TPPと酪農1-14

hideoharada氏のtweetまとめ
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原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農①】TPPの影響は農業の各品目により異なるので、ちょっと整理。まず、酪農。乳牛から搾った乳(生乳)は、仕向けによって酪農家の手取り価格が違います。飲用向けなら110円/kg、バター・脱脂粉乳向けなら65円、チーズ向けなら45円。農家の手取りはこの加重平均。

2010-11-12 23:54:41
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農②】都府県では飲用向けが多く、北海道ではバター等の加工向けが多いので、手取り価格は都府県は100円/kg程度、北海道は80円程度。最近は飲用が減り手取りが低下。生乳の販売価格の決定は乳業メーカーと地域レベルのJA(北海道ならホクレン)が決め、政府は関与しません。

2010-11-12 23:54:43
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農③】バター向け等の生乳はメーカーが輸入との競争から安く買わざるを得ないので、生産費を賄うことができません。この差を政府が助成しています(所得保障の一種)。バターや脱脂粉乳は高い関税をかけてますが、仮に関税が下がって行くと、生産費との格差が一層拡大します。

2010-11-12 23:54:45
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農④】この格差を拡大させないためには、生産コストを下げる必要がありますが、既に日本の酪農はEU以上の規模になっていて、規模拡大による生産性向上の余地は大きくありません。一方で土地、労働、資材などのコストが高く、土地天然資源に恵まれた国との格差を埋めるのは困難。

2010-11-12 23:54:47
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農⑤】従って、コスト低下の努力をしても、輸入拡大により生乳販売価格は避けられず、生産費との差を補償するための国費は増加。日本の酪農家は既にほとんどが専業農家で約2万戸足らず。でも、肉用牛と併せ飼料作物栽培面積は約90万haと米に次ぐ土地を利用する基幹農業です。

2010-11-12 23:54:50
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農⑥】関税撤廃により、安価なバター・脱脂粉乳が輸入されれば、直接打撃を受けるのは加工用仕向けの生乳ですが、バター・脱脂粉乳から加工飲用乳も製造できるので、飲用向けの生乳も2割程度は置き換わる見込み。北海道も都府県も酪農家への影響は大きく、地域経済も打撃を受けます。

2010-11-12 23:54:52
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農⑦】TPPの参加国の中で、米国、豪州、NZは酪農大国であり、日本の酪農はコストで米国とは2倍以上、豪州、NZとは4倍以上の格差があり、ある程度国境措置がないと、とても太刀打ちできません。なお、バターや脱脂粉乳は外国との品質格差はほとんどありません。

2010-11-12 23:54:53
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農⑧】乳製品全体の消費が減少する中で、消費が増加しているチーズ(既に輸入自由化してます)の国内生産を伸ばそうと官民あげて努力してますが、まだまだの水準(農家の手取りも下がるので、コスト低下も必要)。こうした矢先のTPPは、相当厳しい条件整備が必要になります。

2010-11-12 23:54:58
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農⑨】産業連関的に見ると、酪農は、資材、機械、医薬品その他のインプットが大きく、加工~流通段階でのアウトプットも大きいので、地域経済や他産業にも大きく寄与してます。こうした働きも評価した上で、関税低下の影響を十分整理する必要。さて、酪農だけで夜も更けたのでここまで。

2010-11-12 23:55:01
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農10】TPP参加国中で最も酪農の競争力があるのはNZ。ここでは酪農がトヨタ。トップの輸出産業。飼料穀物は給与せずに牧草が生育している季節だけ放牧して搾乳する。乳製品工場は搾乳期間はフル操業。故に生産コストは世界でも最低ランク。生産~加工が輸出を前提としたシステム。

2010-11-14 10:28:53
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農11】NZは穀物価格が乳価より高いので徹底した牧草利用。豪州は穀物も給与するのでややコスト高。米国は穀物+牧草だけど、いずれも自国産で企業的酪農が主流。海外は乳製品加工が第一で飲用も成分無調整は少ない。我が国は飲用からスタートしたので、都市近郊の副産物給与が原型。

2010-11-14 10:28:55
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農12】その後、需要増加が見込まれた加工乳製品生産地帯として北海道の酪農が発展。従って乳製品工場も都府県は飲用主体の中小規模、北海道はバターなど加工主体の大工場(NZに比べたら可愛いけど)に。TPPで乳製品輸入増加すれば、廃業含め乳製品工場自体の再編整備が必要。

2010-11-14 10:28:57
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農13】極論→TPPで乳製品の関税率撤廃になれば、生鮮品故に競争力のある飲用牛乳だけに特化する→コストの低い北海道を飲用牛乳生産地帯に転換して工場も再編整備するということ。生乳は毎日酪農家から出荷するので、酪農は乳製品工場とセットで考えないと産業として成立しない。

2010-11-14 10:29:00
原田 英男 @hideoharada

【TPPと酪農14】その様に完全に乳製品供給を海外に依存した場合、安定輸入が可能か?乳製品はOIE規定上は伝染病を理由に止まる恐れは小さい。問題は持続的な供給力。NZは牧草の生産力から限界。豪州は水不足、干魃害が増加など供給不安リスクは無視できない。

2010-11-14 10:29:02