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【アナ雪】アナとチビ九尾エルサ(1-1)【パロ】

なんか大きな耳にもふもふ尻尾が生えたチビ九尾エルサをアナちゃんが真人間に育てようと頑張るハートフルラブコメディーを書きたかった筈のなにか。なんか導入部だけなのにメチャ長いorz
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万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

氷の牙を避けながら更に近付くと、あの子は息を切らして俯いていた。耳は垂れ、長くふかふかの尻尾は床に広がっていて、体の半分ほどを氷が覆っていた。透明な筈の氷は、そこだけは赤黒い。腕の肉を喰いちぎられ、喉笛を噛まれていた……と理解するまでには時間はかからなかった。

2014-07-03 13:11:00
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「こ、な……で……」 血交じりの掠れた声が届く。緩慢に首を動かしてあたしを見上げたその薄氷色の瞳は、妖力が充足しているのか。キラキラと眩い光を放っていた。 「ちか、づか、な……で……」 しゃべる度に口の端から赫い塊が零れる。けれどそれは液体じゃなく、凍って固体となって転がった。

2014-07-03 13:14:50
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

犬歯が覗く小さな口から、ぜぇぜぇと白い息の塊を零し、赤い塊を零して「来るな」と訴えて来る。けれど、あたしはそれを無視した。氷の牙を踏み越える。ぱきっと音が鳴って、頬に鋭い痛み。新しく生成された氷があたしの頬を掠めていた。 「あな、だ……も……こんな、ふ、に……なりた、い……の?」

2014-07-03 13:30:27
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

挑発的に妖しく笑って言う。こんな風にっていうのは、傍に倒れているキマイラのことだ。体中を氷の槍で貫かれて絶命していた。けれど、周りに倒れている人間は特に目立った外傷はなく、気絶しているだけのように見えた。知っていた気がする。だってこの子は今までずっと自ら望んで誰かを傷付けなかった

2014-07-03 13:34:50
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

その代わり九尾の情報を聞き出そうにも絶対に口は割らなかった。拷問めいた尋問にも悲鳴を上げるだけで何もしゃべらなかったと聞いた。非人道的な実験による痛みに抵抗はしても、何も言わなかった。ただ悲鳴を上げて、それだけだった。やめてと言わなかった。逃げようともしなかった。どうしてなの?

2014-07-03 13:37:54
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

どうして、そんなに悲しそうな目をしてるの?どうして、そんな諦めた瞳で虚勢を張ってるの?どうして逃げないの?今なら絶好のチャンスだったじゃない。負傷していても、それだけの余力があればあたしなんて今ので殺せたはずでしょ?なのに、どうして?

2014-07-03 13:39:09
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「どうして?」 白い息に乗って言葉が滑り落ちる。少女は凍て付いた牙の檻の中に自分を閉じ込めて、震えていた。 「こな、で……」 「どうして、今ので殺さなかったの?」 「わた、し……に、ちかづかな、でぇ」 「どうして、逃げないの?」 「やめ……こなっ」 震えてる。氷牙の檻の中で。

2014-07-03 13:41:48
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

温度が下がる、下がる。きっと悲しみに比例してるんだって自然と思った。全身を突き刺すような寒さは、たぶんこの子の痛み。なんて痛くて苦しくて寒いんだろうか。息をしただけで肺が凍り付いて行くのが分かった。 ゆっくりゆっくり、歩み寄る。牙を避けて、凍った血の海を越えて、あの子まで。

2014-07-03 13:44:41
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「や、だ……や、だ、やだ……やだやだやだっやだぁやだぁああぁぁぁ!!」 天井に巨大な氷柱が生える。床を喰らう獰猛な牙が生える。壁から氷の槍が飛んで来る。施設が軋んで揺れて、氷が割れて弾ける。氷と血の檻の中で、あの子は自分を抱き締めて叫んでいた。

2014-07-03 13:48:08
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

違う。泣いてた。ちっちゃな女の子が、ただ泣いてるだけ。 「もぉっ! くっ……!」 なんだか腹立たしくて、なんかよく分かんないけどムカついて。異様に悲しくて。目の前の女の子が哀れで。氷の柱が頭上から迫って来ていたけれど。でもあたしは、その小さな体に飛び付いてめいいっぱい抱き締めた。

2014-07-03 13:52:56
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「やぁあぁ!やだぁやだぁあぁぁぁ!!」 耳許で繰り返される悲鳴。抱き締めた身体は思ったより小さく、予想以上に冷たく、あまりにも痩せていて、あんまりにも儚くて。なんでか涙が出そうになった。 頭上で氷の巨塊が弾け、飛礫となって服の上から突き刺さってくる。小さな体を腕の中に閉じ込めたら

2014-07-03 14:07:07
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余計に悲鳴を大きくなって、部屋の温度は下がって吹雪まで巻き起こって、氷の茨がそこら中に生えて、この子の体に巻き付いた。 なんで?どうして?なんでそんなことするの? 錯乱して腕の中で暴れる冷たい小さな温もり。涙さえ結晶となって頬を転がっていく。悲鳴と一緒に口からまた赤が零れる。

