞳が閉じられ、白い手が蜜色の髪に絡む。「美味しい?」微かに頷く気配を感じて、喉元がごろごろと機嫌良さそうに音を鳴らした。 #双り遊び
2014-06-11 21:40:24ぺろりと首筋を舐められて、満足したのだと悟る。鳴り続けていた喉が少し落ち着く。「変な感じ」と喉を擦ると、愉快そうな声。「君がひとつでも嘘を吐けなくなるのは良い事だね」じゃれつくようになかなか身体を離さない白い腕。「嘘なんて吐かないよ」「嘘つき」耳に甘く牙が沈み込んだ。 #双り遊び
2014-06-11 21:41:12「町に降りるなら、久しぶりに名前が必要だね」ふたりは互いを呼ぶ名前を持たなかった。自分か相手しかいないふたりには名前など必要ないものだ。対照的に他人から呼ばれることはあったけれど、ふたりの世界にそれは関係のないこと。「何て名前にしようか」「美しいもの」ふふ、と笑った。 #双り遊び
2014-06-11 21:42:12「そうだねぇ、美しいもの…」琥珀の魔女は夜空の魔女を観察し、もう一度噛みつきたくなる衝動を抑えるのに奮闘する。そんな気持ちを知ってか知らずか目を擦り、眠たげな夜空の魔女。「あめ、降りそうだね」「森は濡れてる方が美しいよ」ぽたり、空から落ちてくる一粒をふたりは見つめた。 #双り遊び
2014-06-22 21:59:17「雨、君の名前は雨がいいな」開きかけた瞳孔を閉じるため、ぎゅっと目を瞑って琥珀の魔女は言う。「君がくれる名前、嬉しいね」雨は空を見上げ、目を細める。「君を濡らしてしまってごめんね」「濡れても私たちに変わりはないわ」紅い瞳が笑ってるようにも怒っているようにも見えた。 #双り遊び
2014-06-22 21:59:58「それより、君なんて呼ばないで?私の名前は、なぁに?」琥珀の魔女は笑っているが、やはり少し怒っているようだ。言葉に小さなトゲがある。そのトゲを柔らかく撫でるように、雨は蜜色の髪にキスをする。「アンズ、甘くて君の髪色に似ている果実。梅の花と似たかわいらしい花が咲くんだ」 #双り遊び
2014-06-22 22:02:41「あんず?」「可愛いでしょう?」アンズはむっと頬を膨らませる。「あめ、の方が可愛いわ」でも、ありがとう。雨音に紛れるように呟かれた言葉に雨はにこりと笑った。「アンズ、帳を払うよ?」「しょうがないね」ふたりきりの空間である雨の帳に引き篭もることがアンズには至福だけれど。 #双り遊び
2014-07-18 00:14:05現実味のなかった世界が鮮やかになり、宙に浮いていたふたりは落下し始める。「あーあ、本当に変な気配がいっぱい」「でしょう?」アンズは面倒そうに、雨は楽しそうに告げる。「雨、楽しそう」「アンズは面白くない?」「ない」不機嫌そうなアンズの腰を掴んだ雨は軽やかに街に降り立つ。 #双り遊び
2014-07-18 00:14:19「大体、私達を閉じ込めているのがすでに生意気。やっぱり壊しちゃおうよ、こんな夢」早くも飽き始めているアンズを雨は髪を撫でて宥める。「だめ。アンズ、こんな夢を見るのはどうしてかわかる?」「夢を見る理由?」「異形だらけの夢。それに気付いた? この町に同じ異形は存在しない」 #双り遊び
2014-07-18 00:14:33「同じものは存在しない?」「そう。きちんと一体ずつ姿形が違うの」「当たり前じゃない?」「うん。だけど、これは夢だからね」夢の細部なんて適当な作りでも構わないはず。それでも、異形が個として認識されているということ。「きっとね、この夢を見ている子は他人を恐れているんだわ」 #双り遊び
2014-07-18 00:14:42「人を人として認めない、自分より優れた怪物と捉えてる」「そう、この少年の夢は、他人への恐れや寂しさ、悲しい音がする」ふぅ、と肩を落とし、眉根を寄せるアンズ。「夢から醒めても、このままでは変わらないわ」「あれ?アンズ、やる気になった?」にやりと笑う雨の猫目に挑発される。 #双り遊び
2014-08-28 21:06:13「少しだけ、人間も面白いから」人間なんて嫌い。小さな身体で苦しみや悲しみを抱えるなんて、馬鹿みたい。何もない世界は何も悲しむことのない世界。だけれど少年は他人を創る。どうして、疑問符が思考を占める。唇を軽く噛むアンズを雨は見守る。どうして、雨も理由を探すがわからない。 #双り遊び
2014-08-28 21:07:12少年について知っていることは少ないのだ。この夢の住人に尋ねる方が早いかもしれない。「ねえ、」「いくよ」腕を引っ張っていくアンズに少し驚く雨。「アンズ、」「なぁに?」言うべきか言わざるべきか逡巡し、怒られることを覚悟して伝える。「私以外の血は吸わないでね」 #双り遊び
2014-08-28 21:07:38きょとんとしたアンズはすぐにむっとした顔になる。「そんなに飢えてないわ」予想通りの反応に雨は微笑む。「ごめんごめん。やる気になったアンズは、何処かへ行ってしまいそうだと思ったの。許して?」ふいと顔を背けたままのアンズに不安になるが、きっと照れてるんだろうと解釈する。 #双り遊び
2014-08-28 21:08:26