2014-07-03 14:10:14
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「泣かないで……」 冷たく小さな体をぎゅっとぎゅっと抱きしめる。小さな体を覆う氷がパキリと軋んだ。 「大丈夫。大丈夫だから」 吹雪に掻き消されないように、耳許でしっかりと伝える。あたしはあなたを傷付けないって、そう伝えるように力強く掻き抱く。触れたところが凍り付いていくけれ

2014-07-03 14:19:42
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ど、そんなの構わない。凍て付いて寒くて痛くて泣いてるこの子の為なら、少しくらい凍ったって構わないと思えた。 「いやぁあぁぁさわらなでぇえぇ!」 強く抱きしめる度に、狂ったように悲鳴が上がる。耳や尻尾の毛が逆立って、喉の奥で獣の唸り声。どんと突き放されたけれど、そんなんで

2014-07-03 14:21:57
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

あたしはめげない。泣き止んで欲しくて、その体を温めたくて、あたしはまた手を伸ばす。怯えきった小さな小動物の女の子。だいじょうぶ。だいじょうぶと手を伸ばし。その手に寒さからではない強烈な痛みが走った。 「いっっ……!?」 親指で人差し指の間。丁度筋肉があるところを思いっきり噛まれて

2014-07-03 14:24:26
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

思わず声を上げそうになる。視界に涙が滲んだけれど、まだまだあたしはめげない。これ幸いと、犬歯を突き立てた小さな獣をそのまま抱き寄せる。ぎゅっとハグして繰り返す。 「だいじょうぶ」 その言葉を。 「あたしはあんたなんか恐くないわ」 伝える。 「あたしは、傷付けないから」 告げる。

2014-07-03 14:27:10
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「あたしが、守ってあげるから」 囁く。 「こわくないよ。だいじょうぶ、だいじょうぶだから……」 小さく冷たく痩せた儚い、震える体。 背中を撫でさすって、優しく優しく言葉を紡ぐ。 噛んでいた顎から少しずつ力が抜けて行くのを感じて、嬉しくなった。 「だいじょうぶ。だいじょうぶ……」

2014-07-03 14:30:14
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伝わったかな?どうなんだろう?そう思いながら背中を撫でて頭を撫でていると、次第に吹雪が治まってきたのが分かった。噛み付かれていた手から牙が離れる。泣きじゃくった幼い顔が覗いた。 「ごめんなさっ……ごめっ、なさ……」 嫌々の次はごめんなさい祭みたい。穏やかに降りしきる雪の中で、

2014-07-03 14:34:09
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

あたしは思わず苦笑した。 生温かな小さな舌が噛み傷を這う。結構深いみたいで出血が多い。少女は「ごめんなさい」を繰り返しながら、ペロペロと必死で舌を動かして。まるで仔犬のようで可愛くて。 想いが確信に変わる。この子は誰かを傷付けたいなんて思ってないって。化け物なんかじゃないって。

2014-07-03 14:36:27
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「ふっ、っ……ごめんなしゃっ……っ、ごめんな、さ……」 「ふふっ。大丈夫だってば。くすぐったいよ」 ペロペロ、チロチロ、一生懸命に舐めて来る。愛しいって、たぶんこいういう時に使う言葉なんだと初めて思う。あたしは頭を撫でてあげながら、名前を聞いた。

2014-07-03 14:40:03
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

けれど、聞こえていないのか。その子はあたしの手を舐めたまま。でも、その動きがどんどん緩慢になっていて、次の瞬間あたしの胸の中に倒れ込んで来た。 「え? なっ……!!」 じわりと、服に湿る感触と滑る感触。あたしは慌てて小さな体を抱き抱えると、救護班を呼んだ。

2014-07-03 14:42:51
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

【チビ九尾エルサ】そんなこんなで騒ぎ一段落。アナは責任者と例の子の処遇について話し合う。 「ってなわけで、この子あたしが引き取りますから!真人間に育て上げてみせますから!!」 「なにがってなわけなの?!というか半ば人間じゃないのにどうやって真人間に育てるの?!」 「愛と気合で!」

2014-07-03 15:26:21
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

「却下!第一大事な研究素材でもあるんだ。そんなほいほい渡せるわけなかろう!!」 「へー。そういうこと言います?じゃあ私もちょと理詰めでお話しますけど……ごほんっ。あの子の能力は人間の手でどうにかなるようなもんじゃないです。キュービ率いるモンスター軍団との争いが激化してる中、悠長に

2014-07-03 15:30:33
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

研究してる時間もないです。でもあんな実験やら試験やら繰り返してたらあの子は確実に死んじゃいます。だから、人間側に引き込みましょう。味方にするんです。その為には人間を信頼して貰う必要があります。誰かさん達の所為で人間不信に拍車かかっちゃってる状態なんで難しい話だとは思いますが、これ

2014-07-03 15:32:09
万屋和風愉菓子店@絶滅種のポンデ @yorozuya753

が安全で確実じゃないですか?どうですか、ねぇ?」 「ぐぬぬ……しかし、それも希望的観測にすぎんだろ。あの化け物娘がいつ裏切るとも限らん。あれはキュービに育てられた魔の子だ。人間じゃないんだ。絶対に上手くいかんよ」 「っっ……化け物ぉ?あの子の事化け物って言いました?」

2014-07-03 15:34:09